オランダ絵画によせて:喧騒の農民たち

 

 フランス・ハルスに師事したアドリアーン・ファン・オスターデ(Adriaen van Ostade)は、アドリアーン・ブラウエル(Adriaen Brouwer)と並んで農民風俗画の創始者とされている。二人とも農民の野卑を描いている。

 ぱっと見て野卑な絵に見えないのは、色味を限定した、落ち着いた色彩のせいだと思う。灰褐色系の暗いモノトーン調に、ところどころパッ、パッと明るいアクセント。それがまた農民の生活っぽく見えたりもする。
 特にブラウエルのほうは画風がより繊細で、構図や明暗の対比が絶妙。前景に主だった人物群を明るく描き、背景に大雑把な室内と、それに溶け込んだ雑魚の人物群を暗く描くことで、上手いこと画面に奥行きを持たせている。色彩もより幅があり、全体にオリーブのような褐色、背景に行くほど灰色の陰影、前景の人物にはくすんだ灰青、クリーム、サーモンピンクなどをくっきりと施している。

 けれども絵の主題は野卑そのもの。村の居酒屋や農家の納屋のような室内で、農民たちが大勢で、酒を飲んだり煙草を吸ったりカードをしたり、喧嘩したり陽気に騒いだりする姿が描かれている。
 賑やかと言うか、騒がしいと言うか、私は苦手。 
 
 同じ農民画のミレーの絵に比べると、農民生活の厳しさ、厳かさというものがほとんどない。が、あけっぴらげな、何かせいせいしたものを感じる。実際の農民て、こんなもんだったんじゃないだろうか。
 こうした生活の粗野を、人間の素朴さ、健全さと見る人もいるだろうけど、それは奢りのような気がする。やはり人間の生活は、なるたけ知的であったほうがよい。

 画像は、ブラウエル「煙草を吸う男たち」。
  アドリアーン・ブラウエル(Adriaen Brouwer, ca.1605-1638, Flemish)
 他、左から、
  ブラウエル「祭」
  ブラウエル「酒を飲み煙草を吸う農夫」
  ブラウエル「しかめっ面をする若者」
  オスターデ「歯を抜く床屋」
   アドリアーン・ファン・オスターデ(Adriaen van Ostade, 1610-1685, Dutch)
  オスターデ「酒呑みと煙草呑み」  

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