ギリシャ神話あれこれ:イカロスの墜落(続)

 
 順調に空を行く二人だったが、さて、飛び慣れてくると、イカロスは大空を自由に飛ぶことが気持ち好くてたまらない。思慮浅い彼は空を飛ぶのに夢中になり、やがて父の警告を忘れて、どんどん高空へと舞い上がる。
 馬鹿息子め! もっと下に下がれ! 下がらんと死ぬぞ!

 とうとう、イカロスの羽を固めた蝋が太陽の熱で溶け、翼を失った彼は、エーゲ海へと真っ逆さまに墜落、死んでしまった。……老練さと大胆さとを併せ持つことは難しい。
 彼の落ちた海は、イカリア海と呼ばれているのだそう。

 息子の死を悲しむダイダロスは、しかしそのまま飛行を続け、シチリア島へと逃げ延びた。

 さて、イカロスの亡骸はやがてドリケ島へと打ち上げられた。偶然、この島に立ち寄った英雄ヘラクレスは、情の厚い男のことなので、その亡骸を葬り、イカロスの記念に、この島をイカリア島と名づけてやる。
 大感激したダイダロスは、返礼に、ヘラクレスの像を作ってやる。……が。

 名工ダイダロスの手による像は、まるで生きているような出来具合だったのだろう。ある夜、ヘラクレスはこの自分を模した、筋肉モリモリの大男の像に出くわし、ぶったまげる。
 自分を襲ってくるものと勘違いし、ボカン! と大石を投げつけて壊してしまったという。

 画像は、レイトン「ダイダロスとイカロス」。
  フレデリック・レイトン(Frederic Leighton, 1830-1896, British)

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