夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

入試問題作成覚書 その2「素材文の決定」

2012-08-02 20:27:45 | 教育
事前にどのような入試問題を作りたいか、コンセプトを固めた上で、それに沿った作家、作品を選び、素材とすべき文章を選ぶ作業に入る。たいていは、同じ作家、同じテーマでも、数冊読んでみないと、「これだ!」という文章にはなかなか出会えない。時には、1冊目で当たりがくる場合もあるが、僥倖に近い。過去には4冊、5冊読んで、ようやく見つけたこともあった。

もちろん、入試問題に取り上げられる常連の作家を選べば、ほぼ間違いないとわかっているのだが、毎年定番というのでは芸がないし、自分の関心の輪が狭くなってしまう。なるべく毎年、新しい作家やジャンルに取り組むように心がけている。

一冊の本の中で、入試問題に利用できる箇所というのは、そうそうない。コンセプトに合わない箇所は興味深くても使えないし、すごくよいことが書いてあるのに、分量の制限にかかって泣く泣くあきらめる箇所もある。使えそうなところには付箋をしつつ読み進め、一冊読了した時点でもう一度付箋箇所を読み直し、問題化できる自信のあるところを3~4箇所に絞り込み、コピーする。

この時点ではまだ、第一印象に近いので、ここで候補を決めてはいけない。一日以上時間を置いてからコピーを再読、三読し、ふるいにかける。読んだだけでは一つに絞り込めない場合は、この素材文を使って、どんな問題が作れるか、観想してみる。段落分けした上で、意味段落ごとにその内容を問うような設問が作れて、なおかつ最後に全体の主題を問えるような設問が作れる確信を持てれば、それで決まり。読んだときの印象はよくても、上記のことができない場合は、素材文に決定してはいけない。同じ本の別の箇所を探すか、あるいは新しい本を探すかした方がよい。

残念ながら、見てくれはよくても「煮ても焼いても食えない」魚が存在するのと同様、入試問題作成の場合も、書いてある内容はすばらしくても、入試問題にはなり難い文章というものがあるのだ。そのへんの見極めがつかず、第一印象にこだわったり、あるいは別の素材文を新たに探す手間を怠ったりすると、その後どんなに時間と労力を注ぎ込んでもモノにならず、結局失敗作を生じることになる。毎年同じ水準の入試問題を出し続けるには、ネタの仕入れの時点で妥協してはならない。

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