モーツァルト クラリネット五重奏曲第2楽章の初合せが行われた。
前回はオケ大先輩の”クラ爺”との「秘密練習」だったけど、今日はフルメンバーでの初合わせ。
バイオリンとビオラの3人の女性とは初顔合せだし、僕にとって舞台に立つ目的のアンサンブルへの
参加は初めてのことなので、一体どうなることかと少々不安を感じなが先輩宅に向かった。
”クラ爺”の家は田園地帯の一角。開け放たれた畳の居間が練習会場だ。
さ~合わせようかというタイミングで、「ま~少しつまんでからにしましょう」と先輩は
自家の畑で採れた作物を持ってきてくれた。
お話を伺っていると、女性の皆さんは千葉県の他の市民オケに所属しながら市原にエキストラ出演し
その他いろいろな楽団にエキストラで参加されているとのこと。
「ん~エキストラで呼ばれる実力者のなかに、こんな初心者が紛れ込んでいいんだろうか・・」
と緊張するものの、氷のなかで冷やされたミニトマトにみんなで手を突っ込んでつまんだり、
ナシをほうばり、冷たいウーロン茶を飲みながら談笑していると、いつの間にか気持ちもほぐれてきた。
ここらへんの呼吸というか、もってゆきかたは、さすが楽団を長くまとめてこられた先輩の持ち味だ。
<アンサンブルの前に「山幸」をいただく>
「さ~そろそろやりましょうか」と頃合をみはからって声がかかり合奏が始まる
敷地が広いこともあり、4方の窓やドアーを開け放ってのアンサンブルは気持ちいい。
少し蒸し暑いけど、心地よい風が吹き抜けてゆく。
庭のワンちゃんもアンサンブルに合わせて吠え続けている。
最初こそ なんとか皆に合わせていけたものの、どうしたことか、途中で合わなくなり・・・
それでもなんとか追いついていったが、また見失ったりする・・・
「おかしいな~自分一人でやっている時はこんなはずではないのに・・・」
「前回クラリネットと二人での特訓でも、こんなことはなかったなずなのに・・・」
自分一人で練習していると出来たように気になっているけど
合わせてみると、譜面そのものが読めてないんだな~と思えてくる。
それと、テンポを把握できないというか、どうにもLarghettoの速度に体が馴染んでゆかない。
初めてバイオリン2本、ビオラとクラリネットで合わせたので、バイオリンやビオラに
引きずられてしまい遅れたりウロウロしたりがあちこちで出てしまった。
初本番に立ったときのように、なんだか全身からいやな汗が滲み出てきている。
つっかえつっかえしながら1~2回合わせたところで、女性陣から厳しい指摘があった。
「チェロは遅れないで、先に入って欲しいんですけど」
「そうそう、和音は低音からだんだん積み上がってゆくようになるのがいいから」
「もっと自信を持って弾いたらいいと思いますよ」
一人練習のときは、音程ばかり気にしていたけど、アンサンブルではそれだけではダメなんだ。
一瞬にして、自分の思い込みや癖が皆に指摘されたことが分かった。
それと、いつもトップの陰で、遅れ気味に出ている癖がここでも出てしまっていたのだと。
オケ練では、極端に言えば主席に追随して遅れ気味に出ているのだろう。
そんな言い訳めいたことを口にしたものだから
「オケでも同じこと」
「チェロには先に出て欲しいのよね」
「先にチェロがでないと私たちどこで出たらいいかわからなくなるから」
と、普段感じているオケ練での演奏のしにくさも言われてしまった・・・大いに反省。
その後、テンポ感の悪さは、全員ミュートを付けているからかもしれないとの指摘があり、
譜面にはcon sordinoとあるものの、一度ミュートを外してやってみようということになった。
やってみると、今度はなんとか最後までそこそこ満足できる音楽になってきた(そうだ)
「ま~、ここらでいいでしょう」
と”クラ爺”のお言葉で、合奏を終えて、小一時間の雑談をして解散となった。
さ~ここからが大変だった。
自宅までの車を運転しながら録音した演奏を聴いてみると・・・
演奏しているときと、後から録音聴くのでは大違い、
彼女たちの指摘が、かなり控え気味だったことが手に取るように理解できた。
「あ~ここ、突っ込んでる」
「あっ!入る場所間違っている」
「え~そんな危なっかしい音出したらみんなの迷惑だろ!」
と自分のいい加減な演奏にだんだん声が大きくなり・・・
「ばか~、なにやってんだ!」
「みっともない!」
「カッコ悪り~」
まさに車内は絶叫の連続になってしまった。
あまりの恥ずかしさに、目をつぶってアクセルを踏み込みそうになったり
目を回して、思わず黄金色に輝く田んぼに突っ込みそうになる。
自分の演奏を聞くということは、「ガマの油」と同じでまさに命懸けなり
録音を聞いてはっきりしたことは、自分がアンサンブルを乱しているという現実だ。
「チェロは少し早く出て」という当然の要求も手に取るように分かった。
実は、指摘してもらったときは、どう対処したらいいかよくわからなかったので、
なんでも早く出りゃいいってモンんじゃないのに、全く調子っぱずれは突っ込みで
アンサンブルを乱していたことも判明した。
「早めに出る」のではなく、テンポをリードしてゆけばよかったのだ。
それもこれも自分が「主体者」になっていないことが最大の原因だと思った。
クインテットの基底部を支えるとともに、全体のテンポを作り出す役割を果たして行かなければならない
「聞くに耐えない」けども、今回は録音していて本当によかったと思う。
みんなの指摘を、自分の耳で確認すれば、何が問題かははっきり把握できる
問題が分かれば、対処の仕方もあろうというもの。
技術、腕前はそう簡単に上がらないとしても、アンサンブルのポイントだけは
外さずにやろうと思う。
次回の練習までやく1箇月あるけど「ごめんなさい」を言うよりしっかり練習だ。