歩道を走る自転車のこども

題詠blog2015に参加しています。
ただし…めっちゃとろとろしておりますので
どんどん追い越してってくださいな~

題詠100首 2007

2007-10-29 13:58:40 | 題詠100首2007
よれよれになってゴールして、やっと一息ついたので
100首を並べておきますね。
仮題は『傷とかさぶたの日々』かな?
ここに出てくる膝小僧…片一方にはかさぶたが
もう一方にはいつまでもつるつるの新しい皮膚が…


001:始 
転ばない約束は何時誰とした「始めの一歩」の声も手もまだ

002:晴 
夕晴れにすっと伸びてく影を追い「けんけんぱ」って開きたい足 

003:屋根 
投げ上げたボールはきみに落ちてこい何度も屋根に叫んで逃げる 

004:限 
告白の北限は胸 あぶっても白状しない蜜柑は涙

005:しあわせ 
布 切れはしあわせ丸く宙に浮き手のひら弾み手の甲に乗り

006:使 
小指だけ使う誓いは破られてお針箱には待針二本 

007:スプーン 
真ん中にざららを落とすスプーンはふわわをすくうきみをうらやむ

008:種 
ホトケノザ閉鎖花由来種子たちのアリに託した未来はどこへ

009:週末 
ばっこんと放り出されてぎったんは誰が痛いか想う週末

010:握 
じゃんけんを占う形に握った手 覗けば雲が教えてくれる 

011:すきま  
三度目は少しすきまを空けてみるアキストゼネコのネコになるよう

012:赤 
一組の名札をきゅっとつまんでた鬼が赤って言った途端に 

013:スポーツ 
土手へ行こうスポーツ少年団辞めて ふっくら烏野豌豆が待つ 

014:温  
蹴り上げて君を逃がせば缶硬く低体温のつまさきを刺す 

015:一緒 
居残りが長引く窓に竹とんぼ一緒に帰る約束だから 

016:吹 
風上に立ってひと息吹き続け虹をたくさんたくさん君に 

017:玉ねぎ 
夕焼けに一人さよならした誰も探しに来ない玉ねぎ小屋で

018:酸 
風鈴もきんぎょも揺れてやってくる(ちりん)(ちゃぽん)と酸素をまぜて

019:男 
牛乳屋の2こ下男子から奪うフルーツ甘く香る希少価値

020:メトロ 
暗がりに光る再放送アニメトロッコ駆けるチーズの山なみ

021:競    
おんなの香競う小5の紙せっけんずっと濡らしちゃいけないものと

022:記号   
ト音記号書けない僕らにオルガンは猫踏んじゃったを連弾されて

023:誰    
誰一人帰り支度を始めない「遠き山に日は落ちて」も夏 

024:バランス 
野良猫のひげ持つ揺れるしっぽ持つブロック塀はバランスの学校

025:化    
化け物が棲むって森の安全な洞(うろ)に手紙を託す子ふたり

026:地図   
冒険のひざからにじむ血を吸って秘密の地図が浮かぶハンカチ 

027:給    
金曜の給食袋ぶんぶんと回して帰るかすかな勇気

028:カーテン 
カーテンに飛ぶ影の鳩キツネへと変わる瞬間「コン」と誰かが

029:国    
蛙たちの土管高原ボタン山僕が国土地理院になって 

030:いたずら 
小さな手「川・網・鼓」に迷い込む赤い毛糸のいたずらじゃないか

031:雪    
楽しみにしすぎて熱を出した子に窓から見舞う手と雪うさぎ 

032:ニュース 
模造紙にも夜 極太マジックのニュースと眠る錆びた押しピン

033:太陽   
太陽と僕との距離に幾枚もおせっかいな手が煤(すす)の硝子を

034:配    
夏の友 急勾配の先で待つ日焼けた脚で空をまたいで 

035:昭和   
宍道湖も昭和新山もスコップに神を宿した僕らのしわざ

036:湯    
向日葵を浴びて湯になれひなた水ビニールプールは乱反射して

037:片思い  
ささやかな追跡ごっこ制帽のつばを目深に片思い秘め 

038:穴    
ビー玉に愛される穴勝ち負けを投げても土はやさしい地球 

039:理想   
ブランコのひとこぎごとに弧は理想目指して散らす僕の不都合 

040:ボタン  
掛け違えたボタンぶんぶんごまになり永遠が指に絡みつく

041:障    
ここまでは母の手のなか障(さえ)の神 家出の足の疲れるあたり

042:海    
お砂場に貝殻の粒海賊の血がつまみ上げ波を呼び込む 

043:ためいき 
羅針盤持たなくたってためいきはいつしか胸を突くブーメラン

044:寺    
めくるめくかごめかごめは早口でお寺の庭の落ち葉うずまく

045:トマト  
はトマトびきりのトマトれたてのトマトっとりのトマトんがりトマト

046:階段   
必ずだれか怪我します 誘惑が危険に光る階段すべり

047:没    
日没の三角ベースは二人きり静かな満塁透明ランナー

048:毛糸   
黒と黄の毛糸で冬のちゃんちゃんこ編んでも彼を守れぬ俗世

049:約    
約束が果たせず豪雨 目も鼻も無いまま首もちょんと斬られて

050:仮面   
赤がいい 仮面の下の涼やかに疼く美意識おんな色でも

051:宙    
どちらにも欲しがられないずっと手が宙ぶらりんの花いちもんめ
 
052:あこがれ 
注射器へあこがれ狂おしく熱く赤い薬を注ぐ夏の日

053:爪    
深爪の指と腕とを振りかぶる野球選手と力士の勝負

054:電車   
伸び縮み自由自在の友情の環を両の手に電車は駈ける

055:労    
うさぎの目・耳の赤さが冬の日のいきものがかりの冷えを労う

056:タオル  
炎天下うつくしすぎる傷口を覆うタオルはプールのにおい

057:空気   
指先の細胞に朝たどり着く空気の泡の花火のけむり

058:鐘    
アマリリス咲け 早鐘が三連を打つ胸抱えリコーダー独奏 

059:ひらがな 
手のひらがなみだを全部散らすまで「まあだだよ」って何度も何度も

060:キス
夏季講習社会科テキスト隅っこに退化するヒト後ずさりして

061:論    
日本的プロポーションを運ぶうちリカの家から飛ぶ幸福論

062:乾杯   
水筒のぬるい麦茶の乾杯の泡誇らしく三位決定戦

063:浜    
殺しあう武器ではないがカチカチが墓地に選んだ海浜公園

064:ピアノ  
日暮れても忘れていたい泥んこの指の帰りを待ってるピアノ

065:大阪   
大阪は「いろはにほへとちり盗人」追う探偵も笑わせる街
           盗人(ぬすっと)

066:切    
ゆびきりの呪文なんども揺れていて切られた指はまだ縛られて

067:夕立   
夕立が地面を叩き逃げ帰る僕のらくがき消して流して

068:杉    
牛乳を拭いた雑巾絞っても出木杉君は澄みすぎていて

069:卒業   
ガリ版で刷った卒業文集の夢は癖ある右肩下がり

070:神    
阪神の帽子が情けなく弱く負けて日差しにうなだれる午後

071:鉄    
伸びた背で残りの夏を押して蹴る一番高い鉄棒はしなって

072:リモコン 
鉄人を制御できずに捨てられたリモコンに枯れ枝のアンテナ

073:像    
夕焼けの二宮金次郎像に引っ掛けられたゴム紐も赤く

074:英語   
サマンサは英語をしゃべる魔女だって知らずに顔じゅう動かしてみて

075:鳥    
母の背は鳥獣保護区銀玉を避けて逃げ込むごんぎつねにも

076:まぶた  
手のひらとまぶたの闇は「もういいかい」早く見えないところへ逃げて

077:写真   
せっかちは彼ゆずりかな陽炎がはさまれている日光写真

078:経
経験は目を塞いでも足音の消えるあたりに潜む影見る

079:塔    
美しく傷負う覚悟 僕ひとり回旋塔から切れる指先

080:富士   
にじむ血の色鮮やかに膝震う海の匂いの富士壺の罪

081:露    
微熱ある指先で結露温める相合傘は消されてばかり

082:サイレン 
サイレンに急かされ蒼いくちびるがプールサイドに虹を引き連れ

083:筒    
もう100歩電信柱遠くなれ初めて触れた君の水筒

084:退屈   
雨だれと退屈刻み盛り付ける葉っぱがあればままごとは続く

085:きざし  
かろうじてあしたはてんきざしょうした笹舟を貸すとんぼのあいびき

086:石
人波に抗ううちに水面切るかたちの石になって流れて

087:テープ  
かさぶたを覆う救急傷テープ剥がせば二度目の羽化がはじまる

088:暗    
波立って水にまつわる暗号はスパイ手帳を消して溶かして

089:こころ
蝙蝠が細かく揺らす夕闇はこころして飛べ羽薄きもの

090:質問   
回るたび繰り返される質問のうしろの正面 君はもう居ない

091:命    
血に染まる記事に挿まれ押しばなの花の命はいつまででしょう

092:ホテル  
星月夜ほむらひろばに君が居てタキビハ頬ガイヨウニホテル

093:祝    
視界から消えて祝福されていて紙ひこうきは帰れないまま

094:社会   
仲直りしたくてなったパパ(役)は会社会社と送り出されて

095:裏    
迷わずに裏の神様の言うとおり優柔不断が素直に育つ

096:模様   
願わくはアンモナイトに似た模様かさぶたの下の新しい皮膚

097:話    
眠れない子の寝返りで続く旅おとぎ話は夜つくられる

098:ベッド  
神様に禁じられても図書室をベッドに持ち込む冬の雨の日

099:茶    
君の手が「だあれ?」で止まる私の手たしかにお茶碗欠いてばかりの

100:終    
「ご飯よ」の声 渋々の顔たちが「またね」と終わりの魔法をかける

完走報告(ワンコ山田)

2007-10-19 23:37:57 | 題詠100首2007
参加させていただいて2回目、今年も何とか完走することができました。
五十嵐さん、素敵なイベントの場をありがとうございました。

初参加の去年はまとまりのない100首になってしまったので
今年はちょっと欲張って「懐かしい遊び、子どもの居る風景」などを
詠みこんでみようとしたものの…大変苦戦いたしました。
(完走できてほっとしています)

100首を詠んでみて気づいたことは、まったく意識していないのに
「血」や「かさぶた」などの言葉を多用していたことです。
そうですよね、私たちが子どもの頃はいっぱい怪我をしたものでした。
今なら危険だって立ち入り禁止になってる鋼材置き場に秘密基地をつくったり
河川敷であそんだり、よく死なないで大きくなれたもんだって…

いっぱい怪我をして、血を流して大きくなってきたことがよかったのでしょうか?
今も痛みには強いような気がします。
ひとつも傷つかないように育ってしまうと
大人になってからの心の怪我に弱いのかもしれないですね。

ひとつひとつの遊びについて新しく知ったことが多くて
事細かに注釈をつけたくなりましたが、時間的に無理なことが多かったので
これから書き込んでいきたいと思っています。

締め切りがきて皆さんの投稿が落ち着いたら、今年も「詠み逃げ大賞」やります!
少しずつストックをしてきましたが、ご協力お願いいたします。