『ブラッカムの爆撃機―チャス・マッギルの幽霊/ぼくを作ったもの』
ウェストール,ロバート・アトキンソン【作】〈Westall,Robert〉宮崎 駿【編】 金原 瑞人【訳】
岩波書店 (2006/10/05 出版)
名著の復刊なのですと。ちっとも知りませんでした。
asahi/宮崎駿さん『ブラッカムの爆撃機』復刊
2006年10月11日
岩波書店
wiki/ブラッカムの爆撃機
あらすじが記載されているし、結末までは遠慮してあるので、ちょうどよいといえるかな。
<画期的?>
映画などでは搭乗員が急激な操縦で酔ってしまったり、おぞましいものを見たショックなどで吐くというシーンがあるかどうか、わからないが(あまりありそうな気はしない?)、実際はしばしばあったのだろうな、と気付かされた。
本書では何かというと語り手の無線士が吐いてしまう(吐き過ぎ?)。
確かに、操縦者以外は急激な運動などで体質や体調によって酔うことがあるだろう。ウィンピーの無線士、外見えないようだしな。
酸素マスクのなかに吐いてしまい、吐瀉物が上縁部から溢れてきて云々、などと少年向き物語でリアルに描いたのは画期的?
(だーから、お食事中の方は・・・といったでしょ)
あと、臭いの話ね。超低空を飛ぶと、地上の色々な臭いが感じられる、と。
良い匂いばかりではない。
市街地を爆撃するときのローストビーフのようなにおい、って‘そういう意味’だよね?
<戦場の恐怖体験で精神病院、に関連した思い出話>
下品でがさつで皆の鼻つまみ者のブラッカム(万年)軍曹。ある日の出撃から帰還した際、飛行機は無傷ながらパイロットのブラッカム以外全員が謎の戦死。
ブラッカムも恐怖体験があまりにも強烈だったのか、精神の均衡が壊れてしまう。
今では精神病院で一日中「操縦」しているのだという。
じつは、南面堂が大学時代に最も印象が強かった授業は、まるで専門外の「保健」だったのよ。
先生が精神科のドクターで、精神医学の話など多くしてくださったのだが、ハイライトは、先生の前任地の精神病院の見学。
つい前年くらいまで受け持っていた入院患者さんたちなので、患者さんたちものびのびと話していただけた。
そのなかに、元陸軍兵士で、大陸の戦地から入院されて以来かれこれ三十余年、というご老人がおられた。
中国で貨物列車で移動中、八路軍?に襲撃され、そのときの恐怖があまりにも強烈で精神のバランスが……ということだった。
~うーむ、あれからもう三十余年か...
閑話休題:
WWⅡにおけるRAF(英空軍)の爆撃隊をめぐる小説としては、「叙情SF」短編集で、「チョップガール」という妙に印象深い作品を読んだな: 芳紀18歳、死の女神/20080325
危険度が高いほど、迷信あ深くなるのだろうな。
神秘体験や幽霊話なんかも。
あとね、親父こと機長が発する警告、「誰か他の方向を見張ってるか?」というのが良い。とても良い。
何か注意を引くものがあると、全員そちらに気を引かれてその方向ばかりに注目してしまう。
すると、反対方向からひょっこり・・・などということがある。
「しまった」と思ったときには天国行き・・・というケースが現実にも多数あったと思う。
坂井三郎さんの回想に、「自分に撃ち落された敵機の搭乗員は、何が起きたかわからないうちに落とされたケースが大部分だと思う」というコメントがあったと思った。
小説(ツクリバナシ)なんだけど、さすが生き残る人物は違うものだ、と思わせる。高校出たばかりのひよっこ達を預かるベテラン機長も楽ではない。
Vickers Wellington爆撃機について: wiki/Vickers_Wellington
Wellington Bomber
The Mighty Wimpy
籠状の構造は強度の点で有利でした、と。
空飛ぶ籠と呼んだ(南面堂が勝手に呼ぶ)訳は、この写真に驚いたから: ブレーメン爆撃から帰還したBH-Z, Z1407号機(亡命ポーランド人部隊機)
布張りの外板はめりめり剥げて飛んでいってしまったが、籠状構造と操縦系には致命的な損傷がなかったので、見事に帰ってこられました、と。
貼り直した
空飛ぶカゴ屋だ?
ポーランド人クルーご一同
生きた心地しなかっただろな。
蛇足になるが、米軍のB17の場合も、「よくまあ無事に帰ってこられたもんだね」という写真が多数あるけど: Battle-damaged B-17s
極めつけはこいつ⇒後部胴体を独戦闘機の翼端でざくーっと行かれちゃったけど、90分間持ちこたえて戻ってきた"All American"が凄い: 3~5枚目
ウェストール,ロバート・アトキンソン【作】〈Westall,Robert〉宮崎 駿【編】 金原 瑞人【訳】
岩波書店 (2006/10/05 出版)
名著の復刊なのですと。ちっとも知りませんでした。
asahi/宮崎駿さん『ブラッカムの爆撃機』復刊
2006年10月11日
岩波書店
wiki/ブラッカムの爆撃機
あらすじが記載されているし、結末までは遠慮してあるので、ちょうどよいといえるかな。
<画期的?>
映画などでは搭乗員が急激な操縦で酔ってしまったり、おぞましいものを見たショックなどで吐くというシーンがあるかどうか、わからないが(あまりありそうな気はしない?)、実際はしばしばあったのだろうな、と気付かされた。
本書では何かというと語り手の無線士が吐いてしまう(吐き過ぎ?)。
確かに、操縦者以外は急激な運動などで体質や体調によって酔うことがあるだろう。ウィンピーの無線士、外見えないようだしな。
酸素マスクのなかに吐いてしまい、吐瀉物が上縁部から溢れてきて云々、などと少年向き物語でリアルに描いたのは画期的?
(だーから、お食事中の方は・・・といったでしょ)
あと、臭いの話ね。超低空を飛ぶと、地上の色々な臭いが感じられる、と。
良い匂いばかりではない。
市街地を爆撃するときのローストビーフのようなにおい、って‘そういう意味’だよね?
<戦場の恐怖体験で精神病院、に関連した思い出話>
下品でがさつで皆の鼻つまみ者のブラッカム(万年)軍曹。ある日の出撃から帰還した際、飛行機は無傷ながらパイロットのブラッカム以外全員が謎の戦死。
ブラッカムも恐怖体験があまりにも強烈だったのか、精神の均衡が壊れてしまう。
今では精神病院で一日中「操縦」しているのだという。
じつは、南面堂が大学時代に最も印象が強かった授業は、まるで専門外の「保健」だったのよ。
先生が精神科のドクターで、精神医学の話など多くしてくださったのだが、ハイライトは、先生の前任地の精神病院の見学。
つい前年くらいまで受け持っていた入院患者さんたちなので、患者さんたちものびのびと話していただけた。
そのなかに、元陸軍兵士で、大陸の戦地から入院されて以来かれこれ三十余年、というご老人がおられた。
中国で貨物列車で移動中、八路軍?に襲撃され、そのときの恐怖があまりにも強烈で精神のバランスが……ということだった。
~うーむ、あれからもう三十余年か...
閑話休題:
WWⅡにおけるRAF(英空軍)の爆撃隊をめぐる小説としては、「叙情SF」短編集で、「チョップガール」という妙に印象深い作品を読んだな: 芳紀18歳、死の女神/20080325
危険度が高いほど、迷信あ深くなるのだろうな。
神秘体験や幽霊話なんかも。
あとね、親父こと機長が発する警告、「誰か他の方向を見張ってるか?」というのが良い。とても良い。
何か注意を引くものがあると、全員そちらに気を引かれてその方向ばかりに注目してしまう。
すると、反対方向からひょっこり・・・などということがある。
「しまった」と思ったときには天国行き・・・というケースが現実にも多数あったと思う。
坂井三郎さんの回想に、「自分に撃ち落された敵機の搭乗員は、何が起きたかわからないうちに落とされたケースが大部分だと思う」というコメントがあったと思った。
小説(ツクリバナシ)なんだけど、さすが生き残る人物は違うものだ、と思わせる。高校出たばかりのひよっこ達を預かるベテラン機長も楽ではない。
Vickers Wellington爆撃機について: wiki/Vickers_Wellington
Wellington Bomber
The Mighty Wimpy
籠状の構造は強度の点で有利でした、と。
空飛ぶ籠と呼んだ(南面堂が勝手に呼ぶ)訳は、この写真に驚いたから: ブレーメン爆撃から帰還したBH-Z, Z1407号機(亡命ポーランド人部隊機)
布張りの外板はめりめり剥げて飛んでいってしまったが、籠状構造と操縦系には致命的な損傷がなかったので、見事に帰ってこられました、と。
貼り直した
空飛ぶカゴ屋だ?
ポーランド人クルーご一同
生きた心地しなかっただろな。
蛇足になるが、米軍のB17の場合も、「よくまあ無事に帰ってこられたもんだね」という写真が多数あるけど: Battle-damaged B-17s
極めつけはこいつ⇒後部胴体を独戦闘機の翼端でざくーっと行かれちゃったけど、90分間持ちこたえて戻ってきた"All American"が凄い: 3~5枚目