閑猫堂

hima-neko-dou ときどきのお知らせと猫の話など

「プテラノドンのそらとぶいちにち」

2023-11-22 11:46:02 | お知らせ(新刊)

絵本の新刊です。
『プテラノドンのそらとぶいちにち』(絵・鈴木まもる 偕成社)

『トリケラトプスのなんでもないいちにち』『ティラノサウルスのはらぺこないちにち』につづく恐竜シリーズ、3作目です。
前の2冊についての記事はこちら→ きょうりゅう絵本2冊




今回の主役は、翼竜(分類上「恐竜」ではない)プテラノドン。
海辺の崖をねぐらに、魚を食べて暮らしています。

 

主役の他に、こんなのも出てくるし…

 

こーんなのも出てくる。

制作にまつわる話は、偕成社のウェブマガジンで、描いた人と共にいろいろ語っておりますので、そちらをごらんください。
作家が語る「わたしの新刊」

*****

以下、補足として。
(長いです。恐竜に興味のない方はとばしてね)

(1)
シリーズ3冊でとりあげた生物は、「白亜紀後期に、現在の北米大陸で暮らしていた」という条件で選んでいます。
なぜかというと、ティラノサウルスとトリケラトプスという二大人気恐竜(?)がそこに含まれるから。
したがって、時代の違うアパトサウルスやステゴサウルス(ジュラ紀後期)、地域の違うヴェロキラプトル(東アジア)などは、ざんねんながら登場しておりません。

ただ、白亜紀といっても、約1億4500万年前から6600万年前と、とてつもなく長いのです。「後期」だけでも3350万年もの幅があり、それがさらに年代順に6つに分けられている。
ティラノサウルスとトリケラトプスの化石は、どちらもそのうちの一番最後の(=新しい)時代の地層から発見されています。
しかし、プテラノドンの化石がみつかっているのは、そのひとつ前の地層。
ということから、「ティラノやトリケラたちの時代には、プテラノドンはすでにいなかった」とする説が、現在のところ有力なのだそうです。

これは、ちょっと困りましたけれど、これまで化石が出ていないというだけで、「いなかった」とは言い切れない。状態の良い化石になって残るというのがそもそも稀有なことであるし、地球上をすべてくまなく掘り返して調べたわけではないし、ね。
できるだけ事実に即して、とはいっても、科学本ではないので、あまり細かくこだわるとかえって変になると考え、ざっくり「白亜紀後期」の範囲内ならOK、ということにさせていただきました。

(2)
上に関連して。
本書16~17ページ、プテラノドンがさまざまな種類の恐竜たち(たぶん100匹以上いる!)を見下ろしながら飛ぶシーンがありますが、これも「ざっくり」です。
実際にこれらすべてが同時に同じ場所でこんなふうに暮らしていた、という意味ではありませんし、大きさなども図鑑にあるようなデータを正確に反映して描かれているわけではありません。ねんのためお断りしておきます。

(3)
その「恐竜100匹」の場面ですけど、最初わたしは、ここに描かれるのは3~4種くらいのつもりで、絵に合わせて本文に「くさをたべているトリケラトプス」などと入れるはずでした。が、描く人が「いろんなのをいっぱい描きたい!」と言って、出来上がってみたらこういうことに。
お子さんに読んであげるとき、「これはなんていうきょうりゅう? これは? これは?」とひとつひとつ聞かれたら困るだろうと思ったので、全部に名前を入れてあります。
絵の邪魔にならないように、小さい字で入れましたので、もちろん無視していただいてもかまいません。「パキケファロサウルス」か「バキケファロサウルス」かわかんないようなときは、ルーペがあると便利です。


 

(4)
28~29ページの、プテラノドンが崖から無事に飛び立つ場面。
下にいる恐竜たち(肉食)は、文章には何も書いてありませんが、「逃げられた! ざんねん~!」とくやしがってじたばたしている設定です。
ところがね、最初からここまでずーっと読んでくると、彼らが「とべた、とべた!」と喜んで手を叩いているように…見えてきません?



そうすると、ここまでプテラを追いかけてきた連中が、じつは背後から見守り応援していた、というふうにも思えてくるではないですか。
これは、校正の段階で、絵に文章がのって、ページをめくり、声に出して読んで、はじめてわかったこと。原稿ができてからそこまで、一度も気づかず、完全に想定外だったので、びっくりしました。
こちらの意図せぬ解釈ができてしまう、というのは、文章担当として、だめであります。

わたしは変な(人間の価値観に寄りすぎた)擬人化は好きでないので、「こわもてだけどじつは心優しいティラノサウルス」とか「プテラのがんばる姿に感動して味方になったドロマエオサウルス」みたいな話は書けません。
前の2冊でも書いたように、草食動物は草を食べ、肉食動物は肉を食べる。そこには良いも悪いもなく、「食べる」=「生きる」という基本があるだけ。プテラは魚をとって食べるけど、地面に落ちていたらティラノのごはんになってしまう。それが一番自然なこと。
でも、もしかしたら、この絵を見て「みんなおうえんしてたんだね」「よかったねって、わらってるんだね」と感じてくれるお子さんがいるかもしれない。それはそれで、すごく素敵なことじゃないかと思ったのです。
そういうわけで、文も絵も、あえて直さずそのままにしました。
このシーンの解釈は、読む人によって、あるいは、読んでもらう人によって、2通りあり、どちらも正しい。
そういうことにいたしましょう。

「ボクこれ知ってる。ときどき池にくるやつでしょ?」

(うん、あれは本名アオサギだけどね…)


*****

東京は吉祥寺のクレヨンハウスさんで、サイン本30冊置いてくださるそうです。
このシリーズは扉絵が見開きで入っているので、どこにサインをするか迷うんですけど。
途中で思いついて、10冊ほどはプテラバージョンのサインにしました。当たった方はラッキーかも。

 

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「ここにいるよ」

2023-09-15 10:18:26 | お知らせ(新刊)

絵本の新刊です。
『ここにいるよ』(鈴木まもる・絵 金の星社 2023年9月刊)

色がコマちゃんっぽいですが、コマがモデルではありません。
絵の人と相談したわけでもなく、出来上がったらそうなっていたという…(笑)


こねこのちーすけ、はじめてのたんけん。
おかあさんねこがねてるまに、おにわのなかを、そろーりそろり。
さあ、どんなものがみつかるかな?

書いたのは、2020年の夏。
2020年といえば、新型コロナウイルス感染症が発生し、世界各地でロックダウンが実施されて大変なことになった年。日本でも学校が休校になったり、仕事がリモートに切り替わったり、マスクが売り切れたりと、どこでもばたばたぴりぴりの真っ最中だったときです。
そんな中で「子どもの安心・安全」をテーマにした絵本はできないかというご依頼をいただき、すぐに書いたのが、これでした。わたしにしては異例の素早い行動でした。

ただ、そのあと(やっぱり)いろいろ紆余曲折がありまして…。
主役は子猫ですんなり決まっていたものの、その他の登場生物を、あーでもないこーでもないと何度も取り替えてみたり、行き詰ったあげく冷凍庫に入れてしまったり…(笑)
さらに、自分の体調とか、絵の人のスケジュールとかもあって、結局3年あまりかかってしまいました。
つまり「コロナ禍での安心」という当初の目的には間に合わなかったわけですが、依然として今も国内外のさまざまな不安の種は尽きることがありません。だからこそ、小さな動植物の変わらぬ営みが大切に思え、幼いものの存在がひときわまぶしく輝いてみえるのかもしれません。

帯の裏に、こんなメッセージを書きました。
<あなたの いちばん あんしんな ばしょは どこですか?>
子どもにとってのおとな(「親」とは限らず)とは、虫が隠れる草の葉や、小鳥がとまる木の枝のように、いつも「あんしんなばしょ」でありたいもの。
わたしたちの作る絵本も、ささやかながら、そんな木の葉の一枚として、「ほっ」としたり「にっこり」したりしてもらえたら、嬉しいなあと思うのです。

 


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「つきのこうえん」

2023-05-25 11:52:46 | お知らせ(新刊)

新しい絵本ができました。
『つきのこうえん』(パイ・インターナショナル 2023年5月刊)
絵は島野雫さんです。


るなちゃんには、すきなものが たくさん あります。
おてんきのひが すき。
おやつの さくらんぼ、すき。
ねこの ミモ、だいすき。

 

満月の夜にだけ、パジャマの子どもたちだけが遊びに行ける「月の公園」。
そこではいろんなものが、すこしすきとおって、すこしひんやりして、きらきらして、ふわふわして…

3年あまり前に、「島野さんの絵で絵本を」というご依頼をいただいて書いたおはなしです。
わたしとしては、好きな言葉のイメージをいっぱい詰め込んだ感じ。
透明水彩と日本画の技法を合わせて描かれた絵が、素晴らしいです。ほとんどが夜のシーンなのですが、すいこまれるような闇と静かな明るさに、不思議と心が落ち着くようで、いつまでも見ていたくなります。


カバーは表裏つづきの一枚の絵になっているので、ぜひ一度は開いて見てくださいね。
デザインも素敵。写真やPCでは色がうまく再現できないので、実物を手にとってごらんいただけると嬉しいです。

作者インタビュー(出版社サイトへ)

 

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「金のゆびわのスープ」

2023-02-18 15:32:47 | お知らせ(新刊)

幼年童話の新刊です。
『金のゆびわのスープ』(あかね書房 2023年2月刊)。<グリムの本だな>シリーズ3冊目。
絵は、昨年『はるとスミレ』で絵本デビューされたイラストレーターの eto(エト)さんです。

 

前2冊『ねこのおひめさま』『こわいものなしの六人』と同じく、「え、グリムにそんな話あったっけ?」と首をかしげていただければしめたもの(笑)。
原題は「千枚皮」または「千匹皮」といい、なんとなく「一反木綿」や「ろくろっ首」たちを連想する(しません…?)妖怪系のイメージがつきまとう。でも、なかみは全然そうではなくて、正統派お姫さま物語。何不自由なく育ったお姫さまが、お城を出て苦労したあげく幸せをつかむというお話。
こっそり城を抜け出すお姫さまが、身分を隠すために着ていくのが、千枚皮=パッチワークの毛皮のマント。
それが呼び名になり、そのまま昔話のタイトルにもなっているわけですが…。


ドイツ語タイトルの「Allerleirauh」(Allerlei あらゆる種類の+rauh 毛深い)は「アラライラオ」みたいな発音になるらしく。
お姫さまでなくなったお姫さまは、生きていくために、台所の下働きに雇われ、変な名前で呼ばれて暮らさねばならない。その象徴としてのマント、そして名前。この2つは、物語の中で非常に大切なのですが、困ったことに、どうしてもうまく日本語になってくれない。
それ以前に、低学年向きは漢字制限が多いので、「千枚皮」の「枚」も「皮」も使えない、という壁がクリアできず…(グリムの本だな=タイトルで悩むシリーズ!)
マントの他に、三枚のドレスとか、三つの黄金アイテムとか、華やかな舞踏会とか、素敵なものがいっぱい出てくるのに、「千枚皮」という妖怪味ラベルが貼ってあるせいで、現代の子どもたちが出会い損ねたら、もったいないんじゃないかなあ…
ということで、全然違うタイトルをつけてみました。

この話のパターンは、日本だと御伽草子にある「鉢かづき」あたりが近いのかなと思います。でも、世をはかなんで泣いてばかりの鉢かづきちゃんと比べると、こちらのお姫さまは行動力があり、しっかり自分の意志を持ち、したたかと言えるような面もあって、そのへんの和洋の違いが興味深いです。
結婚で終わるハッピーエンドは、ありきたりとはいえ、なんといっても昔話のお約束、基本中の基本。
ただしラストの2ページは、グリムにはない閑猫オリジナル。なるべく原話に忠実にを心がけたけれど、ぎりぎりこれくらいは、書かせていただいても、いいかな、って(笑)

もし現代版を作るんだったら、スープ作りの腕を活かして、レストラン経営で大成功…とかね。王さまを巻き込んで、貧しい人々に温かい食事を配るボランティア活動を…とか…。
各自あれこれ想像をめぐらせてみるのも楽しいでしょう。

イラストの eto さんは、童話の挿絵のお仕事はこれが初めてとのことですが、美しいお妃さま、愛らしいお姫さま、悩める老王、隣国のイケメン王さまを、生き生きと、とっても素敵に描いてくださいました。
毛皮をかぶって台所で働くみじめなシーンには、ちょっぴりコミカルな味を加えて、お、けっこう適応力あるじゃん、とも思わせてくれたり。
そこから一転、とっておきのドレスをまとって舞踏会に向かう姿は、お姫さまらしい気品と決意があふれていて、思わず「ブラヴォー!」と拍手。
すべてを「目に見える形」に、「見たかった形」にしてくださった eto さん、ありがとうございました。

***

ついでに。
この話に出てくる「スープ」ですが、Brotsuppe =パンのスープ。というのは、コース料理の最初に供されるコンソメスープみたいなものではなく、具沢山の、それだけで軽食になるようなもの。
オニオングラタンスープとか、ポタージュのクルトン大増量とか、そんなイメージでしょうか。
ドイツの伝統レシピでは、焼きたてでない、かたくなったライ麦パンで作るのがよい、とか。
お客を招いての舞踏会は、もちろんお食事も出るけれど、あんまりおなかいっぱいだと踊れませんし…
(この舞踏会って、若い独身の王さまのお見合いパーティー、みたいな意味もあるのよね?)
どっちみち主催者の王さまは、ゆっくり食べてるひまもないでしょう。
終わってお客を見送り、ひとりになって、ふうやれやれ、というところで、お夜食を召し上がる。宴のあとの雑炊とかお茶漬けみたいなもの、ね。
こういうことを調べたり考えたりするのが本当に面白いのでした。

 

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あまぞんさんで「ソフトカバー」と表示されているのは、間違い。この本はハードカバーです。

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「げんきになったよ こりすのリッキ」

2022-12-07 11:56:44 | お知らせ(新刊)

新しい絵本ができました。
『げんきになったよ こりすのリッキ』
絵は、とりごえまりさんです。
12月7日発売。偕成社から。

リッキは、かけっこやおにごっこの大好きなりすの男の子。
そんなリッキが、あるとき、病気になってしまいます。
となり町の大きな病院に入院することになりました。


いたいちゅうしゃも、いやなけんさもがまんして。
たくさんのおくすりも、がんばってのんで。
秋がすぎ、冬がすぎ、春になるころ、やっと退院できたリッキ。
ひさしぶりの学校は、ちょっとどきどきします。
「おかえり、リッキ!」「よかったね、たいいんできて」
まだまだ、からだはよわっているし、できないこともたくさんあるけれど…
すこしずつ、すこしずつ、リッキは元気になっていきます。

***

病気で長期入院した子どもの社会復帰のおはなし、です。
原稿は、4年か5年くらい前に書いて、しばらくそのままになっていました。
とりごえまりさんに絵を描いていただけることになったのが、昨年の秋。
とりごえさん、絵本まるごと1冊を描かれるのは10年以上ぶりとのことですが、子りすのふわふわした毛並みの可愛らしいこと。そして、しんとすいこまれるような奥行きのある背景。
ひっそり咲く野の花のひとつひとつを眺めていたら、知らないうちにわたしも子りすのサイズになって絵の中で遊んでいました。

これは偶然なのですが、わたし、とりごえさん、編集の千葉さんの3人とも、大きな病気で入院手術を経験しており(わたしはいまも治療継続中…)、そのおかげで話が通じやすく、体験としてリアルに「これ、わかるわかる」という部分もあれば、逆に「ここはリアルな表現はやめておきましょう」というようなポイントもぴたりぴたりと一致して、とても嬉しいおしごとでした。
りすの病院は内装も木材で、居心地よさそうでうらやましいです。
この絵本ができてよかった。ほんとうによかったな。

*来年1月には、東京のピンポイントギャラリーで原画展もあります。詳しいことはまたあらためてお知らせします。
とりごえまり個展 森へ


*この絵本について書かれたとりごえさんのブログ→こちらです。

りすじゃないけど、木のぼりもすこしはできるコマ吉。うちに来て5年になりました。
昨年は尿毒症で10日間の入院という騒ぎもありましたが、いまはすっかり元気です。

***

例によって、ここからは(長いけれどあまり重要でない)蛇足。

あとがきに、静岡こども病院の図書室で長く司書をつとめられた塚田薫代さんが書いてくださっていますが、もともとは「小児がんを克服して学校に戻ってきた子どもを理解するための絵本が欲しい」という要望から生まれた企画でした。
いただいた原案では、主人公はサッカーの好きなふつうの小学生の男の子。退院したからといって、100パーセント元どおりになったわけではなく、治療の副作用や後遺症、まだ続く通院、学習の遅れ、ひさしぶりに会う友だちとの関係…たくさんの悩みや不安を抱えての登校なのです。
一方、迎える側のクラスメートたちも、どう対応すればいいかわからず、とまどっている…。

いま国内で年間およそ2500人の子どもが小児がんを発症しているそうです。治癒率は70~80%と比較的高いものの、そのあとのサポートが不可欠で、退院後の学校生活になじめず不登校になってしまうケースもあるとか。
その子がどんな状態なのか。どうしてあげたらいいのか。「同情」だけでなく「理解」して支えていくには何が必要なのか。
そのための絵本があれば…という現場の声は、とてもよくわかります。それは、あったらいいと、わたしも思う。
ですが、それはわたしの仕事ではないな、と直感したので、その場でいったんお断りしました。

この「まず断る」というのが、昔っからの良くない癖なんですけどね。
そもそもわたしは、「現実は現実だけでじゅうぶんだ」と思っているのです。それはもう物心ついて以来、と言っていいくらい、ずっと一貫してそう思っている。
辛い治療を終えてやっと退院してきた子どもが、さらなる厳しい現実に直面し、からかわれたり、不当にねたまれたり、いじめられたりという目にあいながら「がんばって乗り越え」なきゃならないという、そういう現実があったとしても、それをわたしが、人一倍「現実」が不得手なわたしが書いたって、誰も嬉しくないし、誰も救われないではないか。
絵本の力って、そういうもんじゃないでしょう。
(わたしは絵本というもの自体に特別な力があるとは信じていません。力を持っているのは「もの」ではなく「人」のほうですから)

「何々のために役立つ」というだけが目的なら、それはつまり教材。無料で配るイラスト入りパンフレットでもいいかもしれない。むしろそのほうが、個々のニーズにきめこまかく合わせることもできますし、いまだったら、ダウンロードして印刷して小冊子を作るということも簡単にできます。
せっかくちゃんとしたハードカバーの絵本を作って、書店で一般に販売するからには、もっと違うことをしよう。絵本だからできることを。
小さい子から、おとなまで、病気のひとにも、そうじゃないひとにも。何度でも繰り返し読みたくなる「お気に入りの1冊」になるように。
現実は現実で、目をつぶっても消えてなくならないけど、まあそれはちょっと置いといて。
こっちでは、できるだけ楽しいことを考えて遊びましょう。

…と、まあ、そんなふうにしてできた絵本です。


りすの学校で習う大事なことのひとつ。どんぐりの種類と見分け方。
これは何だろう。いつも秋の最後に落ちる、ぴかぴかの大粒のどんぐり。
美味しそう…と思うのは、ご先祖がりすだったから(笑)

 

 

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「ぐいーん! こうしょさぎょうしゃ」

2022-11-02 11:45:38 | お知らせ(新刊)

絵本の新刊です。
『ぐいーん! こうしょさぎょうしゃ』。偕成社の「のりもの絵本」シリーズ11冊目。
(この表紙の微妙なグリーン系の色がどうしても出ない! ちゃんと撮れたら画像入れ替えます)

これはもうタイトルどおり、

ぐいーんと上がって高いところで作業をする車が、

 

こんなところや、

 

あんなところで、

 

いろんなお仕事をするという絵本です。

高所作業車って、道端で電線や電話線の工事をしているのを見かけても、名称までは知らない人が多いかもしれません。
サイレンの鳴る緊急車両や、動きのダイナミックな大型重機にくらべると、やや地味な存在ではありますが、メーカーや用途によっていろんな種類があり、見慣れてくるとおもしろいです。
たとえば上のトンネル点検の場面では、2台の高所作業車がおなじ仕事をしているけれど、左のほうが可動域が広い新型タイプ。とか。
電気工事をする高所作業車は、乗る人が感電しないよう絶縁仕様になっている。とかね。

ところで、高所作業車は、どうやって乗り降りするか、ご存じですか?
わたしは、なぁんとなく、あれが地面すれすれまで下りてくるんだろう…と思っていましたが、そうではありませんでした。

乗るのも降りるのも、この状態から、なんだって。知らなかった!
べつに知らなくてもいいけど、面白いので、ご参考までに。

 


以下は、蛇足。(←長い)

この乗り物絵本シリーズは、最初からシリーズ化の予定があったわけではなく、たまたま気が向いたところ、書きやすいところから書いていったのですが、1冊目の『ピン・ポン・バス』からいつのまにか26年…おもなメンバーはほぼ出そろい、『いそげ! きゅうきゅうしゃ』でちょうど10冊というきりのいいところなので、もういいかな、と思っていました。

1年半ほど前のこと、はたらく車大好き兄弟のお母さんから、「もし次回作があるなら、フォークリフトを」というリクエストをいただき、うーん、フォークリフトか。いろんな場所でいろんなものを運べるし、魚市場でフォークリフトとターレのコンビなんか楽しいかも! と、にわかに考える気になったのです。
しかし、「描く人」と相談する中で、働く場所が市場や倉庫に限定されるから、画面の変化が少なくて1冊もたない、という問題がクリアできず、かわりに浮上してきたのが、公道も走れる高所作業車、でした。
(フォークリフト好きの次男くん、ごめんね~)

わたしは以前『だいすき! はたらくくるま』(PHP研究所 2001年)というアメリカの絵本を翻訳したことがあり、この中にも高所作業車が出てくるのですが、



説明に「A Cherry Picker or aerial bucket truck」とあって、さくらんぼ摘み! 空中バケツ! そうなのか…と、そこだけすごく印象に残っていたのでした。
以来、高所作業車を見かけるたびに、あ、チェリーピッカーだ、あ、空中バケツだ、とひとりでにんまりする怪しいヒトに…(笑)
今回、ほんとに「さくらんぼ摘み」をする高所作業車も登場させることができて、うれしい。

ロシアのウクライナ侵攻が続く中で描かれた絵には、描いた人の気持ちを反映して、「レストラン ウクライナ」の文字や、ウクライナ航空の飛行機も。
のちのち読み返して、そうか、あの時代に描いたんだなーと、感慨深く思い出すかもしれません。

 

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「光のカケラ」

2022-07-09 16:04:51 | お知らせ(新刊)

新装版<三日月島のテール>シリーズ最終巻。⑤『光のカケラ』できました。

 

カバーイラストはやっぱり①巻と⑤巻が好き。
黒ねこが入ると画面が締まる。とくに⑤巻のサンゴロウは、悪役っぽくて良いなあ。
テールは、笑うとコマ吉に似ている…とこのごろ思う。

 

もとの絵では笑ってなかった。というのは内緒の話ね。

***

『ドルフィン・エクスプレス』から20年、『光のカケラ』から15年。
本の中の登場人物は年をとらない。本を開けば、いつも変わらない海があって、おなじみの顔が見える。
わざわざ手にするまでもなく、本棚にちらっと目をやり、ああ、そこにいるね、って、それだけで安心する。
そんなふうに自分で自分の書いたものに支えられてきた日々でした。
本の中では、作者も年をとらない。でも、ふと気がつくと、現実世界ではちゃんとそれなりに年齢を重ねている自分がいて、あらあら、とあわてたり。

ちょうど昨年のいまごろから、5巻すべて一字一句打ち直し、読み直し、こまかい修正をしていました。刊行が決まってからは、初校で読んで、再校でまた読んで。その間、頭はほとんど三日月島に行ったままで、楽しかったなあ。
『光のカケラ』は、いくつかどうしても気になるところが出てきて、他の巻より手直しが多くなりました。ちょっとした思い違いとか、文章の落ち着きの悪いところとか。作者以外にはどうでもいいようなことかもしれないけれど、またとない機会なので、思い残すことのないようにと、直しました。間に合ってよかった。
(新旧並べてどこがどう違うか調べたりしないでね。すーっと普通に読んでいただけるとありがたいです)

三日月島は三日月島で、独立した物語ともいえるし、サンゴロウシリーズとの微妙なつづきぐあい、重なりぐあいや、「そうか、あれは、あれだったんだ!」など、裏の楽しみ方もできるので、いろいろお試しくださいませ。
念願の復刊プロジェクトに力を貸してくださったみなさま、待っていてくださったみなさま、ありがとうございました!

 



あまぞんさんの分類では、①~④巻が「こどもの冒険読み物」で、⑤巻だけ「こどものSF・ファンタジー」になってるけど、何なんだろうね?(笑)

 

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「流れ星レース」「波のパラダイス」

2022-06-21 08:13:57 | お知らせ(新刊)

<三日月島のテール>シリーズ。
『ドルフィン・エクスプレス』『三日月ジョリー』に続いて、③『流れ星レース』、④『波のパラダイス』が発売になりました。

夏らしくさわやかなブルーの「流れ星」と、話に合わせてハーブっぽいグリーンの「波パラ」。

新作ではないとはいえ、ひと月の間にこの長さの読み物が4冊も出るというのは、わたしも初めてのことで、校正に次ぐ校正、それもだんだんスケジュールが厳しくなり、うひゃーといいながらやっていました。
だけど、それを口実にこの世界にどっぷり浸っていられるのもじつは心地よく、終わらなければいいのになー、なんて思ったり。


『流れ星レース』の序盤にある、この絵は、全5巻の中でいちばん好きなシーン。

 

元本では、8ページにわたって文章の下の余白にレースの様子が描かれていましたが…

 

新装版では、1ページの絵に。

 

『波のパラダイス』は、カザミ・リンさん、ミナミ少年、アコーディオン弾き、というゲスト出演者の全員が、みんなちょっとずつ思わせぶりだったり訳ありだったり謎めいていたりするので、5巻中もっとも複雑な話になってしまったかな。
(16年もたってから反省しても遅~い!)

 

元本にある「かかえてほうりだす」シーンが好きで…

 

あらたに1ページ大に描いてもらいました。

そして、この巻のアコーディオン弾きだけ、モデルがいる…っていう話は前に書きましたっけ?
直接に面識があるわけでも何でもなく、ほんとはアコーディオン弾きでもないんだけど、わたしはその人(の歌)に命を救われたと思っているので、そのお礼の意味で、猫になってもらったのでした。
重ね着しているぼろ服は、よーく見るとヨウジヤマモトのヴィンテージ物だったりするんだよ。


元本の裏表紙にあったカラーの絵は、カバーそでに。

 

テールの子ども時代の写真はこれ1枚しかないので貴重。

さあ、あとは⑤『光のカケラ』だけ。7月11日ごろ発売の予定です。読んだことのある人も、ない人も、おたのしみに。

 

 

 

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「こわいものなしの六人」

2022-06-16 21:29:53 | お知らせ(新刊)

あかね書房<グリムの本だな>シリーズ。
『ねこのおひめさま』につづいて、2冊目『こわいものなしの六人』ができました。
今回の絵は『ポロポロゆうびん』『スプーン王子のぼうけん』でも描いていただいた、こばようこさんです。
6月20日ごろの発売になると思います。

グリムの中から、わざとあまりメジャーでない(けど面白い)作品を選ぶ、このシリーズ。
『こわいものなしの六人』と聞くと、「そんなのあったっけ?」と思われるでしょうが、読んでみると「あー、どこかで読んだ気がするわ」という方も多いかもしれません。



簡単にいえば…銅貨3枚しかもらえずクビになった兵隊が、仲間をあつめて、けちな王様をへこませる話!
その仲間というのが、力持ちの大男、目のいい猟師、鼻息のすごい男、足の速い男、冷凍男、という顔ぶれ。
いろんな能力者をとりそろえたところが、映画でいえば「X-MEN」みたいでもあるし、「オーシャンズ11」みたいでもありますね。
と言っていたら、編集のKTさんは、漫画「11人いる!」と「サイボーグ009」を思い浮かべていたそうです。
グリムの中には、もうひとつ『六人の家来』という類話があり、そっちは主役が王子様で、混同しやすいのですが、わたしは "あるじと家来" という上下関係のないこちらのほうが断然好み。




フルメンバーそろった場面。
出てくるヒトが多いので、こばさん、大変だったと思います。しかも、ひとりは大男。この人が、ときには足だけ、ときには顔だけと、控えめでありつつ、ちゃんとメンバーとしての存在感を出しているところが好き。大男、可愛い。

兵隊(ほんとは「もと兵隊」ね)は、原作に「頭がよくて勇敢な男」と書かれているだけですが、この人は「策士」であり、リーダーシップという以上に、人がついてくるようなカリスマ性を持っている。それがつまり彼の「能力」なのですが、文章だけでそこまで読みとるのは、子どもにはちょっと難しいかもしれません。
こばさんが、思いきりかっこよく描いてくださったおかげで、雰囲気なんとなく伝わるんじゃないかと思います。

早足男は、足が勝手に走りたがって困るので、ふだんは片足をはずしている…というのが原作の設定。ここはちょっと変えさせてもらって、足をはずすかわりに鉄のおもりをつけることにしました。
ドイツの国営放送が制作したグリムシリーズのTVドラマがあるのですが、それをみると、早足は錨みたいなものを背負っていて、それがおもりになっているらしい。なるほど、その手もあるか~、と思ったので。
(ちなみに、このドラマでは、メンバーのうち2人が女性だったり、いろいろと現代ふうなアレンジがされており、音声はもちろんドイツ語なのでまったくわかりませんが、面白かったです)

 

裏表紙のお姫さまが、とってもキュート!
かけっこが得意なおてんば姫なので、髪もみつあみ。
どんな格好で走るのか、気になりません?

***

さて。今回のこれもまた ”タイトルで損をしている話” です。
手元の資料をみても、「六人男、世界を股にかける」「六人組世界歩き」「六人組、世界をのし歩く」などなど…。
どうもなんだか覚えにくい。「六人」はいいとして、「世界」がいまいちピンとこない。
原題は  "Sechse kommen durch die ganze Welt" で、最後の Welt が World つまり「世界」なんですが、六人で世界旅行をする、というような話では全然ないし。
そもそも「世界」の概念が、中世と現代では大きく違うので、ここは「世間」とか「世の中」の意味にとったほうが理解しやすいのではないかなあ。「世界をのし歩く」を、「うまいこと世渡りをする」「したたかに生きていく」と言い換えれば、納得いくじゃないですか。
(なぁんて、偉そうに言っておりますが、わたくしドイツ語は名詞10個ほどしか知らないので、まったくの見当違いかもしれず…笑)

個人的には「天下堂々」「天下無敵」みたいな言葉がぴったりくるところですが、この本は低学年向きなので、無敵なんて漢字は使えない。考えに考えて(本文を書くより時間かかった!)ようやくこのタイトルに落ち着いたのでした。
冬に出る予定の3巻めも、じつはタイトルで苦労したんだな…。
その話は、また次回に。

 

あら? 20日発売と書いてあるのに、あまぞんさんではもう売ってるんだ?
そして「ソフトカバー」となっているのは間違い。ハードカバーです。

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「ドルフィン・エクスプレス」「三日月ジョリー」

2022-06-01 09:32:32 | お知らせ(新刊)

大変お待たせいたしました。
新装版<三日月島のテール>シリーズ、まずは2冊。①『ドルフィン・エクスプレス』と②『三日月ジョリー』(偕成社)ができました。

プレスリリース →こちら

岩崎書店版の『ドルフィン・エクスプレス』が2002年だったので、今年でちょうど20周年です。
そんなにたったのかと、あらためて、びっくり。
(そういえば、サンゴロウを書き始めたとき保育園に行ってた息子が、ドルフィンの頃には中学生になっていて、それにつれて作品の世界も変わっていったのでした)




旧版とのサイズの比較、こんな感じ。ハードカバーから、ソフトカバーに。
カバーイラストは5巻とも描きおろし。
中のイラストは、前と同じのもあるし、新しいのもあります。
文章はほとんど変わりません。表記の統一など、こまかいところをちょこっと手直ししました。

 

文字組み、左が旧版、右が新装版。

***

そもそも、黒ねこサンゴロウも登場するこのシリーズが、どうして別の出版社から出ていたのか、という話をすると長くなるので、またの機会にいたしますが…

3年前のサンゴロウシリーズの「奇跡の大重版」につづいて、長く品切れ状態だったドルフィンシリーズもこういう形で復活し、うみねこ島と三日月島が、海をはさんでようやくつながった感じで、ほっとしています。
こころよく移籍を承諾してくださった岩崎書店さん、引き受けてくださった偕成社さん、ほんとうにありがとうございました。

2024年がサンゴロウの30周年になるので、それに間に合うといいかな、くらいに考えていましたが、思ったよりずっと早く実現することになりました。
エクスプレス船なみのスピードで作業を進めてくださった編集の千葉さん、テールにぴったりのデザインを考えてくださった装幀の杉浦さんに、心から感謝を。
そして、追加の絵をたくさん描いてくれたまもるさん、いつもありがとう。

③『流れ星レース』と④『波のパラダイス』は6月下旬、⑤『光のカケラ』は7月に、順次発売の予定です。

 

コマヤもお手伝いありがとね。

 

*2014年にサンゴロウ20周年記念で作った別館<海岸通り6番地>は、テールのシリーズも含まれているので、よかったら見にきてください。このところずっと更新はないけれど。
(放置していたので更新のしかたを忘れてしまった…笑)

 

 

 

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