ケミストの日常

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神戸大特許捏造の件・続3

2006-07-16 13:25:23 | 不祥事
Pecanさんにいただいたトラックバックの記事により、この件に一定の解決が付いたことを知りました。
中断中ですが、重要な問題でもあり、一時的に復活。

この件は、私も特許出願を企業と何度か進めたこともあり、当初から興味を持って以下のような検証記事を書いてきました。

神戸大特許捏造の件
神戸大特許捏造の件・続
神戸大特許捏造の件・続2

当初の報道では大前教授一人が槍玉にあがっていました。

検証を進める中で、

神戸大特許捏造の件・続
> #発明者3名のうちもう1名中井哲男氏は神戸大の産学官民連携推進部門長/連携創造本部教授で電気電子工学科教授だった(同姓同名がいなければ)
> #学内の人間関係のドロドロで内部告発って足の引っ張り合いのようで想像したくない

> 朝日記事→公になって→記者会見の流れではないか?という気がするのは、陰謀説を期待しているから?

> 取り下げを受けて、誰かが新聞に情報をリークした、朝日新聞が関係者に取材して記事に、それを受けて関係者の記者会見の流れか?
> リークしたのは誰か?
> リークすることで得をする人、もしくは責任を逃れることの出来る人がいたのか?


神戸大特許捏造の件・続2
> 中井氏がこの特許を出願したり、NEDOの助成を受けたりする際には、全く無関係の名前だけだったということはないでしょう。

と考えてきましたが、どうやらビンゴだったようです。
神戸新聞の記事によれば
データ捏造 神大2教授に訓告
神戸大学が、ダイヤモンドを使った工具の発明について特許を出願した際に、担当教授が実験していないデータを捏造(ねつぞう)し出願書類に記していた問題で、神戸大の調査委員会(委員長=北村新三理事)は十三日、「未実施のデータを含んだ特許の出願は、研究者の倫理に照らして不適切」とする調査結果を発表、教授ら五人を訓告や口頭厳重注意とした。
 調査によると、問題となった工具の発明にかかわったのは、連携創造センターの中井哲男教授▽工学部の大前伸夫教授▽同、田川雅人助教授。

 このうち中井教授が、必要な実験装置がないにもかかわらず、大前教授らが出した実験データを参考に、あたかも実験を実施しデータを得たかのように出願書に書き込んだ。
 大前教授は出願前、「こんなことまで書いて大丈夫か」と何度も確認したといい、中井教授は「書き過ぎた」と反省しているという。

 神戸大は、この出願について、「違法行為ではないが、重大な問題がある」と判断。同日付で中井、大前両教授を訓告、田川助教授を口頭厳重注意とした。また、管理監督責任を怠ったとして、眞山滋志連携創造本部長と、薄井洋基工学部長も口頭厳重注意とした。

 中井教授らの研究チームは、捏造データを用いた特許出願番号などとともに「新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」などに助成金の交付を申請。これまでに約四千五百万円の助成を受けている。
 調査委員会の北村委員長は「実験していないデータを入れた動機について、教授らから直接聞いていないが、事業化を考え、特許を取りやすくしたのだろう」と語った。
 また、薄井工学部長は「中井教授らの研究チームは現在、休止状態だが、今後態勢を立て直し、NEDOが引き続き助成を認めれば、研究を再開する可能性もある」と話した。


ポイントはここでしょう。
 このうち中井教授が、必要な実験装置がないにもかかわらず、大前教授らが出した実験データを参考に、あたかも実験を実施しデータを得たかのように出願書に書き込んだ。
 大前教授は出願前、「こんなことまで書いて大丈夫か」と何度も確認したといい、中井教授は「書き過ぎた」と反省しているという。


一番最初の朝日新聞の伝えるところによると
同本部は実験データの検証はしておらず、大前教授が実施したとしている他の3通りの実験についてもデータの真偽は確認していないという。

ここで、同本部とは中井氏が所属する「連携創造本部」のことです。
上の神戸新聞の記事では「連携創造センターの中井哲男教授」となっていますが、
連携創造センターは連携創造本部の前身ですからちょっと不正確です。

いずれにしろ連携創造本部の教授であり産学官民連携推進部門長を勤める人間が主導して行った捏造を、当初「連携創造本部は実験データの検証はしていない」「大前教授が実施したとしている他の3通りの実験についてもデータの真偽は確認していない」と新聞に伝えたわけです。

「今年3月、連名で出願者となっていた研究者の1人から工学部側に、「実験データに無理な内容がある。調べた方がよい」との指摘が寄せられた。これを受け、薄井工学部長が同月、連携創造本部に調査を依頼したという。」(朝日新聞)
調査がなされ、取り下げられたわけですから、調査の段階で共同で発明した中井氏に対しても事情聴取はあったはずです。
中井氏が自らの不正がばれそうになったから、もしくは連携創造本部で身内の不正を隠蔽するために、大前教授に責任を押し付けて逃げを計った、そのように見られてもしかたがないでしょう。

このような責任逃れは、警察の身内の不祥事隠しと同根のものがあり、捏造以上に、大学の教育者としてはあってはならない行為だと思います。
当初の情報について、何故大前教授だけが槍玉に上がったのか、中井氏が一切表に出てこないであのような報道がなされたのか、検証があってもいいと思います。




と、何故このことにこだわるかと言うと、第一報の重みを感じるからです。
「捏造」とされたものは企業ではあたりまえに行われていることで、企業出身者の中井氏が主導して行い、大前氏は躊躇しつつもそれに従ってしまった、こういった事実を知った時、大前氏はむしろ被害者の側面があります。

それにもかかわらず、当初の報道では大前氏が捏造を行ったとされ、それに対してかなり痛切な批判が向けられたことは神戸大特許捏造の件で引用したとおり。大前教授の全研究成果の再検証などという話まで飛び出していました。
最近はネットによってある程度調査できますから、関心を持った人間が調査して事実は違うんじゃないか?、といった考えを持つことも可能ですが、実際問題全ての報道に対してそのような関心を持って調査することは不可能です。

第一報で流された汚名はそう簡単には消えないし、当初の記事に比べれば今回の記事のインパクト全然違います。
朝日新聞は当初の「誤報」に対してなんら修正を行わないまま相変わらず大前氏の事件として記事を掲載しています。
教授ら5人を訓告、厳重注意 神戸大特許データ捏造問題
神戸大工学部の大前伸夫教授(59)らが特許の出願書類に捏造(ねつ・ぞう)した実験データを記載した問題で、同大学は13日、「出願は研究者の倫理に照らせば不適切だった」とする調査結果を発表し、出願にかかわった大前教授ら教授2人を懲戒処分ではない「訓告」、工学部長ら3人を「厳重注意」とした。

 同大学は、学外の専門家も入れた調査委員会を発足させ、経緯を調べていた。調査委は捏造について「直ちに法的責任を追及されるものではない」と判断。これを受けて、同大学は懲戒処分とはしなかったとしている。
 調査委の報告によると、問題の特許は、大前教授と同大学連携創造本部の中井哲男教授(57)=訓告=、工学部の田川雅人助教授(44)=厳重注意=の3人の連名で04年4月に出願。出願書類には8種類の実験データが記載されたが、うち6種類は現存しない実験装置を使って得られたとする架空のデータだった。
 同大学は、この特許の名称や出願番号などを盛り込んで「新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」に申請し、9千万円の研究助成金の交付が決まっていた。特許と助成金との関係について、調査委は「特許の内容が根拠となって助成金を獲得しようとしたものではない」と結論づけた。
 野上智行学長は「関係各方面にご迷惑をかけ誠に遺憾」とのコメントを発表。再発防止のため、研究者の行動規範の制定や組織の整備を進めるとしている。


朝日以外では共同通信の配信記事がある程度、
データ捏造で教授ら訓告 神戸大、「適切さ欠く」
神戸大工学部の大前伸夫教授が特許出願時に捏造(ねつぞう)した実験データを提出した問題で、神戸大は13日、大前教授ら5人を訓告などにした。
 出願にかかわった大前教授と連携創造センターの中井哲男教授が訓告、田川雅人工学部助教授は口頭厳重注意。管理監督責任を問い、工学部長ら2人を口頭厳重注意にした。
 弁護士らを含む調査委員会は「現存しない装置を使用したとするデータの記述があり、不適切だった」などとする最終報告を明らかにした。こうした行為について「研究者の倫理に照らせば適切さを欠く」としている。
 懲戒処分としなかった理由について、神戸大は「特許出願に関して、法的責任を追及されるものではない」などとしている。


全国紙しか情報源の無い人間にとって、相変わらず中井氏という名前はこの問題のキープレーヤーとしては映っていません。
あいかわらず大前氏の事件のままで、あちこちのブログで話題に上がったままです。
将来何かあって大前氏の名前で検索がなされると、不名誉なゆがめられた事実がたくさんヒットする、これはインターネットが存在する間は永遠に残ることになります。

事実関係を正しく伝えていない、名誉毀損として朝日新聞なり連携創造本部を訴えてもいいんじゃないかと思えるほどです。
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3 コメント

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Unknown (Pecan)
2006-07-17 13:46:19
すみません。お休み中のところを起こしてしまったようで…。



関西にいるため、手元の読売新聞でも正確に報道がされており、気づきませんでした。確かに、検索してみると事実を正確に報じたものはほとんどありませんね。第一報の重みという視点は斬新でした。



調査の結果は予想通りで納得のいくものでしたが、第一報の時点で、すでに調査を依頼されていた連携創造本部が事実を把握しながら隠していたとすれば、残念です。
Unknown (chem@u)
2006-07-18 23:07:56
いえいえ、結構コンスタントにブログは見に来てますから。



第一報の重みが気になるのは、環境ホルモン訴訟のようなニュースになったら目的は果たしたような事例を見ているからかもしれません。

今回の調査結果が広く知れ渡るようになるといいのですけど。

Unknown (chem@u)
2006-07-18 23:09:59
ちなみに上の記事を改めてみると、責任逃れのために意図的にリークしたのではないか、といったようにも読めますが、そういった意味で書いたわけではありません。責任逃れなら、伏せておくのが一番の方法ですから。

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神大教授・特許データ捏造問題・・・企業も姿勢を正すべき (只今療養中)
7月14日に書いた記事にいただいたコメントやトラックバックに対して、コメント欄に返信を記載しかけておりましたが、長くなりそうですので、記事といたします。 MANTAさん、chem@uさん、「弁理士の日