ケミストの日常

大学化学系教員の日々考えること。
HNはchem@uと省略してます。

日本産婦人科学会の示すヨウ素131の危険性

2011-04-25 17:31:42 | twitter
別記事にいただいたコメントより、日本産婦人科学会と言うところがあります。

産婦人科のお医者さんの集まる学会ですね。

被ばくを不安に思う妊産婦や若いお母さんからの不安が集中したのか、何度か放射線に対する「お知らせ」を掲載しています。

福島原子力発電所(福島原発)事故における放射線被曝時の妊娠婦人・授乳婦人へのヨウ化カリウム投与(甲状腺がん発症予防)について 2011/3/15

「被曝を受けた妊娠婦人ならびに授乳婦人」甲状腺がん発症のリスクとヨウ素剤の服用の目安を提示。

被曝線量が計 50,000 マイクロシーベルト(1.0 sievert [Sv] は1.0 Gy に相当する。1,000 マイクロシーベルトは1mGy に相当,文献1)以上の場合、50mgヨウ化カリウム錠2 錠(計100mg)を1 回服用する。


50mSvを甲状腺等価線量とすると、摂取基準の上限相当ですから、妥当とも言えます。

ただし、ヨウ素剤の服用で甲状腺に沈着しなかったヨウ素131は排泄され、その多くは母乳にも行きます。

それへの、注意勧告があってしかるべきでした。

福島原子力発電所(福島原発)事故のために被曝された、あるいはそのおそれがある妊娠中あるいは授乳中の女性のためのQ&A 2011/3/15

甲状腺がんの発症率が高くなります
被曝量が多いと甲状腺がんになりやすいとされています。
甲状腺がんになりやすくなる被曝量については50 ミリシーベルト(1 ミリシーベルトは1,000 マイクロシーベルトと同じ量ですので、マイクロシーベルトで表すと、50,000 マイクロシーベルト)以上とされています。


ここまではOK。

しかし、これは誤解。

例えば、時間当たりの被曝量が2,000 マイクロシーベルトの環境にいると、25時間で総被曝量が50,000 マイクロシーベルトとなり、甲状腺がん発症の危険が高くなります。

これは外部被ばくだから、大人でもせいぜい20gの甲状腺への影響は1mSv。

50mSv=50J/kg

50J/kg×0.02kg=1mSv

甲状腺への外部被ばくの影響って全身に対してと比較してホントに小さい。

甲状腺が小さい子供ならなおさら。
 ※ちゃんと理解してないことへの言及はやめておきます。

それでもちゃんとこういったことを示している。

妊娠中ならびに授乳中の女性にあっては、ヨウ化カリウムを服用しないで済むよう、特に被曝量を少なくする工夫が重要です。線源(ここでは福島原発)から離れること(遠隔地への移動)が可能な状況であれば、それをお勧めします。



それが3/16になって一変。

福島原発事故による放射線被曝について心配しておられる妊娠・授乳中女性へのご案内(特に母乳とヨウ化カリウムについて)

5km 以上離れたところに居住していた妊娠・授乳中女性へのご案内

実際に受けた被曝量は人体に影響を与えない低レベルのものです。


「平成 23 年3 月16 日15 時の状況」で内部被ばく量をきっちりと見積もっている例は一つも出ていないのに、なぜ根拠なく「安全宣言」を出せるのか、非常に疑問が残ります。

断片的な情報しかないにしても、まじめに周辺の線量を見てると、そんな悠長なことを言ってられないことはわかるのに。

実際にその後でてきたSPEEDIの結果ではかなり広い地域で100mSvの甲状腺被ばくの予想図が出されました。

多分、呼吸によるヨウ素131の内部被ばくについて、それなりの信頼性を持って出てきている図ってこれだけ。

それが、甲状腺等価線量とは何か、どのように計算されるのか、そういったことをわからない人たちが、うやむやに葬ってしまった。

その後。

水道水について心配しておられる妊娠・授乳中女性へのご案内 2011/3/24

1kg 当たり200 ベクレル前後の放射性物質を含む水道水(軽度汚染水道水と表現します)を長期にわたって飲んだ場合の健康への影響について学会の見解を示します。

毎日(計280日間)1.0 リットル(1,000 ミリリットル)飲むと仮定した場合、妊娠女性がその間に軽度汚染水道水から受ける総被曝量は1,232 マイクロシーベルト(1.232 ミリシーベルト)と計算されます。


これは、残念ながら換算係数を大人の実効線量へのものを使っていますから、甲状腺被ばくの議論をする目的には滅茶苦茶な計算で、まさに「安全デマ」の最たるものと言っても過言ではありません。

実は似たような「安全デマ」はteam_nakagawaでもありました。

team_nakagawaヨウ素131解説の二面性

はっきりいえば、ほとんどのリスク管理の専門家も同じ間違いをしていました。

たとえば、私も面識があり、書籍も購入して一目をおいている松永和紀さんも実効線量で計算していました。

適切に怖がりつつ安心して食べるために~自分で計算しよう!

例えば、放射性ヨウ素が50,000Bq/kgのホウレンソウを1日に200g食べた時の計算をしてみます。

1日分は

50,000×0.022×【200g/1000g】=220μSv=0.22mSv

10日続ければ、2.2mSvの被ばくです


これ見て、なんだ放射線の害なんて大したことなさそうだ、と思った方は大勢いるのではないでしょうか。

実は、甲状腺等価線量では、この段階で既に44mSvになってしまいます。

大人ですらこの数値、子どもだったら?、と考えたら、悠長に「怖がりつつ安心」などと言える状況ではなかった。

真剣に吸気による内部被ばくと摂食による内部被ばくの推定を始めるべきだった。

売れないものを地産地消に回し子どもに食させた方もいたのでは、今の懸念事項です。

これは、上で具体例を出した3人・組織だけの問題ではなりません。

リスク管理に一家言を持つ方のほとんどの頭の中で極楽とんぼが飛んでいた。



そして、なぜ、突然、今になって、訂正を明示もせず、というのがわからないのですが、

大気や飲食物の軽度放射性物質汚染について心配しておられる妊娠・授乳中女性へのご案内 (続報) 2011/4/18

不思議なことに、日本産婦人科学会、こちらでは、実効線量ではなく等価線量で計算しています。

当然、計算がかなりシビア(20倍シビア)なことになっています。

そしてこちらがリスク管理としては100%正しいのです。



つくづく思います。

3月の段階でこういった情報がちゃんと行き渡っていたら、混乱も大きかったと思いますが、無用な甲状腺被ばくをかなりの割合で避けられたはずです。

4月の半ばを過ぎての情報開示は、既にヨウ素131が自然減衰でどんどんなくなっている最中ですから、今後防げ得るヨウ素131も限られ、世間の注目もそれほど集まらなくなります。

汚染地産の野菜を買わないことに対して、過剰防衛との批判があります。

しかし、過去のコントロールしないまま受けた被ばくとのバランスを考えると、できるだけ今後のヨウ素131内部被ばくを避ける、というのは理にかなっています。



さて、なぜ日本全国そろってこんな大ポカをしてしまったのか。

日本で放射線の被害がでるような事故が起きるはずがない、という甘い先入観をリスク計算をする時に持っていなかったか。

我々は過去の内部被ばくの状況を大雑把にでも把握するよう努めるべきなのでしょうか?

それとも、「過ぎたこと」と過去の事実に目をつぶって、おまけにリスク管理に大ポカをやらかした事実にも触れずに済むように、放置すべきでしょうか?

今、世間の目がセシウムに移っているのが、まさに目をつぶってる、ように見えます。

それでも、せめて「触れない」くらいの配慮でもあればともかく、未だに、一か月前の間違った知識を振りかざしてる人たちがたくさんいるのが、非常に迷惑だったりします。
ジャンル:
ウェブログ
コメント (36)   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 武田邦彦中部大学 教授 の... | トップ | SPEEDI結果が出てきたところで »
最近の画像もっと見る

36 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
日本全国そろってこんな大ポカ (takeshi6925)
2011-04-25 18:18:42
たびたびおじゃましてすみません。
ほぼ全面的に同感です、が、より深刻なのは、個人レベルだけでなく、専門機関・学会が公式ページで間違った情報を流し、訂正していないことだと思います。T先生と変わりありません。

核医学会
http://www.jsnm.org/japanese/11-03-25
「国際放射線防護委員会ICRP報告にあるとおり、約120,000 Bqの放射性ヨードが体内に入った状態(甲状腺線量0.020Gy程度)でも子供達の甲状腺癌発生が増加する危険はありません」

http://www.jsnm.org/japanese/11-03-28
「お子さんの体に入った放射性ヨウ素は1Bq当たりお子さんの甲状腺に約4.3x10-4 mSvの放射線を当てるとされています。」

放医研
http://www.nirs.go.jp/information/info.php?i13
「長期間摂取し続けた場合でも甲状腺が受ける放射線量が1年当り50ミリシーベルト以下となるように決められています。
現時点ではあまり想定されませんが、例えば、300ベクレル/1リットルの水を大人が毎日2リットル、1ヶ月間飲み続けた場合、約400マイクロシーベルトの被ばくを受ける計算になります。」

日本産婦人科学界のアナウンスも、最初のはどこぞの権威学会の指導に従ったものでしょう。今回のは係数の使い方からも、独自の調査・理解によるものと思われます。多分、学会内外から入った突っ込みに応えたものでしょう。
長文失礼しました。今後とも応援しております。
Unknown (chem@u)
2011-04-25 18:31:57
いつも有用情報ありがとうございます。

T先生批判者には、是非こっちも批判してほしいですね。
ありがとうございます (木蓮)
2011-04-26 00:26:41
ツイッターから来ました。政府の反論に対する第三者の冷静なコメントをありがとうございます。とても参考になりました。これからも応援しております。
ブログ読んで安心しました (jamshidian_55)
2011-04-26 01:19:50
最近、セシウムばかりに目がいっている人が多いですね。同感です。
ヨウ素について、心配していただいている方がいて少し安心しました。
最も子供が影響を受け、そしてチェルノブイリでも唯一認められたガンを誘発するヨウ素による体内被曝。
時すでに遅しの感もありますが、今後少しでも被害が小さくなるよう、願っています。
ちなみにSPEEDIの最新結果がでていますが、小児の甲状腺等価線量から大人の外部被爆に変わっていました。
Unknown (chem@u)
2011-04-26 17:27:10
木蓮様 jamshidian_55様

コメントありがとうございます。少しでもお役にたてれば幸いです。

ところでSPEEDIは実はあんなもんじゃないって話題があったので、それを今日の記事にします。

ちょっと時間かかるかもしれませんが。
Unknown (akisamiyo)
2011-04-27 00:10:08
はじめまして。
時々お邪魔させていただいています。

ヨウ素は、半減期が短い事でそんなに心配ないというような説明や空気を無理やり流していたような気がしています。
北関東のうちの地方でも、ヨウ素はほとんど検出されなくなってきましたし、このまま発信した側もフェードアウト決め込む気なんでしょうか。
もう、過去には戻れませんからどうにもなりませんけど、各学会せめて訂正や注意喚起は続けてほしいものです

T先生(素人目に良くも悪くもですが)やteam_nakagawaの客観的な説明、とても参考になりました。

SPEEDIにしてもたくさんの研究費をだして育ててきた学者も国民の為でなく誰のためのシステム・研究なんでしょうね。
Unknown (chem@u)
2011-04-27 00:31:20
コメントありがとうございます。

あちこちに敵を作ってそうで、何かのきっかけで一斉の攻撃を受けそうな不安もありますが、とりあえず大御所の間違いも指摘する覚悟が出来ています(笑)

SPEEDIは「税金を無駄にさせないプロジェクト」勝手に始動中です。

http://blog.goo.ne.jp/chemist_at_univ/e/39a4aa3b5f9a3c943cfc45735d17a27c
Unknown (コンタン)
2011-04-27 00:54:01
松永和紀さんは信頼している書き手なんですが、この記事なんかも粗雑で、ちょっとがっかりです。
http://www.foocom.net/column/editor/3827/

皆さん、デマを鎮めたいと思うあまり、つい冷静さを失ってしまうのかもしれませんね。
Unknown (chem@u)
2011-04-27 01:10:21
コメントありがとうございます。

あらら、というのが私も正直な感想です。

一度TBも送ったし(これは無視されても仕方ないか)、ブログのコメ欄で岸本さんの記事のリンクも貼られているし、あれを理解できないほど鈍らになっちゃったのかな、とは思いたくないですが。

やっぱり自らの先入観を崩すのは難しいのかなあ。
Unknown (tenod)
2011-04-29 07:57:11
最近になって、読ませて頂いております。

内部被ばくの計算は大変、ためになりました。政府発表はある程度信頼してよいだろうと考えていましたが、考えを改めざるを得ないようですね。

こちらで揶揄されてしまっている、結論だけ求めるリテラシーの低い親だったと反省しました。正直、子供に対して申し訳が無く、はらわたが千切れる思いです。

今は、「緊急時における食品の放射能測定マニュアル」を見ながら、計算をし始めたところです。このブログとは異なる値が出てしまうので、何が違うのか考えながらです。

分からないのが、3月25日ごろから新たな放射性物質の放出が無いのであれば、放射性ヨウ素は6%程度の量しか残っていない計算になりますが、これはどの程度、気にすれば良い量なのでしょうか?
いまさら、ヨウ素のことは心配するほどの量は残っていないと判断した方が良いのでしょうか?
Unknown (chem@u)
2011-04-29 09:56:31
コメントありがとうございます。

ご自身で計算される際、どのくらいずれますか?
使う換算係数の違い(数十%のずれ)、
単位が変わる(mSv,μSv,nSvなど)際、10のn乗計算の入る際、の桁あわせ(数桁のずれ)、
が間違いやすいポイントだと思います。

それと3月24日の件ですが、どうも観測場所が変わったことによる値の変化みたいで、それを同じ市で連続してるかのように見えてたのを私が勘違いしてました。

多分、陸域での最後の顕著な線量増加は3月22日まで、でいいようです。

で、減衰して、どれくらい?に対してですが、概算0.1μSvの線量増加が50000Bq/m2のI-131の降下に相当してるように見えています。

1μSvの増加があってその後線量が減少してる地では500,000Bq/m2の降下があった、まだ20,000Bq/m2は、残っている、との計算です。

結局、どれだけの降下があったかで、現在の残存量が決まりますので、南関東では基準値越えを心配せずに測定できるころかな、と勝手に推測してます。
Unknown (chem@u)
2011-04-29 09:57:34
換算係数の違いは、間違いというより、任意性の誤差範囲というほうが適切ですね。
Unknown (chem@u)
2011-04-29 18:20:58
@hayanoさん「アメリカ国防総省公開資料に基づく計算例」によると
http://plixi.com/p/96972632

47万Bq/m2のCs-137で1μSv/hの線量増加
74万Bq/m2のI-131で1μSv/hの線量増加

ガンマ線のエネルギーが低い分I-131の量の方が多くなりますね。

桁合わせの概算と以外に一致していてビックリですが、ちょっと過少に見積もりすぎていた。

大概は過大見積り方向にエラーが行くように誤差のバイアスをかけているけど、あまりに大きい数字に、少しびっくりして、低めにして返って失敗。
甲状腺等価線量 (tenod)
2011-05-02 09:52:39
甲状腺等価線量=(甲状腺等価線量換算係数mSv/Bq)×(食品の放射線量Bq/kg)×(1日あたり摂取量)×[1-exp{-(物理的崩壊定数)×(摂取期間)}]/(物理的崩壊定数)

上記の「緊急時における食品の放射能測定マニュアル」に記載されている式に当てはめて、エクセルを使って計算しました。

乳児の甲状腺等価線量換算係数を2.8x10^-3として、この記事中の「5万Bq/kgの食品を0.2kgを10日間食べた」場合の甲状腺等価線量を計算したところ、188mSvと大きな値が出てきました。

確認に、このブログで紹介されていた、産業技術総合研究所の岸本充生先生の2011/04/06の計算が再現できるか確認したところ、有効数字2ケタの範囲で値が一致しました。

何が原因だか、さっぱりです。

後、1μSv/hにつき、I-131は7.4E5(Bq/m2)、Cs-137は4.7E5(Bq/m2)とありますが、これは空間線量も地上に落ちた分の寄与が大きいということでしょうか?どうも、空間中の放射性物質濃度との関連が今一つつかめずと言うところです。参考になるようなページは無いでしょうか?
呼吸による被ばく量(実効線量?)の計算をしたいと思っています。
Unknown (chem@u)
2011-05-02 18:41:27
摂食モデルの違い、大人か子どもか、実効線量か等価線量か、の当てはめ方ですね。

まず10日間での摂取量から考えてみます。

濃度一定モデル(モデルA)
50,000×200/1000×10=100,000Bq (10万Bq)

濃度自然減衰モデル(τ=0.0866:崩壊定数)(モデルB)
50,000×200/1000×(1-exp(-τ×10))/τ=66,902Bq≒66,900Bq

これだけ摂取した時の実効線量・大人
モデルA
100,000×0.022(μSv/Bq)=2200μSv=2.2mSv
モデルB
66900×0.022(μSv/Bq)=1471μSv=1.5mSv

これだけ摂取した時の等価線量・乳児(乳児に野菜を食すのは難しいと思うがあえて)
モデルA
100,000×2.8(μSv/Bq)=280,000μSv=280mSv
モデルB
66900×2.8(μSv/Bq)=187,314μSv=190mSv

モデルA-大人-実効線量が本文中の「安全デマ」として引用した例で、「大人ですらこの数値、子どもだったら?」で止めてあえて計算してませんでしたが、このモデルを乳児に適用すると280mSvにまで達するということですね。

モデルB-子ども-等価線量がtenodさんの計算した結果と誤差範囲で一致することをご確認ください。

崩壊定数0.0866は半減期を8日として出してますから、より正確な半減期から崩壊定数を算出すると、多少のずれは出ます。

私がかっこ付きとはいえあえて「安全デマ」と表現しているのは、大人の実効線量で計算する値が、いかに子どもの危険性からかけ離れているか、そして「暫定基準値を超えても大丈夫」という安易な考え方の危険性がどれだけ大きいか、に注目すべきと考えているからです。

> 1μSv/hにつき、I-131は7.4E5(Bq/m2)、Cs-137は4.7E5(Bq/m2)

降下したものが発する線量と理解してください。

浮遊物がある場合は、これにプラスして浮遊物由来の線量がプラスされます。

ただし、実際には、新たな浮遊物の放出はかなり収まっていますので、現時点での空間線量は降下したものが発する線量である、と判断しても妥当です。

浮遊物からの線量について (pikiy)
2011-05-04 15:53:45
浮遊物からの線量を計算する方法を理解したいと思い、いろいろ調べているのですが、よくわからず。計算方法や考え方が記載されている資料を紹介頂ければありがたいです。
我流で中心点からの距離毎での放射線強度を積分すると、ダストの総量に比例する結果になってしまい、行き詰ってしまいました。
Unknown (chem@u)
2011-05-04 16:07:10
me too.

考え方としては、
1.任意の位置にある放射性物質からのガンマ線について、距離の二乗に反比例する減衰と、空気の吸収(散乱)による減衰を考慮して、線量を計算
2.放射性物質の空間分布に対応してガンマ線量を積算、と言うことになると思います。

放射性物質の空間分布が一様で、地面が平な場合、といった仮定を入れると、BqとSv/hの間は単純な比例関係になりますから、地表の放射性物質からの線量のように、簡単な関係がありそうなんですけれども。

浮遊物からの線量について 2 (pikiy)
2011-05-05 11:08:57
調べてみました。
以下のURLの資料の12頁。
http://www.nsc.go.jp/shinsashishin/pdf/1/si015.pdf
距離の二乗に反比例する項、空気による散乱・吸収による減衰項、再生係数、を乗じたものを積分するみたいです。
放射線物質の空間分布一様、再生係数=1、分布範囲>>線減衰係数、と仮定すると、BqとSvが比例した式になる。(係数はμen/μ、E、K1、K2)
1~3次項無視の妥当性、実際への適用方法の考察は必要。
Unknown (chem@u)
2011-05-05 11:15:13
ありがとうございます。

直感的には50Bq/m3くらいで0.1μSv/hくらいかと予想しますけど、そのくらいに落ち着きそうですか?
浮遊物からの線量について3 (pikiy)
2011-05-05 13:26:15
2桁ぐらい小さくなってしまいました。
1~3次項を考える必要があるのかな?
Unknown (chem@u)
2011-05-05 15:03:42
私の直感が間違ってる可能性もありますから。

流石に忙しくなって、まじめに計算をしようと言う気に、今はなれません。
Unknown (MAKIRIN)
2011-05-05 17:28:20
>pikiyさん
貼られたpdfが途中までしか見れないので、どんな式とパラメーターで計算されたのかわからないのですが(空気カーマから求める式でしょうか?)、自分も計算したところ2桁ぐらい小さくなりました。

ちなみに自分が使ったパラメータは、
1Bqの点状放射性物質から1m離れた位置での1時間あたりの実効線量を0.055pSv/h、減衰定数μを0.01(1/m)、再生係数は1、という感じで、放射性物質の濃度が50Bq/m3で一様だとすると、地上では1.7nSvぐらいでした。

>1~3次項を考える必要があるのかな?
これは再生係数のことでしょうか。これを考慮すると2倍ぐらいになるかもしれません。
Unknown (pikiy)
2011-05-05 18:27:15
>MAKIRINさん

すみません、リンク間違えていました。

http://www.nsc.go.jp/shinsashishin/pdf/1/si016.pdf#search='発電用軽水型原子炉施設周辺の線量目標値に関する指針'

数式は12~13頁、パラメータは19頁、解説は45、46頁に記載。

ガンマ線エネルギーEは0.637MeV(I-131)、濃度は50Bq/m3均一で全方向無限に存在を想定、再生係数は1(高次を無視)、K1、K2、μen、μは資料通りの値で計算、結果4.2E-3μSvでした。
数式の物理的意味が十分理解できていませんが、地上のダストだけの想定だと、半分の2.1E-3μSvになると考えています。
誤記訂正 (pikiy)
2011-05-05 18:54:18
Sv→Sv/h でした。
Unknown (MAKIRIN)
2011-05-05 19:22:55
>pikiyさん
一応見たことがある資料でした。ガンマ線エネルギーは0.637MeVだけではなく数種類あるので、発生確率の重みをつけると計算された値の6割ぐらいの値になるかもしれません。
自分は次の資料のtable 1の値を使いました。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jrsm/j-paper/j9-1-2.pdf
Unknown (pikiy)
2011-05-06 20:13:49
>MAKIRINさん

資料、ありがとうございます。放射線物理の初心者なので理解に手こずっていますが、がんばってみようと思っています。

他にも参考になる資料を紹介頂ければありがたいと思っています。昔に応用物理系の学部を卒業したので、ある程度の数式はOKです。わがまま言って申し訳ありませんが、よろしくお願いします。

追伸
線量の計算方法は理解できました、再生係数についても3次項まで織り込むと2.9倍ぐらいになりました。
Unknown (MAKIRIN)
2011-05-06 21:52:46
>pikiyさん
Sv→Sv/h、自分が先に誤記していたんですね。気がつかなくて、すみませんでした。自分も放射線物理については初心者で、今回の事故が起こってからいろいろ調べ始めた感じです。

放射性物質が放出された場合の総合的な評価法について、次のIAEAの資料にいろいろ数値がまとまっています。英語でちょっと長いのですが、SECTION E(81ページから122ページ)に線量換算係数の評価法と各放射性物質についてのデータがあります。

http://www-pub.iaea.org/mtcd/publications/pdf/te_1162_prn.pdf

外部被曝については、放射線源の形状で分類されています。(点状、直線形、皿型、空中での浮遊物)

他に、内部被曝(口径摂取、吸入摂取)、土壌汚染、ベータ線による皮膚汚染の線量換算係数の記述もあります。

ただ、外部被曝に関するこちらの式では減衰定数の代わりに強度が半分になる距離が使われてたりします。

また、これらの値は絶対的なものではなく評価法によって値は変わるようです。前の資料だと点状のヨウ素131から放出されるガンマ線の線量換算係数は5.468E-14Svm2/Bqhでしたが、この資料では3.9E-14Svm2/Bqhとなっています。

>再生係数についても3次項まで織り込むと2.9倍ぐらいになりました

1次の係数が1で他の係数はそれと比べて小さいということは覚えていたので2倍ぐらいかなと思ったんですが、3倍近くなったんですね。ありがとうございます。
Unknown (pikiy)
2011-05-06 23:18:24
>MAKIRINさん

資料ありがとございます。ざっと眺めただけですが、原子力の分野ってほんとうに工学の集大成だと感じます。興味が続いている間は、基礎から勉強しようと思っています。
相談にのって頂き、ありがとうございました。

Unknown (chem@u)
2011-05-07 16:05:52
ブログ主はついていけてませんが、応援しますのでがんばってください。

ブログのコメント欄でよければ、意見交換の場所として自由に使ってください。
Unknown (tenod)
2011-05-11 14:57:00
日本分析センターの資料と環境放射線モニタリング指針(H20版)を見ながら、吸入による実効線量を計算しております。

日本分析センターの測定データをみると、空間線量は0.1μSvぐらいあっても、降下物の測定データにはCsやIは検出されない日が多くなりました。

これは、1μSv/hにつき、I-131は7.4E5(Bq/m2)、Cs-137は4.7E5(Bq/m2)とうのと相容れないと思うのですが、どのように理解できるのでしょうか?

上記の測定値では原発由来の核種が見られなくなったという理解で良いのでしょうか?

「安全デマ」という表現には、腹立たしさを感じます。誤情報を発信した責任は感じますが、「悪意」を持っていたわけではないです。
Unknown (chem@u)
2011-05-11 20:38:26
降下物のデータは日毎の分ですから、それを全部足し合わせたのが現時点での地表蓄積量になって、その量が地表からの空間線量の目安ということになります。

ヨウ素131の場合、降下以降の自然減衰があるので現在の蓄積量の見積りは少々計算が必要になりますけど。

デマと言う表現は確かに、余りよろしくないニュアンスが含まれますね。

安井さんの間違い指摘が一つのターニングポイントと思いますので、以降は表現を変えるようにします。

Unknown (pikiy)
2011-05-11 21:33:56
福島県での小学校校庭での、土の上下入れ替えの結果が出てきました。
結論は、土壌20cmの厚みで90%程度の遮蔽効果。

http://www.mext.go.jp/a_menu/saigaijohou/syousai/__icsFiles/afieldfile/2011/05/11/1305946_1.pdf

机上計算してみました。

空気線減衰係数 μ=1.05E-4(/cm)、空気密度 ρ=1.29E-3(g/cm3)より、
質量減衰係数 μm=μ/ρ=8.13E-2(cm2/g)
核種をCs-137とするとγ線エネルギーは0.5eV程度より、質量減衰係数は物質種類にほとんど依存しない。
よって、土の密度をρ1=1.5g/cm3とすると、線減衰係数は、
μ1=ρ1・μm=1.22E-1(/cm2) となる。

深さ10cm分の土の透過率は、exp(-μ1×10)=0.30=30%
よって、深さ毎では
10cm → 30%
20cm → 9%
30cm → 2.7%
40cm → 0.8%
50cm → 0.2%
60cm → 0.1%

大体合っていました。
Unknown (chem@u)
2011-05-12 21:34:01
きれいな結果ですね。

実質上深さ50cm以上の埋葬で、影響を無視できるレベルになりそうですね。

後はどれだけCsが日本の地形・天候で地中で動くのかが懸念でしょうか。

それと、風でよその場所から放射性物質を含む土埃が飛んできて、なんてことがどれほど影響を与えるかですかね。
Unknown (pikiy)
2011-05-12 23:16:35
先ほどのURLでのレポートに丁寧に懸案事項が書かれていました、「校庭や園庭の周囲には樹木や草木が植生しており、大きな樹木の根元などには水が集まることにより線量率が高くなる可能性がある。これについては、当該箇所の同定が容易かつ限定的であると考えられることから、局部的な剥離や覆土を行うことなど、それぞれの箇所の特性に応じた対処法を考慮すべきである。」確かテレビでも、滑り台の下あたりの線量だけが高い、との報道もありましたし。

それと先ほどの計算の補足ですが、算出した透過率はあくまで汚染されていない土で覆う前提、実際には汚染度の低い下層の土50cm厚で覆えば、その土の汚染レベル(幼稚園での評価の場合は0.20μSv/h)までは低減できる、とご理解ください。
Unknown (chem@u)
2011-05-13 08:13:03
日本分析センターの結果でも場所によるばらつきは大きそうですし、重機で一気に作業した後は、重機の入れない場所の数平米程度でのホットスポットの丹念な確認は必要でしょうね。

残留のチェックの後は、人力での作業か立ち入り禁止にするか、植物への移行の程度は、とうとう色々懸念はありますが、風による周囲からの再汚染とか内部被曝を考えていないというのは、放射線防護対策としては木を見て森を見ずな印象も。
Unknown (pikiy)
2011-06-04 11:19:31
放射性物質が空間に均一分布した場合の線量計算について、chem@uさん、MAKIRINさんと議論させてもらいましたが、別の解法を思いつきました。

仮定
a)全空間でのγ線放出量は均一
b)全空間でのγ線吸収量は均一
c) aとbでの空間の体積は等しい
d)γ線放出量と吸収量の収支は等しい

以上の仮定より、単位体積当たりで放出されるγ線エネルギー量と吸収されるエネルギーは等しい、との結論。

よって、50Bq/m3の場合の吸収(実効)線量率は、

50Bq/m3×0.365MeV×1.602E-19J/eV×3600s/h÷1.293kg/m3
= 8.1E-9Gy/h ≒ 8.1E-9Sv/h

 0.365MeV:I-131のγ線エネルギー
 1.293kg/m3:空気の比重

空間の半分が地面とすると、地上0mでは 4.0E-9Sv/h となる。


自分的には、すっきりしました。

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。