ケミストの日常

大学化学系教員の日々考えること。
HNはchem@uと省略してます。

東村山 備忘録

2007-09-23 13:43:34 | 名誉と言論
とりあえず以前の記事。
セクハラなのか?

市議選で当選した議員の前職(風俗系の宣伝)をめぐる辞職請願を巡る騒動がありました。

その後、色々とあったみたいですが、何やら凄い展開になっているようで。

流れとしては
東村山市の市議の前職を巡り辞職請願がなされるとともに、反創価学会として有名?な矢野ほづみ議員と朝木直子議員が批判言論を展開。
発行人 矢野ほづみ/編集長 朝木直子 の東村山市民新聞に批判が順次掲載。
これを差別とする声がネットで上がり大きなうねりに。
職業差別を許しません!

辞職問題を煽っていた矢野市議が、ネットで批判を受けたことについて、批判者に対して逐一反論。
後はネットでお馴染みの論争になっていくわけですが、ここでレッテル貼りやら色々とやらかしたことに対して、今度は煽っていた矢野・朝木両市議に対して辞職を求める請願が出される。
すると、矢野・朝木両市議が請願を出したことについて名誉毀損で市民と紹介議員を訴え。
さらに、提訴したことを理由に、この請願が市議会で議論されないよう議会に通知。

何か、やってることがかなり滅茶苦茶ですね。



とりあえずリンク。

好きになろうよ!東村山(薄井政美東村山市議)のブログより9.20東村山市議会の良識が問われた日

なんとかしようよ!東村山(佐藤まさたか市議)のブログより請願者の方とともに訴えられました。とか生きている実感とか。

矢野・朝木市議(東村山市)に対する辞職勧告請願の経緯というブログが全体の流れが見えやすいかもしれません。

ちょっとアングラな臭いのするところでは、おはら汁(緊急避難場所)の東村山市議:朝木直子・矢野穂積問題 ( 31 ) のまとめ記事も必見か。



さて、名誉毀損は、環境ホルモン訴訟にクビを突っ込んだこともあり、門前の小僧的な理解はできますので、簡単におさらい。

名誉毀損裁判の場合、民事であっても刑事であっても、名誉毀損を構成しうるか否かは、刑法の条文に拠ります。

刑法
(名誉毀損)
第二百三十条  公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
 2  死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。

(公共の利害に関する場合の特例)
第二百三十条の二  前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
 2  前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。
 3  前条第一項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。


通常の名誉毀損裁判では、名誉毀損を構成するか否かを判断する上で二段階の検証をします。
一段階目が、記載される内容によって原告の名誉が毀損されるか否か。
ここで毀損されると判断された場合次に進んで
二段階目が、記載された内容について、公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合、事実か事実と信じるに足るものであるか否か。

名誉毀損が構成される場合、原告の訴えが認められ、上の二段階のいずれかで否とされる場合棄却されます。
一般の名誉毀損訴訟では、「事実か事実と信じるに足るものであるか否か」の証明は被告側に義務付けられますので、被告の立証責任が出てくる、通常の民事訴訟とは違った側面があるということに留意する必要があります。

今回のケースでは、矢野・朝木両氏は東村山市議という立場ですから、第二百三十条の二、3に該当し「公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合」の検証をすっ飛ばして、事実関係の真否が争点になる、真実であれば違法性は無く、名誉毀損にあたらないということに。
いずれにしても、真実であることの立証する責任が被告側にあるのは変りませんから、名誉毀損訴訟の被告になることは相当の負担になるはずですが。

今回の場合、リンク先を辿って見える請願書の文面は、

矢野・朝木両市議は、当該ウェブサイトにおいて、東村山市の市民であるか否かを問わず、一般市民に対し、次のような脅迫的・名誉毀損的発言ならびに誹謗中傷を繰り返している。

~以下略~


と、具体的に何を行ったのかを列記しており、これをそのまま読めば、矢野・朝木両議院の名誉は毀損されることになるでしょう。
そもそも議員辞職の請願中の文面には、辞職をするに足るだけの請願事由が書いてあるわけで、それが当事者の名誉を毀損するのはある意味あたりまえ。

で、真実か否かがあらそわれることになり、特に次のような脅迫的・名誉毀損的発言ならびに誹謗中傷を繰り返していると具体的に事実を列記している部分に関して、真実か否かが争われることになるでしょう。
ただし、この点に関しては、請願者側もログなり当時のWEBページを印刷その他の手段で保存しているでしょうから、事実関係の確認はそれ程困難ではないと思えます。

電子データの信頼性を論点にして、捏造してるの何のという論点が出てくるかも?
また書かれた内容が誹謗中傷ではなく、誹謗中傷と書くのが事実と反するとかいう議論展開もありか?
いろいろなパターンは予想できても、「議会の外での出来事であり、辞職を請願するほどのことか?」といった論点はあるにしろ、真実である若しくは真実とするに相当の理由がある、という判断で名誉毀損を構成する事は無さそうです。

もっとも、個人的には、この一連のやり取り、ネット論議の応酬の中での場面の切抜きであり、論点の矛盾とか、そういった部分を剥ぎ取って見てみれば、双方が相手の権利侵害をしてる、どっちもどっち、という見方が妥当かと思いますが。
後は、公人に対してなされることと、公人が行うことの重さですね。



もう一つの論点は、請願に対する名誉毀損提訴という行為が一般的にアリかどうか?
憲法は国民の請願する権利を認めていますから。

憲法
第十六条  何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。


当事者の公務員に名誉毀損で民事で訴えられるということが、「いかなる差別待遇も受けない」に該当するか、この点はかなり微妙です。
この「差別待遇」は行政による差別待遇を意味しているでしょうから、当事者個人の民事の訴訟権利を制限するとまで考えていいのかどうかわかりません。
ただし、こういった対応がなされることが前提となると、なかなか請願をしようとは思えなくなりますよね。

光市の母子殺害事件の弁護士の懲戒請求に関係して、テレビで懲戒請求を呼びかけたとして橋下弁護士が当事者弁護士から名誉毀損訴訟を受けています
追記:名誉毀損ではなくて業務妨害による損害賠償請求ですね。懲戒請求の呼びかけ→大量の懲戒請求があった→業務に支障が出た→呼びかけた橋下弁護士に損害賠償請求。
この件、弁護士サイドからは、懲戒請求権の濫用を勧める行為といった視点で語られることが多いのだけど、権利行使に対する抑止につながるという弊害を考えても、正当な権利行使の呼びかけである、と見る方が個人的にはすっきりします。

そうとうに特殊なケースを除き、弁護士の懲戒請求やら公務員の懲戒に関する請願に対しては、名誉毀損訴訟を起こす事は否定していいのではないか、と思えます。



また、矢野・朝木両市議に対して特に批判されるべきことは、民事で訴えたことを理由に、また、議会に対する名誉毀損訴訟をちらつかせながらの、請願の審議拒否をする姿勢(リンク先記事に拠れば)でしょう。
こんなことがまかり通っていいのかどうか? 今後の東村山市議会の動向に注目です。



私もいくつかの名誉毀損訴訟を注目してみてきていますが、この東村山のケースは、ネットでの実名匿名入り混じった言論と実社会での請願という言論が平行に走るという意味で、ネットの中の文章のみが俎板に上がる通常のネットにおける名誉毀損訴訟とは違う側面を持っています。
それでも、ネット社会で情報の広がりのコントロールが効かない中では、何でもかんでも民事訴訟で名誉毀損裁判なんてことやってる人については、やはりそれなりの評判が立つのは避けられないのではないかと。


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