陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

JALの経営再建を前原国交相はどのように取り扱うのか

2009-09-25 00:29:59 | 国内政治:内閣
 世界経済縮小が顕在化して、以前から経営が問題になっていたJALは資金繰りに行き詰まった。デルタ航空(DA)への出資要請やアメリカン航空(AA)からの資金供与がこの夏に話題となる。そして、9月24日、遂に西松遥日航社長は前原誠司国交相へ公金出資の要請を行うに至った。オバマ政権が、GM問題に取り組んだ構図とかなり似ている。

 JALの経営における問題点は、

1.8600億円の長期有利子負債(有利子負債合計は1兆3800億円)
2.組合が7つもあり、労使協調が不可能
3.過剰な企業年金などの社内優遇制度

が挙げられるが、特にパイロットの給与が高い(年俸3000万?)のは有名だ。

 JALは、二進(にっち)も三進(さっち)も行かなくなって、海外路線の大幅廃止や国内路線縮小、それらに伴う6800人のリストラなどで苦境を乗り切る構えだが、この所の赤字続きで運転資金が枯渇している。

 そこで、世界最大の航空会社、DAへ資金参加を呼びかけたら、AAがJALと同じフライトプログラム「ワン・ワールド」参加会社として英国航空(BA)と共に資金供与をすると言い出した。これは、東アジア最大の航空会社であるJALの路線を確保する競争である。それは、10月半ばに決着がつくらしい。

 国交省としては、色々な再建策を考えているようだが、旧国鉄民営化で実施したように借金の無い新会社を作り、債務を全て旧会社(清算事業団)に預けて分離する方法がある。しかし、それには様々な問題が指摘されている。産経新聞によると、


日航の新旧分離案、再建の推進力は不透明
2009/09/22 21:14

 日本航空の経営再建をめぐり、優良資産を引き継ぐ新会社と、債務などを処理する旧会社に分離する「新旧分離案」が22日、浮上した。新旧分離に踏み切れば、政府支援によって、資金面では安定する可能性が出てくるものの、イメージ悪化などで顧客離れが進み、再建が遅れることも懸念される。現在進んでいる外国航空会社との提携交渉にも影響しかねず、新旧分離が再建の推進力になるかどうかは不透明だ。

■しがらみ解消

 企業支援の枠組みには、新旧分離による新たな政府支援に限らず、改正産業活力再生特別措置法に基づく危機対応融資もある。ただ、「融資の前提になる3年間の期限では、日航の経営改善は不可能だ」(大手銀幹部)と、金融機関の見方は極めて厳しい。

 日航は、再建の柱である人員削減や、OBを含めた企業年金の大幅削減で、労働組合などとの交渉が難航してきた。金融機関などが、経営改善計画の実現性を疑問視してきた理由もここにある。これに対し、「新旧分離で不良資産や労組との関係といった過去のしがらみを切り離し、構造改革された新会社はかなりの優良企業になる」(関係者)との期待は大きい。

 ただ、再建にあたって新会社に外部から出資をあおぐことになれば、「国内のファンドを隠れみのに、ハゲタカといわれるような外国資本が外資規制を超えて入り込む」(同)ことも警戒され、新たなしがらみにもなりかねない。

 ■提携交渉にも

 日航は現在、10月中旬までの決定を目指し、米デルタ航空や、アメリカン航空などとの資本提携交渉を進めている。

 外国航空会社との提携は、国交省が主導してきたとの批判もあったが、今回の新旧分離案をはじめ、今後の再建が政治、金融機関主導に切り替わることで、提携そのものや、提携内容、スケジュールの流動化は避けられない。

 提携交渉は、資金面に限った支援と違い、前向きな経営戦略ともとらえられていただけに、新旧分離で、「日航のブランドイメージが悪化し、再建はおぼつかなくなる」(国交省幹部)との見方もある。デルタ、アメリカン航空などが、日航との提携に及び腰になることも予想され、見込んだ本業の収益改善が宙に浮いてしまう。

 一方、「赤字路線を不良資産と位置づけて切るのは必要だが、国際的なネットワークは維持しなければならない」(航空アナリスト)との指摘もある。

 深刻な経営不振に陥っていたパンアメリカン航空は昭和60年、日本路線を含むアジア太平洋地域の路線をライバルの米ユナイテッド航空に売却し、再建を図った。しかし、短期的な視野で「ドル箱」路線を手放したことが収益を悪化させ、世界中に路線網を広げた名門航空会社は、そのわずか6年後に姿を消した。

 足元の資金状況ばかりに気を取られ、新会社が成長戦略を描けなければ、日航の新旧分離による再建も、水泡に帰しかねない。

■新旧分離方式とは 債務超過などで経営が悪化した企業で、倒産すると多くの関係者に2次的損害をもたらす場合、資産を2分割し、旧会社に債務など不良資産を引き継ぐ一方、新会社を設立して、優良事業とその人員など健全資産を継承させる経営再建手法。
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/business/other/304682/


 前原国交相も、「八ツ場ダム」問題を抱えながらのJAL救済案件で、中々大変と思うが、長期有利子負債をどのように処置して行くか、彼の手腕を拝見しよう。

 少し脱線するが、JALのロゴ・マークのことである。JALが完全民営化される前は、<鶴丸マーク>を用いていた。これは、丹頂鶴を意味して、中々人気があった。

 それが完全民営化後は、現在のロゴマークになった。このマークは、JALの文字を刀で断ち切るようなイメージを与え、どうも縁起が良くない。垂直尾翼の半欠け赤色も意味が分からない。新会社を作るなら、是非ロゴ・マークを気品のあるものに換えたら良い。

 それから、客室乗務員(CA)のユニフォームが黒一色で、そのデザインも感心出来ぬ。スカーフで襟元にアクセントを付けているが、まるで喪服のようなイメージだ。これでは、CA達も士気が上がらないだろう。彼女達の意見も取り入れて、ユニフォームのカラーとデザインを一新するように求めたい。
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3 コメント

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すばらしい! (ぶたさん)
2009-09-25 13:35:36
はじめてこちらのブログを拝見させていただきました。
最近経済に関心を抱き聞きかじりで勉強しています。それで検索でこちらに飛んできたのですが、とてもわかりやすい説明で感動しました。
ここ最近はJALの取り巻く動向から目が離せずチェックしていたのですが、さあどうなるでしょうか。過去に日本を背負って世界の空を羽ばたいていた大きな企業、そうやすやすとはつぶれないとは思いますが。・・・まあ、野村(証券)が潰れたんだから、「まさか」は通用しませんね。
「潰したくない」が正解ですか、私にとっては。
JALは生き延びて欲しい (茶絽主)
2009-09-26 01:26:16
ぶたさん様

お褒めに預かり、恐縮です。
丁寧なコメントを有難うございました。
近々相当に厳しい再建策が政府から提示されるのでしょうが、JALの黒字海外路線は売らないで欲しいと願います。パンナムは、それで破綻してしまいましたから。
西松社長は、年俸1000万円、バス通勤で頑張っているようですが、同社社員も見習って貰いたい。同時に、経費削減に努めても、安全・確実・迅速の順で利用者のことを忘れないようにして欲しいですね。
歴史と伝統を生かしながら、JALが生き延びることを期待しています。
蛇足ですが、潰れたのは「野村」ではなく、「山一」ではありませんか?
また、コメントを宜しくお願いします。
すみません (ぶたさん)
2009-09-29 12:31:39
その通りです。「山一」です。
ありがとうございました

本当に、文章を読めば読むほど聡明さが伺えて、こんなすばらしいページを見つけられて嬉しい限りです!!
これからも読ませて下さい。
よろしくお願いいたします。

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