シャーロットの涙

☆映画と音楽、その他、芸術鑑賞記録と残しておきたい日々の雑記☆

ツォツィ

2007-05-25 16:56:58 | 映画「た」行の作品
人が人に目覚める時の綺麗な瞳に見入ってしまう。

アパルトヘイトが過去になったとしても清算はすぐにされるわけでもなく、差別や貧富の格差などまだ色濃く残っている。親のいない子供が路上生活を余儀なくされ、貧しい黒人たちは満足に教育も受けられなず大人になり、職にも就けず、又まともな家さえもない状況。そしてエイズの蔓延。
南アフリカが舞台の作品は、私には容易に理解することが出来ない今現在の姿を教えてくれる貴重な機会。南アフリカ・ヨハネスブルクのスラムがまるでずっと昔の日本の下町、長屋みたいにも見えてきたりして、危険とされる地域なのになんとなく不思議な温かさを感じさせたのだった。

音楽が熱い。こんなビートのきいたソウルフルな音楽、やはり生命力に満ちて野性味溢れるアフリカの大地を思い起こさせる。たくさんの野生動物が生息するアフリカというイメージが先行するせいか、ここに登場する少年達の姿は人というより動物的で、生きていく事がとりあえず大事みたいな感じを受け取る。
今日は何する?・・・自分から生み出すことよりも人のものを奪い取り生きていく様は動物的で、命の危険があればたとえ相手を倒しても自分を守るという本能のみで日常を過ごす感じ。そういう彼のうちに眠る人らしい感情を目覚めさせていくきっかけとなったのが、可愛らしい赤子だったいう点が一人の母である私には嬉しい。

赤ん坊の扱いも最初は物みたいだった彼が変わっていく様子は、ちょっと微笑ましくもありうれしくもあり。自分の負ってきた辛い過去と向き合い、そこから自分が忘れていた良心みたいな何かを思い起こさせていく、心の旅のようにも見えた。ツォツィ自身が純粋無垢な命に魅せられていく過程で、自分のずれてしまった行いに気が付き、ラストでは自分の生きる力を信じていくような希望に繋がっているのが感動的。

ミリアムという女性との出会いも意義深く。母との思い出を思い出したのかな。赤ちゃんに語りかけるあの仕草、授乳の時に体を優しく包み込む温かさ、なんともいえないミルク臭い赤ちゃんの匂いをかいでいると、母子の言い知れぬ絆を誰でも感じるのでしょうね。
たった一人で子を育てるにはそれだけの力がいるものだけど、夫がいない悲壮感など全くなく、部屋も明るく綺麗に着飾る様子がとても嬉しいのだ。生活にゆとりがあるからこそオシャレして部屋を綺麗に飾っている無機質な感じのお母さんなら、髪振り乱してでも子供第一で子育てしてくれーって言いたくなっちゃうけど、ミリアムのように生活が苦しくてもそれを見せないように知恵をしぼり工夫をしつつ明るく生きてる人にはエールを送りたくなってしまう。

人らしい感情に目覚めていく彼の目は段々と澄んでいく。赤ん坊の目と同じように。あの赤ちゃん可愛いわよね。特に手の仕草がたまらなく愛しい。子供を産めない男の人に赤ちゃんの可愛らしさを、理屈でなく感覚で理解せよと言ってもなかなか伝わるものではないのかもしれないけど、男には守る本能が元々あるのだから、その瞳が濁らないように人を愛するように自分も大切にして欲しいと思った。

どんな場所からでも太陽は見上げれば輝いているもの。
どんな境遇に生まれてもそこに生きるのは人間なんだもん。人らしく前を向いていきたいものだよね。

Tsotsi
Original Soundtrack
Milan

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~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
製作年 : 2005年
製作国 : イギリス=南アフリカ
配給 : 日活

監督・脚本 : ギャヴィン・フッド
原作 : アソル・フガード
出演 : プレスリー・チュエニヤハエ 、 ZOLA 、 テリー・ペート
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
自分の本名と過去を封印し、幼い頃からたった1人、社会の底辺で生きてきたツォツィ。仲間とつるんで、富裕階級の人間から暴力で金を奪うのだ。ある日、高級住宅地を歩いていたツォツィは、黒人女性が運転するベンツを見かけ、女性を脅し車を盗んで逃走。しかし、後部席に赤ん坊がいることに気が付く。紙袋に赤ん坊を入れ、途方に暮れている時、女手ひとつで子供を育てているミリアムと出会う。ツォツィは、彼女に赤ん坊を預け…。
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12 コメント

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アカチャン (aq99)
2007-05-25 22:57:39
こういうアカチャンの映画見ると、もっかいアカチャン育てなくなるんですよね~。
あ~新生児、抱っこしたいわ~!!
えっ!こんなに軽いの?でも壊れそうで、落としたらあかんしで無駄な力が入って、なんか重いんですよね~。

ウィルのようにイッパツで決まるならいいんですがって、それよりお金がありません~。
aq99さん (シャーロット)
2007-05-26 10:54:43
赤ちゃん、可愛いかったぁ。外人の赤ちゃんほど可愛いく見えまする。

そうそう、新生児の抱っこは結構こわいですよね。クニャクニャだし。

赤ちゃんのいる生活って時間の流れがゆっくりだし、マッタリモードがいいっすよねん。

もう一人小作りしちゃえー。爆
土管に住んでいる子どもを保護してくれないの? (かえる)
2007-05-26 16:44:45
観るまでは、バイオレスものかと思っていたのですが、
実に温かな直球ヒューマンドラマでしたー。
シャーロットさんは、『ある子供』はご覧になってないんですっけ?
そちらも似たようなシチュエーションがあって、父性はどう芽生えるのかっていうところが興味深かったのでした。
ドラマはシンプル、ストレート過ぎたので、超お気に入り映画というほどでもなかったんだけど、流した涙の量でいったら、4月に観た中では上位3本に入ったような。
赤ちゃんポストに入れていいのは何ヶ月まで?
こちらにもー (隣の評論家)
2007-05-27 20:38:35
ご覧になったのですねぇ。
私、この作品は多分、上半期のベスト1に輝くと思います。ストレートに大切なことがスーッと流れ込んできて、素直に感動することができました。尺が短いというところも超好みでしたっ。
DVD化したら、即購入ですっ

私、gooの絵文字って大好きです。gooの方にコメントする際には加えずにはいられません。
土管が住家なんて。震えます。 (シャーロット)
2007-05-27 22:03:46
かえるさん
「ある子供」は、やはり見逃してまして。WOWWOWで今月やるみたいなんですが、我が家は見られないないんですよねえ~。レンタルしようかな。
父性が芽生えるというのは、なかなか難しいのでは?と思うのです。この作品の場合は、自分の子ではないですし。でもどんな時でも家族や赤ん坊を「守る」っていう父親の本能的な部分が目覚めた感じに私は受け取った感じです。
結構ストレートでしたね。そうですか、涙の量が多かったのですねー。私は…イマイチ少なかったかもです。でもじ~んときた映画でしたよ。
赤ちゃんポスト、あれ、どうなの??3~4歳の子が預けられたって言ってましたっけ?
私、3~4ヶ月の間違えでない?って思ったのですが。
3~4歳といえばもう記憶もしっかりとしてるはず。捨てられたとか思われても仕方がないし、心がおかしくならなければいいなと思いますが;
なんか世の中おかしいー。
隣の評論家さん (シャーロット)
2007-05-29 00:28:28
こんばんは。
とっても絶賛なさってますね~
変化球よりも直球は、はまるとズカッと重いけど気持ちよく感動できますよね。
評論家さんはいつも素直です~。私は天邪鬼…笑
たまには直球もいいものですね。
そういえば最近gooの絵文字が増えたんですよ。
リスト2というのが。
絵文字、バンバンつけてね。
あ、でも携帯だと見られないので私は記事には極力使わないようにしてます。でも言葉の変わりにするようなものでなければ差し支えはないと思いますから。
コメント、ありがとうです♪
こんにちは (jester)
2007-05-29 08:52:36
お邪魔します。
ごらんになったのですね♪

>ミリアムのように生活が苦しくてもそれを見せないように知恵をしぼり工夫をしつつ明るく生きてる人にはエール

赤ちゃんとの出会いもですが、その赤ちゃんを育てようとして知り合ったミリアムとの出会いも彼にとっては大きかったのではないかと思うのです。
彼女の生き方は素敵でしたよね♪

>人らしい感情に目覚めていく彼の目は段々と澄んでいく

彼の目の変化が嬉しかったです。

シャーロットさん☆ (mig)
2007-05-30 17:51:16
こんにちは~。

赤チャンは苦手なmigですがこれ、好きですよー☆

時折、おばちゃんに見えたけど、この主演のコ、良かった!!

ニコールの『毛皮のエロス』も良かったですよん♪
シャーロットさんの感想楽しみにしてまーす
jesterさん (シャーロット)
2007-05-30 21:25:54
こんばんは。
そうそう、たとえ一人でも貧しくても、明るく真っ当に子供を育てているミリアムとの出会いは、ツォツィにとってはとっても心をうたれたのだと思います。
母は、強し!笑
そうそう、目が変わっていく様がよくわかり、またそんなところが感動を誘ったりしますよね。
いい作品でした。
赤ちゃん (シャーロット)
2007-06-02 13:19:28
migさん
お返事が遅くなりましたっ。
えー、赤ちゃん苦手なの?
そっか、ちょっと意外かも。ふふふ
でもなんで外人さんの赤ちゃんとか子供ってかわいいんだろう~。
ありんこ攻撃は可哀そうだったけど。
それに日本人よりも外人って老けて見えますよね~。
私ドイツ人に20歳くらい?ってきかれた時には舞い上がって喜んじゃったけど…ちょっと複雑だったっけ。爆
そ・れ・と、ニコールの『毛皮のエロス』
うへへー、はまっちゃった。爆
感想は後ほど~~

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