司法書士のオシゴト

会社にかかわる登記を中心に素朴なギモンにお答えします♪ 

新株予約権に関する株主総会決議

2009年10月30日 | 株式・新株予約権
ある上場会社のハナシです。定時総会でストックオプションとして、新株予約権を発行しました。その会社は株式上場後初めての定時総会だったので、総会を開催するに当たっては、相当苦労されたことと思います。

後日伺ったところ、何日か会社に泊り込んだ社員の方もいらっしゃったそうです。上場会社の株主総会は本当に大変そうですね。まず招集通知。実はたまに誤植を発見することがありますが、訂正ができないので、必死にゲラをチェックされています。ワタシのところにも依頼が来ることがありますが、アレってとってもイヤです。いっぱい書いてあるし、字も小さいし、責任も重い。。。

その会社さんの場合は、総会がすっかり終わってから新株予約権発行登記のご依頼だったので、まずは、出来上がった招集通知と議事録を拝見しました。
会社法になる前に発行したことがあるので、割と気楽に考えられていたようです。会社で招集通知を預かって、事務所に戻りじっくり読むと。。。。
大変残念なことに、いくつか問題点が見つかってしまいました。

大ざっぱに、ご紹介しますね(笑)。
決議は役員向けのストックオプションと従業員向けのそれとに分けて行っていました。ですので、それぞれの決議は根拠が異なるモノです。

従業員向けの決議は、新株予約権の発行決議(有利発行。実際は枠の決議をしているので、予約権の個数などは取締役会決議に委譲しています。)です。一方、役員向けの決議は、役員に対する報酬等の額の決定です。そのため、まず、前者は特別決議、後者は普通決議になります。

決議の内容にも影響があります。
有利発行の決議の場合、取締役会に委譲できる事項は、①新株予約権の具体的な発行個数、②新株予約権の目的たる株式の数、③割当日に限られます。その他の内容は株主総会で具体的に決めなければなりません。
一方、役員報酬の決議はあくまでも報酬決議ですから、発行決議機関は取締役会なので、株主総会の決議内容をそれほど厳密に解釈しなくても良いと考えられます。

会社は、どちらかというと報酬決議的な発想だったようで、例えば行使条件を取締役会で詳細に定めることができる。。。というように理解されていました。
でも、株主総会で決議した内容はもう変えられませんから、やむを得ず、当初の予定とは少し違う行使条件や取得事由にしなければならなくなってしまいました。

ワタシも未だに新株予約権が報酬と位置づけられたこと。。。は、しっくり理解できていなくて困っています。

そして、コレに絡んでさらなる問題が出てきてしまいました。
つづきはまた来週!
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株主の戦い その2

2009年10月29日 | いろいろ
専門家じゃなくても、デッドロックっていう言葉は聞いたことはあると思います。この辺の話は合弁会社でよく出て来ますが、決議の成立要件は、普通決議であっても議決権総数の過半数の賛成なので、50%ってホント中途半端です。
結局、提出された議案は全て否決されてしまいますから、会社は何も決められません。

もともとA社は会社設立から大株主ではなかったらしく、あまり良い言い方ではありませんが、買収を進めておりました。でも、50%以上は1株たりとも買えなかったのだそうです。しかも、A社サイドの取締役は2人(取締役の総数は7名くらいだったと記憶しています。)、副社長ですが代表権はなし。

A社は甲社(A社が株主になっている会社)に業務委託をし、甲社は他社に業務委託をすると言う関係で、甲社から業務委託を受けている数社がA社以外の甲社の株主になっています。そして、株主Bの代表者が甲社の代表取締役社長、それ以外の株主(会社)からそれぞれ取締役を出しているという状況でした。

A社以外の株主が何故解散に反対なのか、というと、甲社が損を出しても、自分たちの出資額はそれほど多額ではないし、役員を兼務していれば役員報酬をしっかりもらうことができるから、別に問題なしと考えていたみたいです。

つまり、甲が損をして困るのは、ほぼA社だけ。

A社は取締役会のマジョリティーもないので、これも大きな問題でした。代表権もないですし。。。

。。。と言うわけで、色々検討してみました。

●A社が取締役会を招集することはできるか? ⇒ 定款で招集権者を代表取締役社長としているため、普通だと×
●取締役会の報酬決定を否決できるか? ⇒ 取締役の過半数を味方に付けないと×
●A社が株主総会を招集することができるか? ⇒ 取締役会設置会社なので裁判所が関与しないと×
●株主総会で役員を解任するのはどうか? ⇒ 決議が否決されるので×

まとめますと、取締役会で決議できる事項に関しては、全てA社の負け。株主総会で決議できる事項に関しては全て引き分け(どっちも負け)デス。会議を招集したとしても、負け試合なんだからムダ!なんです。

そこで、株主さんのうちA社の味方を増やせばいいじゃないか!!ということになりましたが、特別決議を可決できないと意味がないので、そこまでは厳しい。取締役会に関しても、過半数を味方にするのは無理。

最終的に色々事情があって裁判沙汰にはならなかったものの、A社が大損する形で甲社は解散したようです。債務超過もあったので、相当な出費だったと思います。

ワタシは、「仲が悪くなった時のことを考えておかないとこんなことになるんだなぁ。。。」と痛感した一件でした。
ただ、最初からあまりにも相手を疑ってかかるようだと、信頼関係にヒビが入りそうだし、なかなか難しいモンダイですね。
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株主の戦い その1

2009年10月28日 | いろいろ

司法書士は、町の法律家だ! というようなコトを言われています。 それって、どうなんでしょうか? ワタシが受験勉強をしていた昭和の時代は、「司法書士って何する人?あ~!免許の書き換えする人かぁ。。。」 (それは行政書士じゃ!)「あ~!図書館にいる人?」(それは司書よっ!!)みたいな感じで、知名度はボロボロのようでしたが。。。

今は、お付き合いする周りの方たちの年齢層が高くなったせいか、それとも本当に知名度が上がったのか、司法書士って何する人?とは訊かれなくなりました。まぁ、どちらかと言うと不動産の売買で会ったことあるな。。。ということが多いと思いますケド、いずれにしても嬉しいことです。

ワタシ個人は、不動産のオシゴトもずいぶんやっていましたが、ここ何年かは会社関係がほとんど。その代わり、登記が関係しない会社法のオシゴトが増えています。というわけで、たまには訴訟までいかずとも、ちょっとドロッとした諍いに関するご相談を受けることがあります。これ、何となく町の法律家っぽいでしょ?

で、今日は株主間のモメゴトについてです。

知り合いでも何でも良いですが、会社の株主になるときに考えることの大きなポイントは、持株比率です(もちろん、非上場の会社)。
まずは、3分の2以上を握ること(特別決議の承認ができます。)、次に過半数(普通決議の承認ができます。)をダレが握るのか、ということです。

これに、決議要件を加重、軽減して、定款を設計し、場合によっては株主間契約を結んだりするワケですが(例えば、役員を何人出せる。。。とか)、たまには50%ずつ仲良くシェアしましょう!ということもあります。

仲良くしている間は結局何でも良いのですが、モメだしたときは大変です。

ある会社では、株主構成がA:50%、B:34%、その他の株主7~8人でした(ダイタイこんな感じ)。
会社が傾きだしたので、株主Aは解散させたいと思ったのですが、B以下の株主はコレに反対。ですので、解散決議は当然否決されてしまいます。じゃあ、株式を買い取ってもらおうとすると、買い手がいないか、売値をずいぶん下げないと売れません。 他の株主から株を買う場合は、相当高額でないと買えないので、いずれにしても相当の損を覚悟することになります。

これが、いわゆる “デッドロック” ってやつです。
もう少し話はつづくので、また明日。

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種類株式を消滅させるには。。。

2009年10月27日 | 株式・新株予約権
昨日はちょっと脱線しました。先週の種類株式に絡んだハナシにもどりますね。

先日、司法書士会主催の種類株式のセミナーがありました。大変勉強になる講義だったのですが、その中で、講師の方が「種類株式は存続することを前提にしていないことが多く、そのため、EXITの方法を考えておく必要がある。」とおっしゃっていました。

ワタシ自身もまったくおっしゃるとおりと考えていますが、発行事例を見ると、種類株式発行会社でなくなる(厳密には、種類株式を自己株式とする OR 未発行の状態なので、種類株式発行会社でなくなるためには定款変更決議は必須デス。)方法を予め定めていない会社も結構あります。
そういう会社は、実際にはどうするかというと、普通に相対取引をして自己株式として会社が取得し、自己株式を消却したりしています。
なので、ワタシが出合ったケースでは骨肉の争いになったりしたことはないですが、会社と株主が合意できない場合は大変ですから、やっぱり強制的に種類株式をなくす方法を用意しておくべきでしょうね。

今回の種類株式に当てはめますと、基本は現在の社長1代限りの株式とし、他者には渡らないようにしたいとのご希望があります。
ただし、次期社長には場合によって譲渡できるようにするのです(←ココが譲渡制限の部分)。

そのため、まずは、取得条項を付けることにしています。取得の条件は「代表取締役でなくなったとき」です。つまり、取締役会の決議を経ることなく、自動的に会社が種類株式を取得することができます。
ただし、その先が問題です。

自己株式となった種類株式は、どうやって消滅させることができるでしょうか?
会社法施行前の「転換株式(施行直前は「転換予約権付株式」)」は、例えば種類株式が普通株式に転換されると、種類株式の内容が普通株式に変更する。。。というようなモノでした。
でも、会社法ではとてもキッチリとその辺の整理がされて、取得条項でも取得請求でも全部取得条項でも、一律に会社が取得することになったので、取締役会で自己株式の消却決議をしない限りは消滅させることが出来ないですよね!?

そうだとすると、仮に自己株式として取得した株式を悪用できないわけではありません。というのも、定款変更や募集株式の発行については種類株式に拒否権が付いているし、種類株式の内容としては前述の取得条項もありますが、自己株式になってしまっては何の効力もありません。ですから、通常の株主総会で特別決議が可決されれば、都合よく定款変更もできるし、第三者への譲渡もできるという結果になり、種類株式は非常にキケンなシロモノとなってしまうワケなのです。

結局は、堂々巡りが続き「円満解決はムリっ!」という結論を出しました。(何か裏ワザをご存知の方は教えてくださ~い!)クライアントさんにお話しすると、あっさり。「それは承知してました。でも、次世代の話になりますから、それはそれで次の人たちに考えてもらえば良い。。。ってことにしたんですよね。」だそうです。

なんだか中途半端でちょっぴり納得いかないんですが、これが限界なのでしょうか? 事業承継問題もナカナカ難しい。
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間違えられた登記

2009年10月26日 | いろいろ
おはようございますっ!!

すっかり忘れていましたが(あ~残念!)、このブログを開設してから半年が経過してました。4月22日からなので、先週で満6ヶ月を無事迎えたことになります。
ネタ切れネタ切れ。。。と思いながら書いていますが、とりあえず半年続いたのも皆様のおかげです。ありがとうございます m(__)m 
(と言いながら忘れていましたが。。。。 ^^; )

この半年を振り返ってみると、だんだん手抜きになってます。わざと。それは何故かと言うと、①ネタがないこと、②あまりに長いものは書くのも大変、③読むのも疲れる。。。からです。

で、あるとき、手抜きをするのが長続きのヒ・ケ・ツ。。。と思い、このスタイルになってきました。(お気づきかも知れませんが、1日の記事は、ダイタイ1000文字を目安にしています。)
おかげさまで、もうしばらく続けられそうな気がしますので、今後もどうぞよろしくお付き合いください。次の目標は年内継続!デス。
ご感想、ご希望などありましたら、コメントしてくださると嬉しいです。

と言う訳で、今日は軽い話題を。。。

何年か前のことです。確か役員変更か何かの登記をした上場会社がありました。登記が終わり、登記事項証明書をお送りし、2~3日経ったある日、ご担当者からのオデンワ。

「登記事項証明書を受け取りましたが、株式譲渡制限規定の設定登記がされてますっ!!!(-""-;)」
ワタシ「はぁ~??」

ぃや~、アセリマシタ。上場会社ですから、株式の譲渡を制限するなんてことになれば上場廃止です。でも、確かに本来の変更登記をしたのと同じ日に、株式譲渡制限設定の登記がされているんです。

登記所に電話したところ、平謝り状態ですぐに直してくれたのですが、何で間違えたのかは教えてくれません。(おそらくこんなの前代未聞でしょう!?)ワタシの想像では、そういう登記を申請していた別の会社と間違えて記入したのだと思います。それにしても、本当にその登記を申請した会社はどうなったんでしょうね?

登記が間違っていることは特別珍しくもないので、内容が正しいかどうかはキチンと確認してから登記事項証明書をお返しするのですが、登記申請していない部分までは確認していませんでした。

とにかく、ご担当者に気付いていただいたので大事には至りませんでしたが、正直なトコロ、そこまでのチェックは難しいな~と思った次第です。
紙登記簿の時代は用紙の末尾だけを見ればよかったのですが、今は何でも横入りしてくるのですから。。。
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