元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「デッドプール」

2016-06-29 06:21:30 | 映画の感想(た行)
 (原題:DEADPOOL)さっぱり面白くない。賑々しい画面とは裏腹に、こちらは眠気を催してきた。アメリカではR指定作品としては興収歴代1位のオープニングを飾ったらしいが、こんなものを観て喜んでいるようでは、彼の国の観客のレベルもそう高くはないようだ(苦笑)。

 元傭兵のウェイド・ウイルソンは、金をもらって悪い奴らをこらしめるという、ヒーロー気取りの生活を送っていた。“仕事先”で知り合った恋人で元娼婦のヴァネッサとの結婚も決まり、私生活は順調のはずだったが、ある日身体の不調を覚えた彼は、医者からガンで余命幾ばくもないことを告げられる。

 落ち込む彼に声をかけたのが、ガン治癒を標榜する謎の組織。藁をもすがる思いで治療を依頼したウェイドだが、怪しげな人体実験によりガン完治はもちろん高い身体能力と不死身の肉体を得たものの、醜い身体に変えられてしまう。彼は顔を隠すために赤いコスチュームを身にまとったヒーロー“デッドプール”となり、組織のボスであるエイジャックスの行方を追う。

 まず、主人公の造型が気に入らない。度を越したお喋りで、下ネタ満載のギャグを飛ばしまくる。果ては観客に対して話し掛けたりするのだが、困ったことに全然笑えない。作り手の“冗談言ったぞ、さあ笑え!”という不遜な態度ばかりが目に付いてしまう。そもそも、主人公がエイジャックスに対して復讐しようという理由が不明だ。重い病気を治してくれたのだから、感謝しても良いではないか(笑)。さらに、相手が不死身だということが分かっていながら“デッドプール”を通常兵器で駆逐しようとするシンジケートの皆さんの間抜けぶりにも脱力する。

 ネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッドとコロッサスというX-MENのメンバー(それも二線級キャラ)が何の前振りも無しに登場するあたりは、この手の映画にありがちの“一見さんお断り”の姿勢が表面化して愉快になれない。また不必要な残虐描写の大量採用は、観る側の気勢を大いに削いでくれる。

 監督は、視覚効果分野出身で今作が初長編作となるティム・ミラーなる人物だが、力量に乏しいと言わざるを得ない。展開が行き当たりばったりである上にヘタに時制を入れ替えているものだから、ゴチャゴチャとした印象しか受けないのだ。映像面でのアイデアに特筆するようなものは無く、予算が限られているせいか「アベンジャーズ」などと比べると貧相に見えてしまう。

 主演のライアン・レイノルズはチャラいが愛嬌に乏しく、途中で顔を見るのも鬱陶しくなってくる。モリーナ・バッカリンやエド・スクレイン、ブリアナ・ヒルデブランド、ジーナ・カラーノといった脇の面子もパッとしない。観る必要の無い映画だが、MARVELものはキャラクター関係が込み入っているので、今後の作品をチェックする上で概略だけでも押さえておかなくてはならないのは、何とも複雑な気分になる。

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