元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「沈黙 サイレンス」

2017-02-13 06:39:20 | 映画の感想(た行)

 (原題:SILENCE )かなりの力作で、長い上映時間も気にならない。劇中で提示されているモチーフはもちろん、時代背景など多岐に渡って知識を深めたくなるような訴求力も兼ね備えている。本当に観て良かったと思わせる映画だ。

 江戸時代の初め。キリスト教が禁止されていた日本で布教活動をしていた宣教師フェレイラが、厳しい弾圧に耐えかねて棄教したという報せがローマにもたらされた。フェレイラの弟子である若き宣教師のロドリゴとガルペは、事の真相を確かめるため日本へ向かう。寄港したマカオで出会ったキチジローという日本人を案内役に、2人は長崎へとたどり着くが、キリスト教徒に対する圧政は想像を絶するものだった。

 なぜ神は我々に過酷な試練を与えながら、沈黙したままなのか・・・・ロドリゴは苦悩する。やがてキチジローの裏切りに遭い、ロドリゴは捕えられ井上筑後守の取り調べを受ける。遠藤周作の小説「沈黙」の2度目の映画化で、監督マーティン・スコセッシは原作を読んで以来、28年をかけて映画化にこぎつけた念願の企画だという。

 まず感心したのが、ハリウッド名物“えせ日本”がほとんど出てこないこと。主なロケ地は日本ではなく台湾だが、見事に日本を舞台にしたドラマに仕上がっている。さらに、西欧と日本の宗教観の違いを、一方に肩入れすることなく冷静に描いているのもこの映画の美点と言えよう。

 本来、八百万の神々が存在する日本には、キリスト教のような一神教は馴染まない。たとえ熱心な信徒であっても、その信仰の理由はキリスト教の教義に一致していないことが示される。その背景には、当時の下層階級が置かれた厳しい境遇がある。このような状況下で、ロドリゴ達が自らの信仰を全うするには、一度キリスト教に背を向けなければならないという、圧倒的なディレンマが大きな説得力を持って描かれているのは驚くしかない。聖職者を志し、聖的な事物と表裏一体となったような暴力を描き続けていたスコセッシの面目躍如といったところだ。

 登場人物の中で最もクローズアップされているのはキチジローで、彼はロドリゴ達を裏切るものの、実は心の中に彼なりの信仰を抱き続ける。この両極的なキャラクターこそが宗教の持つ一面を表現しているということなのだろう。

 スコセッシの演出は静かだが力強い。宣教師を演じるアンドリュー・ガーフィールドとアダム・ドライバーは好演で、フェレイラ役のリーアム・ニーソンも光るのだが、日本人キャストが大健闘している。キチジローに扮する窪塚洋介にとって、本作が大きなキャリアになりそうだ。通辞役の浅野忠信、井上筑後守を演じるイッセー尾形の存在感。体重を大きく落として挑んだ塚本晋也の捨て身の演技。加瀬亮や笈田ヨシ、小松菜奈など他の面子もいい仕事をしている。キム・アレン&キャスリン・クルーゲの音楽も好調。幅広く奨めたい作品だ。
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