元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ミョンジャ・明子・ソーニャ」

2016-12-10 06:20:00 | 映画の感想(ま行)
 (英題:Myong-Ja Akiko Sonia)92年韓国作品。日本では封切公開されておらず、私は第2回のアジアフォーカス福岡映画祭で観ている。第二次大戦中、反日運動で日本に渡った夫を追うミョンジャは、北海道からサハリンへと渡るが、再会した夫は麻薬中毒により廃人同様であった。日本人相手のカフェに売られ、明子と名前を変えた彼女は、そこで民族解放の闘士の幼なじみ(後のセルゲイ・キム)や山本と出会い、やがて山本と結ばれるが、彼は憲兵に殺されてしまう。

 戦後ソ連の占領下となり、情報部に頼み憲兵への恨みを晴らそうとする彼女は、さらにソーニャと名を変え、同胞の朝鮮人からの誤解の非難を受けながら、祖国への帰国運動を繰り広げるが、逮捕されユジノサハリンクスを追放される。帰国への道を閉ざされたまま年月は流れ、ペレストロイカが進むサハリンで、セルゲイとミョンジャは45年ぶりの再会を果たすが、北朝鮮国籍に変えた彼女に帰国は許されなかった・・・・。



 これは韓国映画によくある、日本の歴史的責任をヒステリックに告発しただけの映画では決してない。描かれるのは国家・民族に押し潰されていく普通の市井の人々の悲劇だ。

 それを端的にあらわしているのが、日本人女性を主要なキャラクターとして登場させていることだ。彼女は夕張の貧しい農村の出身で、幼い頃から借金のカタにたたき売られ、各地を転々として辛酸をなめる。主人公たちと知り合ってようやく静かな生活を得るが、憲兵と反日派との抗争に巻き込まれて重傷を負う。戦後サハリンで現地人と結婚するが、戸籍がないため一生帰国できない。

 戦争は朝鮮人だけでなく、同胞の日本人をもこんなに苦しめ、今でも悲劇は続いていることを描き出す。近視眼的な告発ドラマではなく、普遍性を持たせた作品に仕上がっているというわけだ。

 それでいながら、映画はスパイ、アクション、テロ、ラブストーリーが満載の娯楽大作であり、誰が観ても面白い。「旅人は休まない」(87年)等で知られるイ・チャンホ監督の演出パワーは凄いものがあり、上映時間の長さを感じさせない。観客を最後まで引きずり回す。そして主演女優キム・ジミ(韓国の大女優らしい。製作も担当)の好演も印象に残る。
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