元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「彼方へ」

2016-11-20 06:20:01 | 映画の感想(か行)
 (原題:SCREAM OF STONE )91年ドイツ=フランス=カナダ合作。山岳映画としてはかなりのクォリティを保持している。大自然に挑む男達の葛藤と反目、その果てにある皮肉な結末と、ストーリーラインもかなり練られている。ヴェルナー・ヘルツォーク監督としても会心の出来ではないかと思う。

 ロック・クライミング世界選手権で優勝したマーチンは、その場で進行役であるジャーナリストのアイヴァンに、同席していた世界のトップの登山家ロッチャと共に南米パタゴニアにある前人未到のセロトーレ山に挑戦することを告げる。後日彼らは現地近くでキャンプを張り、登頂の準備をするが、連日の悪天候のためアタックを見合わせていた。しびれを切らしたマーチンは、周囲に内緒でロッチャのパートナーであるハンスを連れて山頂へと向かうが、雪崩に遭って失敗。しかもハンスは犠牲になる。



 だが、帰国したマーチンは登頂に成功したと主張し、マスコミで取り上げられて一躍時の人となる。僚友を失ったロッチャはパタゴニアに留まっていたが、マーチンの行動に疑問を抱いた彼は、改めてセロトーレ山への登頂を賭けて勝負を挑む。

 まず、このパタゴニアの鋭峰の造型に圧倒される。それほど高くないのだが、ほとんどが直角にそびえる岩壁だ。常に天候は不安定な上に突風が吹き、登山家を寄せつけようとしない。そしてそこで展開するドラマは、主人公2人のプライドがぶつかり合い、見応えたっぷりだ。

 ついに山頂に達した者が目撃したものは、単なる征服欲など完全に超越した、狂気にも似た人間の所業である。明らかにそれはヘルツォークの代表作である「アギーレ 神の怒り」(72年)の主人公に通じるものがあるが、本作でそれを演出するのは物語の中心人物ではなく、傍系のキャラクターであるのが面白い。しょせん、大自然は小賢しい世俗的な欲望によって“征服”できるものではなく、常軌を逸したメンタリティによって“同化”するしかないという、作者のニヒリスティックなスタンスが見て取れよう。

 マーチン役のシュテファン・グロヴァッツは実際のクライマーでもあり、その存在感は際立っている。ロッチャを演じるヴィットリオ・メッツォジョルノ、アイヴァンに扮するドナルド・サザーランド、ヒロイン役のマチルダ・メイ、そして謎の男を演じるブラッド・ドゥーリフと、役者はかなり揃っている。ハーバート・ラディシュニンによる素晴らしい登山撮影。観る価値はある。
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