元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「高校デビュー」

2011-04-14 06:33:18 | 映画の感想(か行)

 他愛のない映画なのだが、楽しい時間を過ごすことが出来た。河原和音の同名コミックの映画化で、監督は快作「ハンサム★スーツ」の英勉ということから予想される通り、過剰にマンガ的な映画である。ただし「ハンサム~」にあった、時折キラリと光る深い主題の提示なんかは無い。でもそれが悪いということではなく、ストレートにコメディ路線を突き進もうという、作者の開き直りが感じられて好ましいとも言える。

 中学時代にはソフトボールに明け暮れ、大きな実績も挙げてきたヒロインの晴菜は、高校入学を期にソフトを捨てて恋をしようと決意する。しかし、そんな彼女の気負いとは裏腹に男っ気のない生活が半年間も続く。切羽詰まった晴菜は、偶然出会った学園一のモテ男のヨウに無理矢理“弟子入り”して“恋愛指南”を請うことになるが、ヨウの側も過去の苦い経験から色恋沙汰には及び腰だ。かくして、ナイーヴ過ぎる一本気な女の子と斜に構えた二枚目野郎との、珍妙な恋愛道中が始まる。

 話としてはスクリューボール・コメディの典型であり、誰しも展開と結末は予想が付く。問題は語り口なのだが、これがけっこう侮れない。周りのキャラクター配置と、二人の前に立ちはだかる“障害”の挿入に無理がないのだ。英監督が得意とするカラフルな画面造型とポップな筆致は健在で、多少の展開のもたつきも軽くカバーしてしまう。大人の登場人物がほとんど出てこないのも、良い割り切り方だと思った。

 晴菜に扮するのは映画初出演の大野いと。コイツは面白い。小さい顔に、それとアンバランスなほどに体育会系の身体。ギクシャクと妙な動きでスクリーン上を走り回り、素っ頓狂な科白回しで観る者の笑いを誘う。演技面ではまだまだであるが、出てくるだけで周囲におちゃらけた空気を充満させる陽性の持ち味は貴重だ。

 ヨウを演じる溝端淳平は“ルックスだけの大根”といった域を出ないが(爆)、ヨウの友人役の菅田将暉と古川雄輝がナイスキャラ。何より愛嬌がある。逢沢りなや宮澤佐江といった脇の女優陣も悪くない。ただし、お笑い芸人の起用はマイナス。ここは普通の俳優にコメディ演技をさせた方がインパクトが高かっただろう。

 上映時間が1時間半程度と短いのもメリットで、肩肘張らずに眺めているには絶好のシャシンだ。とはいえ、英監督には次回は別の題材に挑んでも面白いのではと思った。

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