元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ぼくのおじさん」

2016-11-26 06:35:03 | 映画の感想(は行)

 一応楽しめる映画ではあるのだが、後半からの展開が冗長に過ぎる。上映時間をあと30分ぐらい削ってタイトに仕上げていれば、もっと評価出来たと思う。とはいえ観客席からは幾度となく笑いが起こり、鑑賞後の満足感を与えてくれることに関しては申し分ない。シリーズ化も狙える企画だろう。

 小学生男児・雪男の家に居候している父親の弟は、大学の哲学の教員というのが表向きの職業だが、実は講義は週に一回しかなく、ほとんどの時間を家でゴロゴロして過ごしている。性格は見栄っ張りで屁理屈ばかりこねているくせにケチで、雪男の宿題を見てやるどころか、小遣いを横取りしたりと、まったくもってどうしようもない人間だ。

 そんなおじさんに見合いの話が持ち上がる。相手はハワイの日系4世である稲葉エリーだ。当初は見合いを嫌がっていたおじさんだったが、何と一目ぼれしてしまう。しかし、祖母が経営するコーヒー農園を継ぐためエリーはハワイへ帰ってしまう。おじさんは何とかエリーに会うべく、ハワイへ行く作戦をあれこれと考え出すのだが、どれも不発。そんな中、雪男がおじさんを題材にして書いた作文が入選。副賞はハワイ旅行だった。こうして2人はエリーに会うためにハワイへと出かけるのであった。北杜夫が自身をモデルに書いたロングセラー小説の映画化である。

 松田龍平扮するおじさんのキャラクターが最高だ。絵に描いたようなダメ男で、周囲が受ける迷惑も少なからぬものがあるが、どこか憎めない。何をやらかしても“しょうがないなあ”と呆れながら、笑って許してしまいそうだ。テレビドラマ「あまちゃん」等でも実証済だが、彼は良い案配に“抜けた”役柄をあてがわれると、無頼のパフォーマンスを発揮する。

 そんなボケの演技を迎え撃つのは子役の大西利空で、容赦ない突っ込みを見せながら、このおじさんが好きでたまらない様子が観る側に伝わってきて好ましい。さらに脇に寺島しのぶや宮藤官九郎、キムラ緑子、銀粉蝶といったクセの強い面々が控えているので、映画的興趣は増すばかりである。

 しかし、後半舞台がハワイに移り、経営が逼迫するコーヒー農園の行く末や、エリーを追ってやってきた元婚約者等のパートが多くなると、途端にドラマが停滞する。いつしかおじさんの役回りは「男はつらいよ」の寅次郎みたいなものになり、それに呼応するかのように余計なモチーフが散見されるようになる。エリーを演じる真木よう子の大根ぶりも鼻につき、モタモタしたまま終盤を迎える。

 もっとエピソードを刈り込んでサッと切り上げればボロも出なかっただろう。この調子で2時間は長い(「男はつらいよ」シリーズだって1時間半程度だ)。山下敦弘の演出は、今回はリラックスしすぎていると思う(笑)。次回は戸田恵梨香扮する雪男の担任教師とのアバンチュールが描かれるのかもしれないが、その際はプログラム・ピクチュア然としたエクステリアを期待したいところだ。
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