元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ブラッド・ダイヤモンド」

2007-05-01 07:20:15 | 映画の感想(は行)

 (原題:BLOOD DIAMOND )アフリカのシエラレオネを舞台に描かれる、ダイヤモンドの利権を巡って暗躍する政府軍やゲリラ、武器商人たちのどぎつい生態よりも、本作の一番衝撃的な部分は、子供達が反政府組織の手によって、テロリストに仕立て上げられていく過程である。

 ゲリラ組織は、まず子供を親の手から奪い取る。そして自分たちだけのコミュニティに封じ込め、世間から隔絶させる。家庭や一般社会といった、いわゆる“公”を担う世界から断ち切られたところにテロリズムというものは立脚していると言わんばかりだ。かつてのオウム真理教が信者を人里離れたサティアンと呼ばれる非・公共的な入れ物に押し込めたのと一緒である。いくら映画とはいえ、子供が銃を片手に嬉々として殺戮に勤しんでいるシーンは相当なインパクトを与える。

 子供による刃傷沙汰といえばブラジル映画「シティ・オブ・ゴッド」を思い出すが、あれは欲得ずくのエゴイスティックなものであったのに対し、本作はバックに“狂信”があるだけに数段厄介だ。ただし、前に「ラストキング・オブ・スコットランド」を観たときも思ったのだが、後進国には国民を無軌道な状態に追いやらないだけの“公”が存在しない。それは歴史的必然でもあり、部外者が嘆いてみても仕方がないのかもしれない。

 密輸商人を演じるレオナルド・ディカプリオはたぶん彼のキャリアの中で最高の仕事ぶりだ。こういう悪ぶった役を振られると存在感がグッと増してくる。子供を奪われた貧しい猟師役のジャイモン・フンスー、百戦錬磨のジャーナリストに扮するジェニファー・コネリーの演技も的確。

 活劇場面には定評のあるエドワード・ズウィック監督らしく、戦闘シーンはかなりの迫力。演出テンポが良く、けっこう長い上映時間なのに飽きさせない。エドゥアルド・セラのカメラがとらえる美しいアフリカの自然。ジェームズ・ニュートン・ハワードの音楽も快調だ。
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6 コメント

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Unknown (Unknown)
2007-05-01 09:44:53
この映画の背景になっている問題の本質は、世界経済システムです。われわれ先進国の生活スタイルを可能にしているシステムが、他方で底辺では過酷な非人間的状況を作りだしている。両者が同じシステムの裏-表の関係で、つながっているという点が大事です。その意味で、私たちは部外者ではないということですね。たとえば日本の商社が輸入用の養殖場をつくるために東南アジアのマングローブ林を破壊しつくしました。その地域では伝統的な生活文化が取り返しのつかない仕方で失われ、コミュニティは崩壊しました。私たちはそうした事情について何も知らされないままに、日々のグルメライフを楽しんでいるという現実があります。。。これもブラッドダイヤモンドと同じことですね。
Unknown (元・副会長)
2007-05-01 22:41:07
トラックバックありがとうございました。一応、無記名のコメントは反映しない方針だが(スパムが多いので ^^;)、今回に限りフォローしておきます。

>私たちは部外者ではないということですね。

違う。そもそも「部外者」という言葉の意味があなたと私とでは異なるようだ。あなたのロジックで言えば「(世界経済システムに関与している限り)誰しも部外者ではあり得ない」となるのだろう。だが、そういうスタンスでの「部外者ではない」との結論は、それから先の論理展開を何ら生み出さない。

「部外者ではない」との立場から脱却するには、世界経済システムからの逸脱しかないと思う。で、我々にそれが出来るのか。グローバル化する経済は、その善悪を問う暇もなく、すでに存在している。それに対して異議を唱え、すべてを内需でまかなうような孤立主義の道を歩む覚悟が我々にあるのか。

これは今に始まったことではない。欧米列強がアジアやアフリカに植民地を作りまくった戦前の状況から、あなたが仰有る「底辺での過酷な非人間的状況が先進国の生活スタイル支える」との図式はほとんど変わらない。理不尽な話だとは思うが、経済が拡張を続ける以上、財力を持てる者と持たざる者とが出来てしまうことは仕方のないことだ。その状態の中で生き延びてゆくには国家としての“公”をいち早く確立し、列強に対抗できるような国の体制を整えるしかない。そう、我が国のように。

もしも先進国がアフリカから手を引こうとも、彼らの悲惨な状況は変わらないと思う。部族同士の争いなど、大昔からあったはずだ。彼らが彼らなりの国家意識を持ち、歴史を積み、自覚するのを待つしかない。

「私たちは部外者ではない」との意見は問題意識の共有を促すという意味で有効かもしれない。だが、その「私たちは部外者ではない」という認識(同情)のみで止まってしまって、何ら「方策」を考えないとしたら、それも欺瞞というしかない。

どう逆立ちしたって我々はアフリカ人の境遇を真から体現できない。我々は日本に住んでいて、アフリカ人ではない。私の言う「部外者」とはそういうことだ。我々は彼の国々のシビアな現実を目の当たりにして立ち往生してしまうが、同時に諦観するしかない。「部外者ではない」と言い切れるのは、彼らと価値観を共有し、彼らのために具体的で有効な解決スキームを提示できる者だけであろう。

以上、乱筆失礼。
TB有り難うございました (ほんやら堂)
2008-01-09 22:31:48
元副会長様

TB有り難うございました.

この映画良くできていると思います.ディカプリオも好演.

でも違和感があるのです.

例えて言えば「ナイロビの蜂」はOK.こっちは違和感あり.

独断と偏見といわれればまさにその通り.でも何故なんでしょうか.
コメントありがとうございました。 (元・副会長)
2008-01-11 22:45:54
 「違和感」ですか? それは端正なレイフ・ファインズとワイルド系を気取ったディカプリオとの差でしょう・・・・と言っては身も蓋もないですか(爆)。

 それにしても、映画の舞台になった地区は昔「ローデシア」と呼ばれていたのですが、その由来を知るとやりきれないですね。最近のアメリカ映画は娯楽一辺倒ではなく、こういう辛口の題材も意欲的に取り入れているところが侮れませんな。

 それでは、今後とも宜しくお願いします。
いい映画だと思いました (季節の小箱)
2013-09-21 11:52:03
NS-1000MやGT-2000、いい響きです(^_^)v

遅ればせながら、今日、テレビで見ました。

主人公(ディカプリオ)が、最後に砂をつかむシーン、
相手役のジャイモン・フンスー扮する漁師のソロモンが、
飛行場で家族を抱くシーンと、宝石店で陳列してある品物を見るシーン。

ここで、何も思わなければ、
今、自分が、この国に生まれて、どれほど幸せなのかを、忘れているのだと思います。

14歳以上のすべての日本人にお勧めします。

映画としても、上手にできていて、いいなあと思いました。
コメント、どうもサンキューでした。 (元・副会長)
2013-09-24 22:46:21
ディカプリオは良い演技していましたが、アカデミー賞には縁が無かったようです。不思議なもので、一旦オスカーから袖にされると取るのが困難になるようで、彼が手にするのはずっと先のことではないかと思ったりします。

>この国に生まれて、どれほど幸せなのか

そうですね。最近それを痛感します。「人は生まれながらにして平等」では絶対無いです。でも、話はちょっと変わりますが、それを(都合良く)失念したかのごとく「機会の平等」を謳う識者が散見されるのは脱力します。

余談ですが、本作を観たのは南アフリカでのサッカーW杯が開催される前だったのですけど、劇中でケープタウンの風光明媚な光景が紹介されていて「ああ、南アにはこういう場所があるのだな」と感心したことを思い出します。

それでは、今後ともどうかよろしくお願いします。

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