元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「共犯」

2015-08-20 07:10:26 | 映画の感想(か行)

 (原題:共犯 Partners in Crime)以前観た「ソロモンの偽証」と似たような設定の台湾製ドラマだが、こっちの方が面白い。しかもあの映画みたいに無駄に合計4時間も引っ張ることなく、1時間半でキッチリとまとめている点も見上げたものだ。多少プロットに納得出来ない箇所があっても、けっこう満足して劇場を後に出来る。

 男子高校生のホアン、リン、イエは、通学途中で同じ学校に在籍する女生徒シャーの死体を見つける。アパートの自室から飛び降り自殺したらしい。それまでほとんど面識のなかった3人だが、成り行き上シャーの死因を共同で調べることになる。彼女の部屋に勝手に忍び込んだ彼らが見つけたものは、同じクラスの女生徒チュウに責任があることを暗示したようなメモだった。3人はチュウに対して“仕返し”をしようと企み、彼女を学校の裏にある沼のほとりに誘い出すが、これが後に取り返しの付かない事態に繋がることになる。

 冒頭、沼の底に沈む男子生徒と日記帳が映し出され、映画はそれに至るプロセスを、時制を戻して展開する。要するにハッピーエンドに終わらないことが早々に明かされるわけだが、それが決して作品の興趣を削ぐことが無いのは作品のコンセプトがしっかり煮詰められているからだ。

 ストーリーの中で自ら命を絶った者は、身を切られるような孤独に苛まれていたが、そのことが事件の真相を調べる生徒達の内面と共鳴するあたりが興味深い。つまりは、自殺に至る心の闇は日常生活のすぐ隣に潜んでいて、機会さえあれば前面に出てきて本人を呑み込んでしまうという、慄然とする構図を明確に提示しているのだ。また、岩井俊二監督の「リリイ・シュシュのすべて」にも通じる目に見えない思春期の不安と苛立ちを描き出している点も評価出来よう。

 監督は「光にふれる」のチャン・ロンジーだが、ここでもスタイリッシュな映像派ぶりを発揮。いくぶん演出過多の面もあり、終盤には唐突な場面が出てきて戸惑う箇所もあるが、全体的に目覚ましい求心力を獲得している。男子生徒に扮するウー・チエンホー、チェン・カイユアン、トン・ユィカイの3人は皆好演。特にクセ者ぶりを発揮するウーは要チェックだ。

 ヤオ・アイニン、ウェン・チェンリン、サニー・ホンの女性陣も申し分なく、少なくとも「ソロモンの偽証」のようにブスな女子が画面の真ん中に居座るようなことがないのは有り難い(笑)。flumpoolが中国語で歌うエンディング・テーマ曲だけは違和感を覚えるが、ともあれ観て損は無い青春ミステリーの佳編と言えよう。

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