元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ザ・バンク 堕ちた巨像」

2009-04-20 06:37:38 | 映画の感想(さ行)

 (原題:The International )なかなか楽しめる映画である。何より硬派なネタを扱っていながら、分かりやすい活劇編に仕上げている点が評価できる。違法行為を繰り返すドイツの国際的なメガバンクIBBCと、捜査に当たるインターポールのエージェントとのバトルを描く本作、まず面白いのが劇中での“悪の組織”がマフィアでもテロリスト集団でもなく、銀行というカタギの稼業を執り行う社会的組織であることだ。

 IBBCのモデルは91年に経営破綻したBCCIである。同銀行は世界中の独裁者やテログループに資金を用立て、彼らを借金でがんじがらめにして裏から操ろうとしていたらしい。現在の世界的規模の不況は銀行をはじめとする金融機関の暴走に一因があったことは論を待たないが、本作ではその銀行が犯罪シンジケート顔負けの荒仕事をやってのけるあたりが実にタイムリーだ。

 この“銀行”はインターポールに情報を提供しようとした銀行関係者も、その窓口になった捜査員も、次々と容赦なく抹殺してゆく。銀行が雇った殺し屋が失敗したり寝返ったりしたケースを想定して、また別の殺し屋グループを用意するという周到さには呆れるばかり。しかも、この銀行には旧東ドイツの特高警察関係者も絡んでいるのだから始末が悪い。

 監督は「ラン・ローラ・ラン」などのトム・ティクヴァだが、現時点での彼の最良作だと思う。とにかく切れ味が鋭い。派手なカーチェイスや爆破場面こそないものの、サスペンス溢れる街中での追跡シーンや、先の読めない中盤以降でのテンポの良い展開には思わず身を乗り出してしまう。ハイライトはニューヨークのグッゲンハイム美術館での壮絶な銃撃戦だ。一人の殺し屋を追いつめたと思ったら、関係者を皆殺しにしようと別働隊がやってきて、館内は阿鼻叫喚の様相を呈してくる。ただ銃を撃ちまくるだけではなく、それぞれのアクション場面が必然性を帯びた配置になっているのには感心した。

 主人公役のクライヴ・オーウェンは幾分垢抜けない印象もあるが(笑)、かつてはスコットランド・ヤードで現場の刑事として苦渋をなめた過去を背負っている悲哀に満ちた表情が良い。相手役のニューヨーク検事局の女性検察官に扮するナオミ・ワッツについてはもう何も言うことがない。相変わらずイイ女である。悪役陣もそれらしい面構えの連中を揃えていて、このあたりも抜かりはない。

 それと特筆すべきはロケ地の選択が見事であること。ベルリンから始まって、リヨン、ミラノ、さらにイスタンブールまで、風光明媚な映像が満載だ。たっぷりと観光気分が味わえて、映画を観た後はすっかり海外旅行に出かけたような気分だ。その点でも見応えはある。

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