テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

幻か、オアシスか。

2017-05-25 21:57:54 | ミュゼ
「こんにちわッ、テディちゃでス!
 むむゥ! ちかづくゥ~しょうねんばッ!」
「がるる!ぐるがるるる?」(←訳:虎です!決着つくかな?)

 こんにちは、ネーさです。
 ジロ・デシ・イタリアの総合優勝候補も絞られてきました。
 第16ステージでは首位の選手さんがトイレタイムのため
 大幅にペースダウン!という前代未聞の椿事が発生、
 そして今日はドロミテアルプスで激坂レース!
 誰がトップを獲るのか、結果を心待ちにする一方で、
 さあ、読書タイムです♪
 本日は、こちらの御本を、どうぞ~!
 
  



        ―― あとは野となれ大和撫子 ――



 著者は宮内悠介(みやうち・ゆうすけ)さん、2017年4月に発行されました。
 『カブールの園』で三島由紀夫賞を受賞したばかりの著者・宮内さんの、
 最新刊がこちら!なんですけど……

「えすえふゥ、でスかァ?」
「ぐるるぅ?」(←訳:政治劇ぃ?)

 そうなのよね、
 この御本はどのジャンルに属するの?と問われたら、
 さて、どう説明したらいいんでしょう。

 現実的であり、まったく架空でもある設定。
 ファンタジーともSFとも言えそうな物語なのに、
 私たち読み手はひしひしと
 恐怖と危機感を覚えます。

 これは、明日、我々の身にも起こり得る事柄ではないのか……?

「だからァ、はらはらァ、しちゃいまス!」
「がるぐるる!」(←訳:心配なんだ!)

 物語の舞台となるそこは、砂漠の国。

 アラルスタンという、
 中央アジアの小国です。

 ソビエト連邦の末期に
 政治的な思惑から建国されたアラルスタンは、
 いまもまだまだ、“国”としての形と方向を定められず、
 摸索を続けている最中。

「げんきはァ、あるんでスけどォ!」
「ぐるがるるるる!」(←訳:町は賑やかだし!)

 ええ、人の往き来も盛んで、
 活気がある――ように見える首都の繁華街。

 しかし、そこで異変が起きました。

 民衆の注目を浴び、
 演説を始めたのは
 国家の舵取りを担う、大統領。

 彼を狙って
 ……銃弾が!!

「えええッ?」
「がるぅ!」(←訳:うそぉ!)

 舵取りを喪った若い国が
 沈没するのは必定、と誰もが思うでしょう。

 無思慮無気力な議員たち、
 信念なき官僚たち、
 好機を窺う無法集団たち。

 もう、国が亡びるのは時間の問題か……

「そッ、そんなのォ~!」
「ぐるるぅ!」(←訳:いやだぁ!)

 そのとき、国を、
 いえ、“自分たちの居場所”を護るべく
 立ち上がったのは。

 女の子たち。

「ふァ?」
「がる?」

 初代大統領が愛妾たちを住まわせていた《後宮》は、
 現在、行き場を持たない少女たちが暮らし、
 毎日勉強に励んでいました。

 国が、町が、滅んでゆくのを
 ただ見ているだけ――なんてこと、できるもんか!

 誰も守ってくれないんなら、
 いっそ、あたしたちの手で!

「そッ、そッちィでスかッ!」
「ぐるがる!」(←訳:発想斬新!)

 傾く国家を、どう立て直すか。
 再生させ、大地にすっくと立ち上がるか。

 政治エンタと言えなくもない壮大な物語ですが、
 私ネーさは《宝塚》を連想いたしましたよ。
 
 少女たちが沙漠に築く“夢の国”の理念は、

「きよくゥ! ただしくゥ!」
「がるる!」(←訳:美しく!)

 砂漠にそびえるのは、
 蜃気楼に揺れる幻の楼閣か、
 本物のオアシスか。

 冒険と挑戦の快作、
 宮内さんファンの皆さま、
 ぜひ、一読を♪
 
  
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