歩いて・見て・話して…ディープに街を知る芸術祭 ー別府現代芸術フェスティバル2015「混浴温泉世界」。

 

大分県の温泉街・別府で開催中の「別府現代芸術フェスティバル2015『混浴温泉世界』」に行ってきました。「混浴？！」なんて驚いてしまう名前ですが、男女や国籍、年齢などの違いも関係なく、心の衣服を脱ぎ去って街や作品に彷徨い込む、という様子が表されているんだそうです。

2009年から3年に1度行われてきた芸術祭ですが、残念ながらトリエンナーレ形式は今年で終わりになるとのこと。

今年は
　・「アートゲートクルーズ」
　・「ベップ・秘密のナイトダンスツアー」
という２つのツアープログラムを中心として
　・アーティストのつくるお化け屋敷「永久別府劇場・恐怖の館」
　・デパートを舞台とした展覧会＆パフォーマンス「わくわく混浴デパートメント」
　・アーティストインレジデンス「KASHIMA」
などのプログラムが開催されています。

 

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（なぜか別府の街には猫がいっぱい。ツアー中にもたくさんの猫さんに会いました。）

 

「アートゲートクルーズ」では、地元の方の案内に従って、別府の街の路地を散策しながら、枝史織さん、大友良英さん、クワクボリョウタさん、蓮沼執太さんという４名のアーティストが、この土地のために作った作品を回っていきます。

（こちらも展示会場のひとつ。さて、ここはどこでしょうか？）

 

このツアーでどんな道を通るのかは、参加した人だけの秘密。…とはいえ、細い路地にどんどん彷徨い込んで行くので、初めて別府に来た私はもはやどこを歩いているのやら…

 

（観光では入らないような路地へ…）

 

こんなに迷路のような細い路地でいっぱいなのは、別府が古い街でありながら空襲を受けなかったため、戦前からの建物が多く残っているからなのだそうです。
その建物を一度壊してしまうと、現在は消防法のために同じ土地に家を建てるのが難しいのだそうです。そう言われて街を見回すと、1階は新しく見える建物も2階はとても古い様子だったりすることに気づきました。（1階だけリフォームされているんですね。）

（これは日中に撮影したもの。プロジェクトスペース「P3」は、古くはお米や砂糖を扱っていた商店だったとのこと。１階のお店と2階のギャラリーの建物の雰囲気の違いにびっくりです。）

 

観光していただけでは気づかなかった街の特徴を、ツアーと作品を通じて知る事ができる、興味深いプログラムでした。

（「作曲家の記憶 Memories of a Composer」の一部 / 蓮沼執太)

 

私は特に大友良英さんの「バラ色の人生　LA VIE EN ROSE」が好きでした。地元で使い古された家電を使った作品。古い機械の奏でるちょっとアナログな感じのする懐かしい音、そして制御できるはずの機械を使って人がつくる”ライヴ”。その日、その場所でしか味わえない「ステージ」でした。

（「バラ色の人生　LA VIE EN ROSE」/ 大友良英）

 

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もうひとつのツアープログラム「ベップ・秘密のナイトダンスツアー」も、夜の別府を舞台に繰り広げられるパフォーマンスツアー。こちらは３組のアーティストのパフォーマンスが週替わりで見られます。

 

私が参加した日は”砂風呂ナイト”と称し、東野祥子さん、かえるPさん、藤條虫丸＆阿羅漢ファミリーさんのパフォーマンスを拝見しました。

（舞台は夜の別府の街。大通りを少しはずれると、こんな雰囲気の小道も。）

 

「パフォーマンス」と一口に言っても、会場も内容も三者三様。
今回は特に振付家・ダンサーの東野祥子さんのダンスが印象的でした。街の風景も衣装も、周りの全てがダンスを魅せるための演出になり、一コマ一コマがまるで絵画のような美しさのパフォーマンスでした。街場でパフォーマンス中に起こる”偶然のこと”まで、全てパフォーマンスのストーリーの一部のようになってしまうのも面白かったです。

（ツアーは21:30まで。熱いパフォーマンスを見た後には、竹瓦温泉でひと風呂…なんていうのもいいですね。）

 

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「永久別府劇場・恐怖の館」は、商店街の廃墟を舞台としたアーティストのつくるお化け屋敷。会期中に３回アーティストが変わります。

 

 

私が参加したのは「ANTIBODIES Collective」の回。自分の目の前で一人のために繰り広げられるパフォーマンスは、美しくて見ていたい！でも怖いから逃げたい！！という不思議な感覚でした。あー、でも本当に怖かった…（涙）

（「恐怖の館」外観。商店街の中で異様な存在感を放っています。）

 

この「永久別府劇場・恐怖の館」、週末の夜は「お化けBAR」となって、お酒が飲めます。

（お化けが接客してくれるわけではないのでご安心ください。）

 

パフォーマンスを終えたアーティストの方々もいらっしゃって、感想などをお話させていただいたりも。昼の恐ろしさとは打って変わり、楽しい時間を過ごす事ができました。

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日中にはふらりと別府の街歩きをしながら「BEPPU PROJECT 2015」などの作品を鑑賞できます。

（トキハデパートで開催中の「わくわく混浴デパートメント」。会場で遠藤一郎さんにもお会いできました。）

 

（デイリーヤマザキ 別府駅前店には、商品に紛れて川崎泰史さん制作の人形が。）

 

特に「トキハデパート」の屋上いっぱいに描かれた淺井裕介さんの巨大なドローイング「海と山の間で生きている」は圧巻です！

 

（淺井裕介さんのドローイング。空から見ると大きなひとつの生物。地上から見ると、たくさんの不思議な生き物で構成されています。）

 

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たくさんの魅力的な作品に出会う事ができましたが、一番心に残ったのは、スタッフの皆さんがとても親切に、そして気さくにお話してくださったことです。
作品に対して考えたことをお話したり、芸術祭のことや、別府の歴史や魅力についてお話していただいたり、温泉の入り方や美味しいお店まで教えていただいたり…ガイドブックを見て観光しただけではできないとても素敵な体験でした。

 

（スタッフさんに教えていただき、美味しい夕飯にもありつくことができました。ありがとうございます！）

 

トリエンナーレ形式は今年で終了とのことですが、どうぞまた新しい形で、スタッフさんやアーティストの方々と一緒に土地の魅力に触れられるような芸術祭が続けてくれますように。

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 ■ DATA

別府現代芸術フェスティバル2015「混浴温泉世界」

日時：2015年7月18日(土)〜9月27日(日)

会場：大分県別府市内各所(中心市街地／鉄輪地区)

総合インフォメーションセンター：JR別府駅構内(平日11:00〜18:00
　　　　　　　　　　　　　　　　土日祝10:00〜18:00)

・「アートゲートクルーズ」:　毎週月・木・金曜 18:00〜20:30 / 毎週土・日曜および祝日 16:00〜18:30、18:00〜20:30
前売券1,500円／当日券2,000円、小学生 500円（毎回15名、定員制）

・「ベップ・秘密のナイトダンスツアー」： 毎週金・土および7月19日(日)／8月13日(木)／9月20日(日)、21日(月祝)、22日(火祝) 20:00～21:30
中学生以上 前売券1,500円／当日券2,000円、小学生 500円（毎回５０名、定員制）

・「永久別府劇場・恐怖の館」:
［第1期］ 7月18日(土) ～8月16日(日) 毎週木・金曜 16:00~19:00、
　　　　　毎週土・日・祝日14:00~19:00
　　　　　ANTIBODIES Collective
［第2期］ ８月22日(土) ～９月６日(日) 毎週木・金曜 16:00~19:00、
　　　　　毎週土・日・祝日14:00~19:00
　　　　　MuDA
［第3期］ ９月11日(金) ～９月27日(日) 毎週木・金曜 16:00~21:00、
　　　　　毎週土・日・祝日13:00~21:00
　　　　　福岡恐いもの研究会
入場料= 500円（予約不要／未就学児入場不可） 

・「わくわく混浴デパートメント」：8月26日(水)、9月9日(水)を除く毎日／10:00〜19:00
入場無料・予約不要

・「KASHIMA」：火・水曜を除く毎日／11:00〜18:00（※9月22日(火祝)、23日(水祝)はオープン）

・「BEPPU PROJECT 2015 」：7月18日(土)～9月27日(日) ※定休日は各施設に準ずる

※パスポート：パスポートの提示で〈アートゲートクルーズ〉、〈ベップ・秘密のナイトダンスツアー〉、〈永久別府劇場・恐怖の館〉、〈KASHIMA2015〉をそれぞれ1回ずつ体験することができます。価格＝3,500円