【今週末はどこに行こう?】今週末行きたい 展覧会・イベント

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身近な問題の延長線上に見せる 美しい世界。 ー スペクトラム ―いまを見つめ未来を探す@スパイラル

2015年10月03日 | アート●オススメ展覧会●

表参道にあるスパイラルで開催中の
「スペクトラム ―いまを見つめ未来を探す」
に行ってきました。

 

スパイラルの開館30周年を開催した展覧会です。30周年とは思えない、古さを感じさせないこの建物は槇文彦さん設計の複合文化施設。そして、今回の展覧会はこの建物の空間の特徴を生かした美しい作品の並ぶ展覧会となっていました。
(撮影OKの展示だったので、写真も入れてご紹介いたします。)

(スパイラル外観)

 

スパイラルに入り、スパイラルカフェの横にある長い通路を飾るのは毛利悠子さん「アーバン・マイニング:多島海」

(「アーバン・マイニング:多島海」/ 毛利悠子 /2015)

毛利悠子さんは、2014年の横浜トリエンナーレや札幌国際芸術祭で自動演奏楽器を展示されていたのが印象的な作品でした。

(「アイ・オー ―ある作曲家の部屋」 / 毛利悠子 / 2014 / ヨコハマトリエンナーレにて)

今回の展示は巨大な街路灯。実際に使用されていたものなのだそうです。そしてそれとは対照的に、空き缶の上に立つ小さなミニチュアの街

どちらにも細い導線がつながっていて、スクラップになった空き缶でできた地面につながっています。そして、人の動きによって起こる風で導線が振れると、灯りもちらちらと揺らぎ始めます

どちらも一見無機質に見える構造物ですが、街に人がいて、人によってそれらの構造物も動いている、というつながりを感じさせる展示でした。

(今回の展覧会に関わるこちらのインタビュー記事も興味深かったです。
「即興ハードコアから現代アートへの転機点 毛利悠子インタビュー」(CINRA.NET)

 

 

続いて、吹き抜けの広い空間にそびえるのは真っ黒いフレキシブルコンテナバッグの壁
栗林隆さん「Vortex」という作品です。

(「Vortex」 / 栗林 隆 / 2015)

栗林隆さんは、「いちはらアート×ミックス」で校長室を丸ごと凍らせてしまった作品を作られた方です。

(Principal office 2014 / 栗林 隆 /2014 /いちはらアート×ミックスにて)

 

原発事故による放射性物質を詰めるのに使われていながら、それ自身は耐久性の少ないフレキシブルコンテナバッグ。それに囲われた不気味な雰囲気の建築物ですが、中に入ってみると…

中にはとても美しいシャンデリア。

でも、この英文をよーく読んでみると「uranium」なんていう単語も出てきたり…これは、アインシュタインがルーズベルトに送った原発の開発許可を求める手紙なのだそうです。

外壁の恐ろしい雰囲気と、内部の美しいシャンデリア、そのシャンデリアの表している内容…外見で判断してしまいがちですが、その中身までじっくりと見て行かないと本質は分からない…ということを感じる作品でした。

 

 

さて、スパイラル状のスロープを渡り、雑貨屋さんを通り抜けると、今度は階段の中にたくさんのiPadが置かれています。

高橋匡太さん「いつかみる夢『散華』」

(「いつかみる夢『散華』 / 高橋匡太 / 2015)

高橋匡太さんは、2014年の「道後オンセナート」で道後温泉本館を美しくライトアップされる作品を作っていらした方です。。

(道後温泉本館ライトアップ 「大還暦のお色直し」 / 高橋 匡太 / 2014 / 道後オンセナートにて)

階段にいくつも設置されたiPadには、カメラモードのように階段の風景が映し出されています。ところが、しばらくすると画面の中には、花を撒きながら階段を駆け上がって行く女性の姿が。思わず、実際の風景では見えないその姿を追いかけてiPadの画面を確認しながら階段を上下してしまいます。

目の前の風景と画面の中の世界、どっちが本物なんだろう…?という感覚になんて思い始めてしまいます。そして、画面の中の方が美しい世界のようにも見えてくるのがすこし怖かったりも。

 

 

そして、最後はエレベーターで5Fへ。

(エレベーターにもイラストが描かれています。)

榊原澄人さん「Solitarium」

(「Solitarium」 / 榊原 澄人 / 2015)

榊原澄人さんは、2013年のDomani 明日展などにも出展されていました。

5Fにある天球のスクリーンに映し出されるアニメーションを寝転びながら観ます。
魚眼レンズのようにぐるりと広い範囲を見渡せる広い風景の中には、頭だけの巨人に人が餌を与え続けたり、巨大な脳に鞭を当て続けたり、灰色の人が1列で歩き続けたり、大きく口を開けた電車に次々と乗り込んでは降りて行ったり… と、なんだか少し怖いアニメーションが黄色を基調とした強い色調で描かれています

それぞれのパーツの動きは12秒でループしていて、いつまでも同じ動きが続きます。それぞれの動きは独立して同時多発的に別々の場所に起こっている様子ですが、不思議とひとつの世界としてつながり、それぞれの動きに相関があるように見えてきます。

 

 

今回の展覧会のタイトル「スペクトラム」は、境目がなく徐々に色が変化していく”虹”のような「連続体」を意味したものだそうです。

そう考えると、4つの作品はどれも美しくて幻想的な世界ですが、私たちの日常にある身近な問題と地続きで、ほんの少し延長線上にある世界であることに気づきます。

また、作品製作も4名の作家さんの間でのディスカッションも交えて行われたそうで、それぞれの作品自体にもゆるやかなテーマのつながりを感じました。

なお、受付でアンケートに答えると、スパイラル発行のフリーペーパー「スパイラルペーパー」30周年分の記事をまとめた672ページにもおよぶ”特別号”を先着でいただけます。現代アート、音楽、ダンスなど多くの分野にわたる30年分の記事が詰まった本。豪華です。

 

「スペクトラム ―いまを見つめ未来を探す」展は、10月18日(日)までです。

**********

■DATA■

■スペクトラム ―いまを見つめ未来を探す@スパイラルガーデン(表参道)

 

期間:2015年9月26日(土)— 10月18日(日)
時間:11:00-20:00
会場:スパイラルガーデン、一部作品はスパイラル5F
料金:無料
「スペクトラム」とは、英語で“連続体”や“領域”、プリズムを介して生じる“色彩の配列”を意味します。
本展では、現代の窮屈な日常や、時代の閉塞感に立ち向かい、表現領域にとらわれることなく、多様な文化、思想、表現を吸収しながら新しい価値を提示する、栗林隆、榊原澄人、高橋匡太、毛利悠子の4名を紹介します。※榊原澄人の作品は、スパイラル5Fで展示いたします。
会期中には、出展作家のトークをはじめ、年齢、性別、国籍、障害の有無などを超え、多様な人々が協働でパフォーマンスを完成させる作品など、様々な「スペクトラム」的な表現をご紹介する関連イベントを開催します。

※ 罫線イラストは、“フリー素材 * ヒバナ” さんのイラストを使用させていただいています。ありがとうございます。

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