西武・渋谷店で開催された「Mise Mono Go! Yeahhh!!!展(ミセ モノ ゴー! イエー!展)」に行ってきました。
私が伺ったのは最終日ですが、「明和電機土佐信道によるギャラリートーク」にも参加してみどころを教えていただいたので、レポートしたいと思います。
■「Mise Mono Go! Yeahhh!!!展」とは?
「見世物小屋」をベースとした、さまざまなジャンルの職人的アーティストが参加する展覧会です。
・ゆかいな電気屋アーティスト「明和電機」の奇妙なナンセンス・マシーン
・特殊メイクアーティスト「JIRO」のリアルでトリッキーなSFX造形
・三つ目系POPアーティスト「ARUTA SOUP」のキュートなモンスター
・日本が生んだ世界的漫画家「丸尾末広」の耽美なイラストレーション
・映画監督「TORICO」のガーリーなミステリールーム など
5人のアーティストと、1つのユニットによるあっと驚く「モノ」が集まりました。
「『見世物小屋』というとなんだか”アングラ”な雰囲気ですが、これを現代風にPOPに表現した展覧会」とおっしゃっていたのは、この展覧会のプロデューサー・明和電機代表取締役・土佐信道さん。ちょっと変わった今回のタイトルには、「見せる(=ミセ)、もの(=モノ)、行く(=ゴー)、あっと驚く(=イエー)」といった意味が込められているとのこと。
では、展覧会に伺ってみます…
■ エントランスはアーティストのコラボレーション
百貨店の特設会場に目を引くピンク色の壁が表れます。
鏡に映したような女性の写真のメインビジュアル。Photoshopで加工したような不思議な写真ですが、こちらはこちらの展覧会に参加されている映画監督・TORICOさんがモデルとなり、特殊メイクアーティスト・JIROさんによって施された特殊メイク!加工無し・一発撮りの作品なのだそうです。
エントランスにはこんなオブジェが…
ここには、今回展示の全てのアーティストの作品が詰まっています。JIROさんのマスクに、丸尾末広さんのイラストをARUTA SOUPさんがコラージュし、そのイメージを使ってTORICOさんがデザインした服、その両脇には明和電機の楽器「マリンカ」が並びます。どんな展示が待っているのかわくわくしてきます…
会場に入ると、まずはJIROさんの作品。
JIROさんは、「TVチャンピオン」の”特殊メイク王”で2連覇を達成された方で、最近は”マツコロイド”や”進撃の巨人”のメイクを手がけられているそうです。
今回展示されていた新作「Bloom」は、女性が徐々に年齢を重ね最後には骸骨になってしまう作品。女性の顔のちょっとした変化がとてもリアルで驚いたのですが、JIROさんは若いモデルさんを見ても、将来シワのできる場所が分かってしまうのだそうです。まさに”職人”ですね。
若くて美しい女性が骸骨へと変化していく様子は、仏教絵画の「九相図」(屋外にうち捨てられた死体が朽ちていく経過を九段階にわけて描いた仏教絵画。特に若い仏僧の煩悩を除くために、女性が朽ちて行く様子がテーマに選ばれることが多かったそうです。)にもつながるとのことで驚きました。
そして、こちらの美しい女性の絵。額を手で持っていると思いきや、実物の額は手前の一部のみ。一部は身体に描かれた絵だと伺ってよーく見てみると…
ほんとだ!身体に描いてある!!(写真でも伝わりづらいくらいリアルですね…)
”特殊メイク”なんて、映画などを見ていてもあまり気にしていなかった世界ですが、職人的な観察力と挑戦が込められた作品なのだと知りました。
写真だけでなく、動画も展示されていましたが、何時間もかけて”別人”に仕立てられた特殊メイクをクレンジングで一瞬で落として”素”のモデルさんに戻してしまう動画を見ると、メイクは”仮”の姿であって、つくり上げられたとっても儚くて美しい世界なんだなぁということを感じます。
(特殊メイクに通常用いられる”シリコン”ではなく、筆だけでどこまで人を変えられるのか、ということにも挑戦されているというJIROさんの仕事道具も展示されていました。この道具だけケースに納められているのは、あまりに精巧な「目玉」の作品が盗まれてしまうことがあったからこと。確かにとてもリアルで美しい作品です。)
続いてAruta Soupさんのコーナー。
17歳で渡英し、ストリートペイントをされていたというAruta Soupさん。
(昨年の個展についての記事:「有名キャラをアイロニカルに描くAruta Soup個展、LEO今井や明和電機のライブも」(CINRA.NET) )バンクシーやシェパード・フェアリーらのグラフィティで知られるロンドンのクラブハウスCARGOの壁画を手掛けられているそうです。
そんなAruta Soupさんは、今回コラージュで何層にもイメージが重なる作品を公開。
さらに、こんな部屋も…
様々な家具が置かれたこちらの部屋、展覧会初日は真っ白な部屋だったそう。
会期中にライヴペインティングを繰り返し、最終日にはこんなにPOPでちょっとグロテスク?な部屋になっていました。私が伺った最終日にもライヴペインティングが行われ、多くの方が足を止めて見入っていらっしゃいました。
一見、部屋の家具にバラバラに描かれたイラストですが、正面から見ると…
ぴったりと1つの風景になってしまうので驚きです。
どこかでみたことがあるようなキャラクターを”三つ目”のモンスターに作り替えてしまう作品も。Aruta Soupさんの作品の”三つ目”の3つ目の眼は、”新しい才能”も表しているそうです。
続いては、中小電機メーカーを模したスタイルで様々な”ナンセンス・マシーン”を”開発”されている明和電機のコーナー。
こちらに並ぶのは、最近注目の「ウェアラブル」マシーン…のようでいて、”人の手助けをするウェアラブル・デバイス”とは正反対の、”人に優しくない「ウェ荒ぶる」なマシーン”たち。
(参考:「明和電機にとって“ウェアラブル”とは何か」(DOT Place))
例えばこちら▼の”手ぶらでトマトを食べさてくれる「ウェアラブルトマト」” 通称「トマタン」は、食品メーカーのカゴメと共同開発し、東京マラソンでお披露目されたロボット。背負って走る…とはいえ、重さは8kmもあるそうで!人に優しくない”ウェ荒ぶる”マシーンです。
(展覧会の間に社長によるデモンストレーションも行ってくださいました。)
ゴムを楽器の”リード”のように人工声帯として用いた”歌うロボット「セーモンズⅡ」”は、音程を調節するために”耳”に当たる機構を持っており、自分の歌う歌を聴きながら音低を調節しているのだそうです。このようにして自分の声を聞きつつ音低を調整するときに”こぶし”のような微妙な音のブレが生じるんだそうです。ロボットなのに、人間の歌う歌のような味わいが生まれるなんて面白いですね。
丸尾末広さんは、「少女椿」など海外でも人気のある作品で知られる漫画家。(とても有名な作品なのだそうですが、私は今回の展覧会で初めて知りました…スミマセン><)
会場には鳥居みゆきさんの独演用のポスターの下絵と彩色の作品、そして、「少女椿」のリトグラフが展示されていました。下絵と彩色画が別々にあるんですね…細部までの細かく美しい描き込みと、独特の怪奇性のある世界観には思わず見入ってしまいます。
日本では”アングラ”と捉えられがちな作品ですが、海外では”Japanese Culture"として受け入れられている作品なのだそうです。
丸尾末広さんのキャラクターをAruta Soupさんがコラージュするといったコラボレーション作品も。
(物販では、こちらのデザインを施したポーチなども販売されていて素敵でした。)
TORICOさんは、「ミガカガミ」、「イケルシニバナ」といった作品を手がける映画監督さんでもありつつ、女優さんでも人気ファッションブロガーでもある多彩な方。
そんなTORICOさんの作品は…
上下が逆さになった部屋…?
顔出し看板のように穴から顔を出して画像をひっくり返すと…顔だけがひっくり返った”トリックアート”のような不思議な世界を創り出す「アベコベヤ」。(私もやってみましたが…失敗…もっと顔を前に出せば良かった…)
写真に撮って現像したときに初めて面白い作品として表れてくる、というところは、映画的な表現とつながっているそうです。
(TORICOさんご本人や、アーティストの方々が”顔出し”されたインスタントフィルムも。)
なお、この作品の中の子が着ている服は、丸尾末広さん「少女椿」のみどりちゃんの着用している服、というコラボレーションも。なお、2016年にはTORICOさんの監督で丸尾末広さんの漫画を初めて実写映画化されるとのことです。
最後は、明和電機の製品や世界観をモチーフとし、ブランドのトータルディレクター&デザイナーは TORICOさん、グラフィックワークはARUTASOUPが担当されているブランド・Meewee Dinkee。
こちらの洋服は、「少女椿」や「帝都物語」といった作品、そして今回のテーマ「見世物小屋」をモチーフにされているそうです。
ちなみに、こちらの洋服、”ハンガーダンス”という作品で、不定期に光を放ちながら踊り始めます!(本当に不定期に突然動き始めるのでびっくり!)
(”ダンス”がうまく撮影できていなくてすみません…ハンガーが光りながら、服が踊りだします。)
会場の最後には、今回のテーマ「見世物小屋」を象徴するステージや、物販もありました。ステージでは会期中、様々なアーティストの方々がコラボレーションしたファッションショーやトークショー、ライヴペインティングなどのイベントが行われたそうです。また、物販では各アーティストや、コラボレーションのグッズも販売されていました。お気に入りの作品の世界観をお家につれて帰って、身につけたりできるのは嬉しいですね。
■ 最後に・「コト」ではなく「モノ」に焦点をあてること。
最後に、今回のテーマについて社長が言及されていたこと。
近年では、何かを伝えようとしたときに、何らかの”事件”(コト)を起こして話題をつくり、SNSなどで拡散する、という方法が主流ですが、今回の展覧会は”物質”(モノ)を中心としたもの。
今回の展覧会は「百貨店」で開催されましたが、「店(みせ)」は「見世」に由来し、”モノ”の力で人を呼ぶ場所であったとのこと。
”コト”が重視されるなか、”コト”を起こす「素」となる”モノ”を創り出していこう、という意図なのだそうです。
”モノ”によるエンターテイメントの世界を堪能できる展覧会でした。
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■DATA■
不思議な”モノ”たちのワンダーランド Mise Mono Go Yeahhh!!! 展
日時:2015年5月1日(金)―5月10日(日)
[月-土]午前10:00-午後9:00
[日]午前10:00-午後8:00
場所:西武渋谷店A館7階=特設会場
入場料:一般500円、高校生以下無料
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