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6-4 王家の谷

2017-06-17 17:39:27 | 世界史
『文明のあけぼの 世界の歴史1』社会思想社、1974年

6-4 王家の谷

 ピラミッドはナイル川の流域に、現在大小約八十ある。
 しかしそれらの中には、もちだすことのできない巨大な石棺などのほかには、値打ちのあるものは何一つ残っていない。
 ピラミッドの建築家たちがあらゆる知恵をしぽったにもかかわらず、盗賊たちがそれをだしぬき、まんまと宝物類を盗みだしてしまったからである。
 ピラミッドの存在はあまりに目につきすぎ、中には莫大な宝がはいっていることが確かなので、盗賊たちが時と頭脳と肉体をたっぷり費やすかいのあるものだった。
 古代エジプト人の信仰からすると、死者のミイラにはお祭りをして、供物が捧げられなくてはならなかった。
 したがって、ピラミッドにはみなそのための葬祭殿が付属していた。
 しかしピラミッドの内部が盗賊によってあまりにも荒らされ、ミイラは護符的な装身具類をはぎとられ、冒瀆(ぼうとく)されるので、葬祭殿と墓所をはなし、墓所を秘密なところにかくす必要が生じた。
 墓所のありかをかくした最初の王(ファラオ)は、第十八王朝のツトモシス一世(紀元前一五四五~一五一五ごろ)だった。
 彼は葬祭殿から一キロ半も遠くにある岩山に、墓所をつくらせた。
 ツトモシス王の秘密の墓を建造したのは、イネユという建築家だった。
 彼は自分の墓の礼拝堂の壁に、自分の伝記をくわしく書きしるし、
 「私はたったひとりで王の岩窟墓を仕上げる監督をした。それを見たものはだれもなく、それを聞いたものはだれもない」と誇っている。
 ツトモシス王の墓は、ナイルの西岸の、カルナクとルクソルの反対側のいわゆる「王家の谷」につくられた。
 そこの岩山の険しい崖に、深い竪坑(たてあな)を掘り、急な階段で降りて行くようになっていた。
 その工事には、少なくとも百人の工夫(こうふ)が必要だったろうと考えられる。
 したがって、「それを見たものはだれもなく、それを聞いたものはだれもない」というイネユの言葉は工事が完成したのち、それらの工夫たちがみな殺されてしまったことをあらわしている恐ろしい意味をもったものとされている。
 こののち五百年にわたって、王の墓はツトモシスの墓にならって王家の谷にひそかにつくられ、今日では六十一の墓が知られている。
 しかしそのように厳重にかくされても、盗賊は巧妙に、王の墓をさぐりあてた。
 そこで王のミイラはより安全と思われる墓にたびたび移され、最後には一ヵ所にたくさん集められて、葬られた。
 そうすれば監視がしやすくなると考えられたからだった。
 そういう合同墓地のひとつが偶然なことから、一八八一年にみつかった。あるアメリカ人がルクソルに旅行し、エジプト人からひそかに古いパピュロスを買ったことがきっかけだった。
 彼はそのパピュロスを、ヨーロッパで学者たちに鑑定してもらった。
 学者たちは真物(ほんもの)と折り紙をつけ、そのうえ貴重なものだと教えてくれた。
 この情報がカイロにとどき、カイロ博物館のカストン・マスペロ博士は助手に命じて、パピュロスの出所をさぐらせた。
 その結果、アビド・エル・ラスル一家が、古物の盗掘・密売でつかまった。
 彼らはデル・エル・バハリ盆地に古代の諸王の秘密の合同墓地を見つけていた。
 そこに集められていた諸王のミイラは四十体もあった。
 それらはあちこちの墓から集められたもので、盗賊の難にあっていたものもある。
 しかしなお種々の副葬品があった。ラスル一家は、この墓地を彼ら一族だけの秘密とすることをかたく誓い、必要なときだけ品物をもちだして売ることをきめた。
 この秘密が、アメリカ人にパピュロスを売ったことがきっかけとなって、露見してしまったのだった。
 王の墓がたびたび荒らされたのは、賄賂(わいろ)がつかわれ、墓の監視人、神官、墓地警備の最高責任者の役人までが、墓泥棒に買収されたためだった。
 墓泥棒の訴訟を記録したラメス時代のパピロス文書が発見されていて、そのような事情が明らかになっている。

 先年わが国でその遺物のほんの一部が陳列されて評判になったツタンカーメン王の墓も、この王家の谷にあった。
 この墓の発見の話は、あまりにも有名になっているので、今はふれないが、王棺もミイラも、多くの副葬品もほとんど完全に、盗人の手をまぬがれて、すばらしい姿を現わしたので、評判になったのである。
 しかしそのツタンカーメンの墓でさえも、ツタンカーメンの死後まもなく盗賊がしのび入り、なにかの理由で、おそらく彼らの仕業がみつけられて、あわてて盗みを中止して逃げたあとがあるのである。
ジャンル:
科学
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