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(ボネ神父伝13) ◆4-4、最初の布教地・奄美大島

2017-06-15 06:04:55 | ボネ神父様
江藤きみえ『島々の宣教師 ボネ神父』、13

第1部 選ばれた一粒のたね ある宣教師の生いたちと布教

”ガチャン"一異様なもの音と、瞳を刺す強い太陽の光線に、たちまち眠りから呼びさまされた司祭は、ハッとして飛びおきました。遠い世界の果てから一瞬のうちにここまでとんできたのかと思われるほど、現実へのめざめは、かれにふなれな環境をあたえたのです。

 パジャマをひっかけ、めちゃくちゃな光の乱舞するまぶしい表へ出て行った司祭は、そこへぼう然として立ちすくんでしまいました。ー いつのまにかもぎとられた看板がどうにまみれ、祭壇はくつがえされ、十字架は屋根からおちて、わずかにガラスの残っていた窓が、さっきの石つぶてで粉みじんに砕かれていたのです。

 そこへおずおずと、きのうの青年が近づいてきました。

「くそ!なんてことをするんだ……神父さま、かんべんしてください、やつらは野蛮人ですから、キリスト教を邪教だと思いこんでいるのです」。

「・・・・・・・・」。

 涙ぐんだ瞳で、じっと司祭をみつめていた青年の顔にやがて嘆願の色が浮んできました。

「神父さま、どうか帰らないでください、そのうち、きっとわたしがみなをなっとくさせてみせます。かならず神父さまを助けますから!」

 青年は、前の司祭を失った理由がここにあるのだ、と、かんちがいをしていたのです。かれはそのとき、このみじめな光景とは対照的な司祭の故郷を想像しました。ほこりひとつ立たない真直ぐなアスファルトの広い道路や堂々と立ち並ぶゴシック建築、あるいは、空高く黄金の十字架をかかげてそびえ立つ教会の尖塔など、洗練された西欧文化の映像が、キラキラと白く光っている地平線のむこうがわから、遠く浮ぴあがってくるように感じられたのです。

 しかし、そういってかれが顔をあげたとたん、まるでかれのことばをあざけるかのように、パラパラと石つぶてが飛んできて、もう一度破れた窓ガラスを砕きました。

「だれだ!」とっさに両手をひろげて司祭をかばった青年のひたいを、つぎの石つぶてが鮮血で染めました。かれは、目がくらんで、思わず2、3歩よろめくと、前のやぶがかさかさとゆれ、「ワッ!」と歓声をあげて、悪童たちが散ってゆきました。

 宣教師は、しっかりと青年を抱きとめていました。青年は、信者でしたが、たいせっな司祭を失うまいとするその必死の真心が、どうして沈みかけた司祭の心を、ふるいたたせずにおきましょう。

「いいえ、帰りません。困難が多ければ多いほど、反対にわたしの望みも大きくなってゆきます。どうぞ安心してください。島じゅうの人に福音を伝えないかぎり、死んでもここを離れませんから」。かれは、自分の上に注がれてくる神秘的な勇気を全身に受けとめながらいいました。

 ふたりは、相擁して感激の涙むせびましたが、そのときから青年は神父さまの唯一無二の助手となって、司祭館にとどまり、伝道士と、炊事のしごとを一手に引きうけることとなりました。
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