気まぐれ徒然かすみ草ex

京都に生きて短歌と遊ぶ  近藤かすみの短歌日記
あけぼのの鮭缶ひとつある家に帰らむ鮭の顔ひだり向く 

短歌人5月号 5月の扉

2015-05-02 19:15:49 | 短歌人
死の床のごとくにふたつの手を組めば仰向けになることまた愉し

神経はただ口中にあつまりてここに無防備のわれが在るのみ

(原田千万 鬼胡桃)

歯抜けだとどうして間抜けに見えるのか仮歯を入れて謹慎したり

わが猫のけむりを失ふくらゐなら前歯一本惜しくもあらず

(大室ゆらぎ 猫と前歯)

前歯一つなくしてわかる 私はこんなにたよりない人

からだには秘密があまりに多すぎて医師はライトを時おりずらす

(滝田恵水 消毒終えて)

治療中置き所なきこの舌を意識するとき存在は増す

マスクした顔しか知らぬ歯科医師と三十年のわれの年月

(関谷啓子 舌の存在)

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短歌人5月号、5月の扉より。題詠*歯の治療を受けながら詠む歌。

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