Motor Rock Life!!南方見聞録

Cannonballrush!!Vo/g,Captain,JerryのMotorRockな徒然帳。

train

2017-04-18 16:53:28 | 日記
小さな男の子が、父親と一緒に天気のいい日曜日、
公園に向かっていく姿を見た。

まだ冬が春へ変わろうとしかけてる時期。

いつも通り、ご近所との騒音貿易摩擦を避けるため自宅から離れた場所でエンジンをかけ、ゆっくり暖気運転をしながらグローブをはめている横を、

その親子は楽しそうにあるいていく。

6歳くらいの男の子は、止まりそうなアイドリングを咳き込むように暖気運転してるアメリカ製のVtwinより、

手に持っていた新幹線の形をしたお菓子の入れ物と、お父さんとの会話に夢中みたいだ。

お父さんに一生懸命。新幹線の種類を笑顔で話す男の子。

その男の子より笑顔で、その話を聞くお父さん。

多分…俺より若いお父さんだろなぁ。

親子は田舎の道路を横断し、午前中にしては久々に寒さが和らいで感じる景色の中をゆっくりあるいて行った。


ヘルメットを被りサングラスをかけ、暖気運転のアイドリングを少し下げ、踊り出すように田舎の国道へ走り出す。

ノンビリとした景色の中で、さっきの親子を思い出す。

俺も電車が大好きだった…小学校4年生までは…。



俺が育った静岡県の磐田市は、当時…今から約35年以上前には、まだ磐田郡だった。

そこにある豊田町は、絵に描いたようにのどかで何もない遠州の田舎そのもの!

天竜川の向こうには浜松市があり、少し南下すれば太平洋。

自然には事欠かない、ほんとに素敵な場所で、四季に合わせて沢山の表情をみせてくれる。

そんな豊田町で俺を虜にしたのは、家の北側すぐそばを走る東海道本線!と、南側を走る新幹線。

電車を見るのが大好きで、貨物列車の車掌さんに手を振ってみたり、珍しい機関車や、10両以上の東海道線のオレンジとグリーンの車両を眺めたり、
新幹線の架線が火花を立てる姿を興奮して見つめてたんだ。

なかでも1番のお気に入りだったのは、今は廃止されてしまったブルートレイン。寝台列車だ。

長距離を宿泊可能な様々な機能と装備に溢れたブルートレインは、決まってカッコイイ機関車に牽引されて目の前を駆け抜けていく。

俺はあのブルートレインの車掌さんになりたい!

磐田駅の前にある商店街で鉄道大百科なる本を買ってもらい、毎日穴が開くくらいに憧れて、憧れて、

でも、当時、豊田町は駅などなく、通過していくだけ。
いまでこそ、豊田町駅なる物ができたが、

あの頃は、磐田駅までいかなければ電車には乗れなかったし、
新幹線は浜松までいかなくては止まっているところも見ることが出来なかった。

もちろん。小学校二年生の俺にはせいぜい小さな自転車が関の山。

学区内でさえ大宇宙に感じていた頃だ。


親父は仕事がら週末はほとんど家にいない。
レースのカレンダーや、テストカレンダー、海外遠征など、平日もゆっくり話す時間はなかなか作れないくらいハードに働いていた。

お袋と小さな弟と、家の窓から眠る前に夜の田んぼの向こうを走る貨物列車を見ていた思い出が蘇る。
美しかったよ!

まるで銀河鉄道みたいに、

機関車に、引かれた勇ましい貨物列車は、レールの音をリズミカルに響かせて、

眠る前の俺のハートをいつもワクワクさせてくれていた。


そんな親父となかなかゆっくり出来ない時期が続いた8歳のある夏休みの夜、

家族4人で久々に晩御飯を食べていると、親父が俺に話しかけてきた。
「なぁ、明日、お前の大好きなブルートレインを見に行こうか?」

驚きでミートボールを飲み込んでしまいそうになりながら!目を丸くして頷きながら、親父の話を聞いていた。

「明日な、朝4時に浜松駅にブルートレインの銀河ってのが15分くらい停車するから、早起きできるなら連れてってやるよ」

俺は、早起きのなかでも究極に近い朝3時起きをするという条件のもと、
憧れの!あの、憧れのブルートレインに出逢うチャンスを手に入れた!しかも、親父と一緒にだ!

嬉しかった。

ほんとうに嬉しくて、楽しみで、色々ワクワクし過ぎて全然眠れない!

夜9時過ぎになってやっとまだ見ぬ夢のブルートレインの姿を想像しながら…眠りについたと思う…

翌朝、3時。
親父に揺すられ、目を覚ました俺は、寝ぼけたまま顔を洗い、まだ暗い夏の夜の中を、親父の車の助手席で浜松駅に向かって行った。

だんだんテンションがあがり、久々の親父との時間の中、
夢中になって電車の話をしていたよ!


新幹線の話! 貨物列車のカッコイイ姿の話。

親父は笑顔で嬉しそうに俺の話を聴いて、相槌をうちながら、ブルートレインの事も説明してくれた。

電車の事を話続けて浜松駅に到着する。

ホームに入れる入場キップを買う時には興奮で笑顔が溢れまくっていたはずだ。
まだ自動改札なんてなかった時代。

駅員さんが笑顔でキップにカットを入れてくれた。
大事に、大事に、大事に!そのキップを握りしめてホームへ親父と手を繋いで向かう。

ガランとした明け方のホーム。
東の空が少し明るくなりかけていた。

そこへ、


銀河!のヘッドマークを輝かせた機関車に引かれて、ブルートレインが目の前にゆっくりと滑り込んできたんだ!

危ないから、と俺の手を握りホームの後ろへ引っ張る親父に、凄い!凄い!と連発しながら、

目の前で停車した銀河の扉が開く音を聞いていた。
15分の停車中、色々な補給や、運転手の交代などがある。近くにいた駅員さんが、ブルートレインに目をまん丸にして親子で見つめてる俺たちに気づいて声をかけてくれた。
「中、見てみる?少しだけならいいですよ」

親子で車内へ!

親父の手を引っ張りながら憧れのブルートレインの車両の通路を歩いていく!

そこには、

磐田駅で買ってくれた鉄道大百科と同じ光景が広がっている!

興奮から声が大きくなり、
親父に一生懸命、アレは何で、コレは何をどうするヤツなんだよ!と説明しながら、苦笑いしながらも親父も嬉しそうに、

親子でのブルートレイン体験はわずか5分足らずで終わった。

でも、俺には永遠にも感じる感動と興奮がいっぱいの時間!


しばらくしてホームのアナウンスが流れ、ゆっくりとブルートレイン銀河が、朝方の東の空へ向かって出発して行った。最後尾の客車のライトが赤く光るのを見つめて、見えなくなるまで、なぜか一生懸命、手を振りながら

もう一方の手は、親父の手を握りしめてた…。


明るくなった夏の朝の国道を走り、天竜川を渡り磐田へ帰る車内でも親父とずっと話をしてたよ。


今でもしっかり頭に焼き付いてる。

今となっては、ブルートレインより、

連れていってくれた親父の事が頭に焼き付いてる。

楽しかった。

純粋に楽しくて、ただ楽しくて、

たった5分だったかもしれないあの時間が眩しくて、

ずっと、ずっと覚えてる。




きっと、何気ない時間に見える、さっきの親子にも、

もしかしたら…いつか、ずっと記憶の中で輝く最高の親子の時間を、今、過ごしてたんだろなぁ…


右手で新幹線のおもちゃ、左手でパパの手を握って、嬉しそうに話す男の子の姿に、


なぜか…


少し涙が止まらなかった…。




最新の画像もっと見る

コメントを投稿