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悪性胸水予防治療Talc(タルク)がエンドスタチン分泌を促進

2007-06-13 | 支持療法
NCI薬剤情報Talc」、「Talc2
    

乳児のオムツかぶれなどに何十年も用いられてきたタルカムパウダーは、悪性胸水再発予防薬としてFDAに承認されている。腫瘍の血管新生に対する弾丸と考えられる血管新生阻害ホルモン、エンドスタチンの分泌を促進して、肺癌の増殖を遮断する追加効果があることをフロリダ大学医学部の研究者らが6月6日発表した。
タルクは腫瘍増殖を遅らせ、実際に腫瘍量を減少させ、いくつかの症例では完全に腫瘍を消滅させた。
この70年間、転移肺癌に伴う呼吸障害にはミネラルが用いられてきたが、最近になってタルカムパウダーが有効であることが発見された。全患者の約半数が、肺の表面に悪性胸水と呼ばれる液が溜まる。その胸水は肺を圧迫し、呼吸を弱め、患者は呼吸が短くなり大変苦しむ。胸水が起こるのは、癌が体全体に循環していることを表しており、予後はよくない。
医師らは、胸水が溜まりやすい肺と胸壁のあいだの空間を予防的に閉じるため、接着剤の役割のTalcを注入する。Talcは組織を刺激して、わずかに磨耗させる。時間がたつと、両表面が永久的にくっつく。胸腔鏡を用いたこの治療は、ヨーロッパでは広く行われているが、米国ではあまり進まず、外来で日常的に行われているのはごく一部の施設である。原因はその治療技術のためだと思われる。

医師らは、Talcの胸腔鏡治療を受けた患者が、予測より18ヶ月も長く生存することに気がついた。原因を突き止めるため、アントニー医師は、16人の治療前後の胸水を調べたところ、驚くべきことが判明した。
治療後1日以内に、健康な肺細胞から分泌されるエンドスタチンの10倍がこれらの患者らでは分泌されていた。エンドスタチンは、血管新生を阻害し、アポトーシスを促進する。エンドスタチンは1997年に発見された有望な癌の治癒に導く物質であったが、臨床では思うような結果が出せずに終わったのは、その半減期があまりに短く、体内に注射された後に分解してしまうからではないかと思われる。「われわれの治療では、胸膜細胞自体にこのエンドスタチンを分泌させるのだ。」しかも、Talcの効果は長く続く。
「このような安価で容易に使用できる古くからの製品が、患者の生存に大きな恩恵となるのは驚きである。」
UF原文記事


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