信じれば真実、疑えば妄想…

季節は巡り、繰り返しと積み重ねの日々に、
小さな希望と少しの刺激で、
今を楽しく、これからも楽しく

妄想劇場・番外編・「八 音 琴 」

2016年12月07日 | 妄想劇場

妄想劇場・番外編

信じれば真実、疑えば妄想……

 

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「八 音 琴 」

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数日後、蘭華の新しい生活は始まっていた。
蘭華は会社をすでに辞め、大学に通い出していた。
毎朝、蘭華は福田と一緒にアパートを出て、
大学の授業が終わると、夕食の食材を買い、
アパートに戻った。
そして、掃除、洗濯をし、慣れない日本料理を作って
福田の帰りを待つのであった。

蘭華は、福田を自分の父親と重ねて見ていた。
自分を置いて突如として消えていった父親であったが、
あの優しさや温もりは、ひと時も忘れてはいなかった。
蘭華の日本語も、日に日に上手くなっていった。

蘭華は自分の知らない福田の話を聞いている内に、
福田を人間として尊敬する様にもなっていった。
「このまま、お父さんになってほしい。」
こう願っていた蘭華であったが、いつしか蘭華は
福田の求めを拒む事の出来ない身体へと
変わっていった。

同時に、福田にとっても蘭華は、ただの遊びでは
なくなっていた。
親子ほどの歳の差ではあったが、互いにそれを
気にする事など出来ない生活を送っていた。
しかし、福田はいつか、日本に戻らなければならない。
定年が近づくにつれ、蘭華との別れは現実味を
帯びてきた。

日本に蘭華を連れて行きたい。しかし、
福田にはその術が無かった。日本には妻がいる。
蘭華と結婚なんか出来る訳が無い。
養女にする方法もある。しかし、
妻はそれを許すことは無いだろう。
福田は、毎晩、自分の腕の中で眠る蘭華の
寝顔を見ながら、悩み続けるのであった。

「所詮、金で買った中国女。こいつもきっと、
独りで生きて行かれるさ・・・」
福田は自分にそう言い聞かせていたものの、
腹をくくる事は出来ず悩み続ける毎日であった。

福田は仕事上、上海で独立した日本人に
出会うことが多かった。
彼らは皆、貿易会社や貿易コンサルタント業を
興していた。そこで福田は良い案を思いついた。

蘭華と二人でこの上海で会社を興し、
独立するのである。
そうすれば、誰はばかる事も無く、堂々と
蘭華と一緒に居られるのだ。
福田には、長年培った人脈があった。
それを利用すれば、必ず事業は成功すると言う
確信もあった。

福田「なぁ、蘭華、わし、独立して会社を創ろうと
思うとるんや。どや、蘭華もわしと一緒にやらへんか?」
蘭華「それ、何ですか? 私、解りません。」
福田「心配いらへんって・・・。蘭華の名前とわしの名前で
会社を創るんや。どや、二人で儲けようや。
毎日、いい服、着られるで。世界中、旅行にも行かれるで。
中国人、何人か雇うて、会社、大きくしよや・・・」

その時の蘭華には、それがどんな意味を持つのかは、
全く理解出来なかった。但し、福田が、何か、
自分の会社を興すことは理解したが、その後、
大きな出来事を自分が背負う羽目になろうとは、
想像すら出来なかった。

福田は、自分の蓄えを全てつぎ込み、
上海で会社を興した。
中国国内で日本人が会社を興すには、大変、
手間の掛かる事だったが、どうにか事務所に
看板を掲げる事が出来る状態にまで漕ぎ着けた。

会社の名前には、蘭華の一文字を加え、
蘭福貿易有限公司とした。
また、福田は生涯のパートーナーとして蘭華を
揺ぎ無い様、蘭華を重事として役員に据えた。
当時の蘭華にとっては、それがただ単に、自分の名前を
貸すだけだと思っていた。

さんざん世話になっているし、躊躇する理由など
蘭華には持ち合わせていなかったのだ。
それは、上海をはじめ、中国国内が好景気に沸く、
ある秋の出来事だった。・・・

恋敵

蘭福貿易有限公司は、設立当初から事業が
上手く進み出した。
福田は、会社務めで培った人脈をフルに活用し、
大きな金額の取引を絶え間なく続けていた。
蘭華は、絶えず福田に仕事の手法を教え込まれていた。
蘭華は大学で貿易も勉強していたのだが、
実際の仕事と勉強での知識には、かなりの隔たりがあった。

それでも蘭華には、「自分の会社である」と言った
誇りを持っていた。それは、
福田からの帝王学的教えに、かなり影響されたものだった。
しかし、蘭華には自分が「会社の役員」であることが
まだ解っていなっかた。

福田は、従業員に蘭華と自分との愛人関係を
知られない様にする事にも必死であった。
会社には、福田、蘭華以外に六名程の中国人社員がいた。
皆、年齢は蘭華より上であった。従業員は、
まさか蘭華が会社の役員であるとは思ってもいなかった。

しかし、会社にとって一番重要な金銭管理を
蘭華にだけに任せ、金魚鉢の様なガラス張りの
役員室にいつも二人で居る姿を目の当たりにされると、
二人はタダの関係では無い事ぐらい、
誰にでも察しが付いていた。更に、

福田の不在時、社員同士で会社や福田を
批判しようものなら、間髪入れず、蘭華は
反論するのであった。
そんな日々が続き、蘭華と従業員との距離は次第に
離れていった。結局、会社設立時に入社した従業員は
居なくなり、その後も社員は一年も経たずに
入れ替わっていく有様であった。

しばらく会社は、表向きには平穏であった。
そんな中、一人の男が仕事で会社を訪れた。
男の名は木村と言い、三十三歳の独身だった。
長身の木村は、歳も格好も福田とは全く似付かない
サラリーマンであった。
事務所の応接室で福田と木村が話を始めた。

福田「やぁ、木村君、久しぶりやね。
社長は元気でっか? 会社、儲かってます?」
木村「えぇ、おかげ様で、ぼちぼちでんな。」
福田「蘭華、お茶や、お茶ちょうだい・・・」
木村は蘭華にとって、今までに見たことも無い
男性だった。ハンサムでスタイルは良く、まるで
テレビから出て来たかの様な木村に言葉を失っていた。

蘭華は早速、来客の木村にお茶を出したのだが、
いったい自分が何をしているのか、その時の
蘭華には記憶が無かった。
来客があると、福田は必ず蘭華を接待に連れ出した。
美しい蘭華が自分の秘書である事を客に見せつけ、
それが自慢にもなっていた。

この晩も福田は、木村との食事に蘭華を連れ出した。
蘭華はテーブルの向かいに座る木村から、
一時たりとも目をそらすことをしなかった。
蘭華は、生まれて初めて味わう胸の高まりを
感じていた。

木村「蘭華さん、君、日本語、上手やね・・・。
これ、僕の名刺。君の名刺も頂けますか?」
福田「ほら、名刺やて、はよ渡さんかい。」
蘭華は、微かに震える手で、木村に自分の
名刺を差し出した。蘭華の名刺には役職は無く、
ただ、「企画部」という文字だけが印刷されていた。
当然、まだ木村には、蘭華が福田の愛人であり、
会社の役員にさせられている事など想像も
していなかった。

その晩の蘭華にとっては、生まれて初めて味わう
胸のときめきであった。さすがにその夜だけは、
福田の誘いに蘭華は応じることが出来なかった。
あくる日の朝、蘭華は、いつもの様に福田より
三十分遅れて同じアパートを出た。
そして、いつもの様に他の従業員に挨拶をしながら、
福田の待つ金魚鉢の中へと入って行った。

蘭華は、目の前に座っている福田に気付かれない様、
昨晩、木村から受け取った名刺をそっと自分の
名刺入れから取り出した。そして、
名刺に書かれている文字を一字一句に目を追った。

木村の名刺には、メールアドレスが書いてあった。
蘭華はそのメールアドレスを頭の中に
叩き込んだのだった。そしていつしか、
蘭華と木村との間で、メールのやり取りが
始まる様になっていった。・・・

その後も木村は、上海を訪れる事が多かった。
その度に蘭華と木村は、福田には秘密で
デートを重ねていた。
福田は土曜日も事務所に出ていたので、蘭華が
木村と会えるのは、土曜日の午後三時までと
決まっていた。

当時の蘭華は、毎週土曜日の午後三時からと、
毎週日曜日のお昼から、専門学校で経理事務の
勉強を受けていたのだった。
毎回のデートでは、木村が学校の入口まで蘭華を送り、
互いに別れを惜しんだのであった。

その日も蘭華と木村が上海で会っている時だった。
福田は何気なく蘭華に電話を掛けた。
しかし、蘭華の電話は電源が入れられていなかった。
次に福田は、アパートの電話にダイヤルした。
しかし、そこの電話を取る者は誰一人いなかった。

「あいつ、いったいどこに行っとるんやろ・・・」
次に福田は、仕事の事で木村の会社に電話を掛けた。
土曜でも日曜でも夜中でも関係なく、
福田は自分の都合だけで行動に出る性格であり、
この時も土曜日の休日でありながら相手先に電話を
掛けたのであった。

従業員の居ない相手の会社では、社長の高橋が
自ら福田の電話を受け取った。
福田「毎度です。先日の見積り、出来はりました?」
高橋「あれ?見積りは、木村に持たせましたが・・・、
今日、そちらに行ってませんか?」

福田の脳裏に、すぐさま、蘭華と木村のことが浮んだ。
福田はつかさず、蘭華のパソコンを立ち上げ、
メールの履歴からフォルダ全てに至るまで見始めた。
そこで福田が目にしたのは、度重なる木村と
蘭華のメールのやり取りだった。・・・

つづく

Author :夢庵壇次郎
http://www.ne.jp/asahi/muan-danjiroh/jp/



歌は心の走馬灯、歌は世につれ、世は歌につれ、
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