新しい風<公益社団法人 宮崎市郡医師会のBLOG>

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胃がんリスク評価ABC分類の判定基準について(会報No1,084)

2017年06月16日 | 一語一話
宮崎市郡医師会胃がん検診委員会 尾上 耕治(2017-6-15)

 最近、胃がんリスク評価ABC分類(以下ABC分類)に関して、ピロリ抗体検査の判定基準を変更しようという提案がでました。A群のうちピロリ抗体値3.0~9.9U/mLの陰性高値群は偽陰性が多いため、カットオフ値を変更し、3未満を陰性、3以上は陽性にしようというものです。宮崎市郡医師会胃がん検診委員会にて協議の結果、当面の間は変更を行わず現行のままとしましたのでご報告いたします。
 まず、2015.6.30日本ヘリコバクター学会より以下の注意喚起がありました。「血清ピロリ菌抗体検査結果で、カットオフ値未満(陰性)で低値ではない場合{E プレート‘栄研’H.ピロリ抗体 II(以下EIA)では 3.0-9.9 U/ml の場合。他キットでは不明。}、現在や過去の感染例が相当数含まれるので、胃がんリスクがないと判定しないで下さい(胃がんリスク評価の「A 群」と判定しないで下さい)」。それを受けて2016.11.25認定NPO法人胃がん予知・診断・治療・研究機構は胃がんリスク層別化検査運用研究会の見解をもとに「ABC分類におけるキットEIAの判定基準を3U/mLとすることを提案します。すなわち、3U/mL以上10U/mL未満の陰性高値群をリスクありのB群として扱うこととします。」と提案しました。陰性高値群はB群扱いとなり、全員内視鏡検査を受け、除菌する場合は尿素呼気試験か便中抗原検査にて再検査での確認が必要となります。
 そこで、2017.1.20宮崎市郡医師会胃がん検診委員会と宮崎市健康支援課との共同会議を開催しました。その結果、提言はEIAに限定したものであり他キットでは不明であること、当医師会のキットはラテックス凝集免疫比濁法(以下LIA)でキットが異なること、宮崎市郡医師会検診センターの検討(末文参照)によりLIA法は陰性高値群だけでなく性・年齢にても偽陰性は異なるという結果を得たことおよび混乱を招くことを避けるという理由で、当面の間は変更を行わず現行のままとしました。ただし、「A群には少なからず偽陰性が存在するので、A群と判定されても一度は内視鏡検査もしくはX線検査にてピロリ未感染であることを確認すべきである。」との見解を得ました。A群と判定されても一度は内視鏡検査などにて確認するようご指導くださいますようお願い申し上げます。
 なお、宮崎市ABC分類の2013から2015年度の受診者数は各々9,575人、12,981人および9,989人で3年間の合計32,545人でした。発見胃がん人数は各々31人、33人および30人で合計94人でした(最初の1年間の結果は宮崎県医師会誌2015年3月号に掲載、2年間の発見胃がんの詳細は宮崎県医師会誌2017年3月号に掲載)。一方、1996より2015年度までの20年間で行ったX線による宮崎市郡医師会胃がん個別検診の発見胃がん人数は96人で、ほぼ同数です。X線検診20年間でやったことをABC分類はわずか3年で行ったことになります。この功績は大きいと思います。しかし問題点も確かにあります。遺憾ながら、A群と判定され、それ以降胃がんが見つかった人が2名(陰性高値1名、陰性低値1名)います。また精度管理の困難性が問題としてあげられていますが、このことに関して「胃がんリスク評価ABC分類受診後5年間の検査受診状況」を検討し日本消化器がん検診学会誌2017年3月号に掲載しました。今後も検討して参りますので、よろしくご協力ご支援お願い申し上げます。

参考資料
「ラテックス免疫凝集比濁法(LIA)の測定キットを用いたABC分類のピロリ感染偽陰性と偽陽性の検討」
宮崎市郡医師会検診センター尾上耕治
【背景】Eプレート‘栄研’H.ピロリ抗体Ⅱを用いた胃がんリスク評価(ABC分類)における偽陰性が問題になっているが、他のキットに関しては不明である。今回我々は栄研のラテックス凝集免疫比濁法(LIA)の測定キットを用いて、画像から推定したABC分類のピロリ感染偽陰性と偽陽性を検討した。
【対象と方法】2015年度に、栄研LIAの測定キットを用いたABC分類と胃X線か内視鏡検査を受けた612症例(除菌群を除く)を対象とした。ABC分類のA群を陰性、BCD群を陽性とし既感染も含めた。画像は、木村・竹本分類C2以上の萎縮を感染ありとし、X線はヒダの異常を、内視鏡は黄色腫等も感染ありとした。A群とピロリ抗体値3.0から9.9の陰性高値群の偽陰性率とBCD群の偽陽性率を年齢階級・性別に検討した。
【結果】A群の偽陰性率は15.0%(57/379)であったが、加齢に伴い増加し、また男性23.8%(35/147)は女性9.5%(22/232)より高かった。さらに陰性高値群は43.0%(37/86)と特に高かった(50歳以上の男性、60歳以上の女性は50%以上)。BCD群の偽陽性率は7.3%(17/233)であったが、年齢・性に有意な結果は得られなかった。
【結語】LIAキットを用いたABC分類は、年齢、性および陰性高値群別に偽陰性率は大きく異なるので、各要因別にカットオフ値変更の検討が望まれる。しかし、カットオフ値を変更しても偽陰性は生じるので、A群でも一度は内視鏡検査もしくはX線検査を受けるよう指導すべきである。
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