新しい風<公益社団法人 宮崎市郡医師会のBLOG>

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あはき療養費も受領委任(代理請求)可能に? 同意書作成の知識と理解の重要性(会報No1,086)

2017年07月15日 | 一語一話
宮崎市郡医師会 理事 尾田 朋樹(2017-7-15)

 厚生労働省は平成29年4月26日の社会保障審議会医療保険部会において、柔道整復療養費と同様にあん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費(あはき療養費)も2018年度中に「受領委任制度(医療保険への代理請求)」を実施できるよう進めていくと報告しました。既に受領委任制度が認められている柔道整復療養費での不正が相次いでいるとして慎重意見が強かったのですが、専門委員会の議論を経て「2017年度中のできる限り早期に行われる不正対策の具体的な制度設計の内容が適切なものであることを見極め、確認することを前提」として、あはき療養費でも代理請求を認める方向で議論が進んでいます。
 本来、医療保険から支給される療養費(療養費制度)は、被保険者(患者)が一旦全額を支払った後に自己負担分を除いて保険者に請求する「償還払い」が原則です。保健医療制度が保険医療機関を介して被保険者(患者)に医療行為を給付する「現物給付制度」であるのに対し、療養費制度はやむを得ない事情で被保険者(患者)が「非保険医療機関」に支払った費用を保険者(医療保険)に請求し返還を受ける「現金給付制度」です。柔道整復療養費は施術者や代行業者による「受領委任(代理請求)」が認められており、地方厚生局による指導監督が十分に機能していない状況で、「白紙委任状」や「混合診療(施術)」が可能であることなどから、様々な問題が指摘されています。
 「医業類似行為」に対する保険適応は「はり・きゅう」を除きかなり限定的で、柔道整復の場合、医師の同意書は必要ありませんが、認められるのは「打撲・捻挫・骨折・脱臼」の急性期のみです。一方であはき(あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう)は医師の同意書が必要で、保険適応の判断は医師の裁量に委ねられています。知っておくべき同意書作成のポイントは以下の通りです。
1、健康保険の適応となる「医業類似行為」は医療の給付に代えて、あるいは補完的役割を果たすものであり、被保険者(患者)に医療との選択の自由を与えたものではないこと。
2、同意を求められる医師は原則として「当該疾病にかかわる主治の医師」であること。
3、専門外であることを理由に「無診察の同意」は禁止されていること。
4、往療(往診)は完全な「寝たきり状態」か「介助者が車椅子を押さないと身動きが取れない状態」に限られ、認知症や精神疾患の有無、家族の送迎が必要などの「事情」は認められないこと。
5、療養費の支給は、「やむを得ない理由により保険医療機関以外での診療を受けたとき、又は保険者が保健医療の給付が困難であると認めた場合」に限られること。

 「あん摩マッサージ指圧」の適応症は「麻痺による筋萎縮・関節拘縮」のみであり、目的は筋力増強および関節可動域の改善です。慰安や疲労回復目的、つまり「気持ち良いから」は認められず、身体の機能障害が前提であるため高齢者の場合は「要介護度」との整合性が求められます。特に「往療料」は基本料である1,860円に加えて距離に応じた最高2,400円の加算が施術の都度に認められ、「往療に同意」するということは、タクシー代に相当する往療料を医療保険から支出する妥当性を医師が認めたということになります。
 今回のあはき療養費に対する受領委任制度の拡大において特に問題視されているのが、「はり・きゅう」における健康保険の適応症が6疾患(神経痛・リウマチ・頸肩腕症候群・五十肩・腰痛症・頚椎捻挫後遺症)による「慢性的な疼痛の鎮痛」であることです。つまり保険適応の制約が無いに等しく、往療(往診)の可否についても医師の同意は不要とされているのです。
 厚生労働省の発表する「国民医療費の動向」には、保険医療機関(病院、診療所)の外来医療費に「柔道整復・あはき」療養費が含まれて計上されています。近年、柔道整復療養費だけでも小児科・皮膚科・産婦人科・耳鼻科の診療所医療費より高額であり、特に「あはき」の療養費は件数・金額ともに急増(毎年20-30%の伸び率)しました。今後はこれまで以上に同意書を作成する医師に相応の「責任と見識」が求められることになるでしょう。国民健康保険制度の適正かつ健全な運営には、療養費制度に対する医療側の十分な知識と理解が必要なのです。
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