雑木帖

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ケイタイ──過ぎたるは及ばざるが如し?

2007-01-28 01:28:12 | 政治/社会
 毎日新聞の『ネット君臨』の記事はちょっと新鮮だった。内容がどうというより、今の日本、また世界中の社会におけるネットとのかかわりの大きさを思えば、なぜ新聞はこれまでこういう社会のネットとの関係性を正面からとりあげる記事を紙面でさいてこなかったのだろうかと素朴な疑問さえいだかせた。

 その中で見開き2ページの26日付の「ネット君臨:第1部・失われていくもの 反響特集」の記事で、読者の次の意見が僕にはちょっと気になった。
 黎明(れいめい)期からインターネットにかかわり仕事をしてきた。最近の携帯の使い方を見て、異常性を感じる。常に携帯を握り締めて一時も離さない人は、確実にネット中毒になっているのではないか。

 長年この世界にいる者は、プライベートでは出来る限りネットとは距離を置くようにしている。でないと、精神的におかしくなると経験的に感じているためだろう。

 個人的には、ネットを使うのは18歳を過ぎてからで十分だ。この考えに賛同しているコンピューターやネットの専門家は多い。その前に相手を思いやる心、コミュニケーションの仕方、自己の確立とかやることはたくさんあると思う。

 ネットでのもうけを考えている第2世代のネット系企業の経営者は、ネットの暗黒面に一般の人を巻き込もうとしているような気がしてならない。彼らをさも技術があるかのように持ち上げるマスコミにも反感を持っている。
 僕は携帯電話はきらいである。だからその僕の考えることは少しバイアスがかかったものになっているのかもしれないが、それを差し引いても、昨今の携帯電話事情は「異常」とはいえないか。

 これはテレビの「バラエティ討論番組」で見たのだが、学校では授業中でも携帯のチェックをしている生徒がいるばかりか、休憩時間になるとほとんど一斉に携帯に見入るさまがビデオに映されていた。僕などはこんなのを見ると唖然とする。
 いわゆる「ネット」には好意的な意見を持つ僕でさえ、この状態はちょっと問題ありと思わざるをえない。そうまでして携帯にのめりこんで本当に大丈夫か。
 政府は教育の再生云々といいながら、なぜこういう状況を黙って見過ごしているのだろうか。
 学校の先生はいけないと思いながらも父兄が怖くて何も言えないのだという。何ともものわかりのいい父兄たちだ。しかし、そういう親たちはちゃんと考えているんだろうか。そういった親は自身が電車のなかで、注意を呼びかけるアナウンスを無視し、携帯を使ってはいないか。
 カレル・ヴァン・ウォルフレン氏の『人間を幸福にしない日本というシステム』の文庫版はしがきに次のようなことが記されている。政府が黙っているのは、こういう側面もたしかにありはしないかとつい思ってしまう。
 ここで、一つ注目すべき現象がある。それは、いまや誰もがもち歩いている携帯電話などの新しい玩具が、人びとの注意を政治からそらす役割をはたしていることだ。ここ数年、こうした新しいタイプの娯楽道具が急速に普及し、人びとが注意をそらされて、人生の困難を忘れがちになっている。たとえば、これほど多くの人がいちはやく流行にしたがい、携帯電話を耳に押しつけながら通りを歩いている国は、世界でも日本だけだ。
 ゲーム機がどこにでももち運べるようになって、日本の社会に深く浸透し、ほとんどの人がポケットに入れて歩くようになった。歴史を通じて、ゲームすなわち娯楽は、人びとに政治的な活動をさせず黙ってしたがわせるために利用されてきた。先端技術によってもたらされた最近の新たな娯楽が、日本の人びとの不満をそらす役割をはたしているのは間違いない。また、社会の成熟を妨げているのも明らかだ。結局、日本社会の未来はどのようになるのだろうか。より多くの人が、日本人にはもっとよい社会環境や経済環境がふさわしいと気づき、そのために政治にかかわらなくてはいけないと認識するのだろうか。それとも、多くの人が新しい玩具によって大切な問題から注意をそらされるのだろうか。本書は言うまでもなく、前者を望む人びとに向けて書かれている。
 また彼はこうも書いている。
 もう一つ、変わっていないのは、普通の人びとが日本の政治経済の構造について議論をし、どうすればそのありかたを変えられるか考えることを、当局が嫌う点である。政治エリートは人びとをできるだけ無知のままにしておこうとする。人びとが中産階級としてのよりよい人生を求め、根本的な改革を要求しないようにするためだ。
 インターネット接続、ゲームに限らず、メールの(あえていえば)中毒的な使用状況もときどき新聞の記事には登場する。
 携帯電話も含めたコンピュータ機器全般にいえることだが、「文明の利器は人が使いこなすもので、人のほうが”使われる”ようなことがあってはいけない」。

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