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小倉利丸氏の、朝日新聞が「共謀罪」を論じた社説に対する異論

2006-05-01 20:05:40 | 政治/社会
朝日の社説の最悪なのは、これらの説明を与党側の「言い訳」として説明していない点にある。法案を読むチャンスのない一般読者は、朝日のこの説明を法案そのものと勘違いするでしょう。これでは朝日は与党の代弁者といわれてもしかたがないでしょう。
 これはあとで紹介する、オルタナティブ運動メーリングリスト(AML)に投稿されたメールの一節。

 緊張感の欠けた社説などを掲載するより、新聞の「特殊指定」の時のように、新聞は「共謀罪」に対する読者アンケート調査でもやって、それを記事にするとかできないものか。

…民主党の修正案か自民党案か、という共謀罪を前提とした議論が支配的になると、廃案という主張が一気にふっ飛んでしまいます。その結果、またもや、ターゲットになるのは移住労働者や外国籍のマイノリティということになる。
 このへんは僕は意見は違う。僕の個人的な感触では「共謀罪」とは、マイノリティとかそういうものをいっさい問わず、ともかく官僚が大好きな裁量権を、得意の「どさくさに紛れて」、全市民に対し、盗聴なども含めた「管理」「押さえつけ」に使えるよう最大限に発揮できる法を創設したい、という意図のもとに進められているものという気もする。これは、”財界からも圧力?「共謀罪」”にも書いたように、財界の利益とも合致し、また、邪魔者を排除する法が是非ほしい政治家の意向とも合うもので、だから強行採決を見送るなど、ナイーブになっているように思う。ターゲットの市民に、余計な詮索をなるべくしてほしくないのだ。手品師が、トリックがおこなわれる場所に観客の注意が向かぬように、他のことに観客の意識をそらさせることにも似ているかもしれない。

 以下は、オルタナティブ運動メーリングリスト(AML)の管理人さんの小倉利丸氏の、朝日新聞が「共謀罪」を論じた社説に対する異論。
 ──AMLの投稿の転載。

小倉です。共謀罪が焦点化するなかで出た朝日の社説への私の異論です。(他のMLに昨日ながしたものに加筆しました)

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とんでもない「朝日」の4月28日づけ社説(共謀罪)

朝日新聞が28日づけ社説で、民主党案支持を打ち出しました。私は廃案以外にないと考えていますが、この朝日の社説は、共謀罪の必要を認めたうえで、民主党の対案の線での審議を提起しています。朝日の動向はマスメディア全体にもおおきな影響をもちますから、たいへん危惧しています。わたしはこの朝日の社説には以下の点で反対です。

そもそも朝日の社説は、法案の条文解釈の「政治学」がわかっていません。たとえば、与党案について、社説は

「共謀罪を適用するのは、暴力団などを想定し、「対象となる罪を実行することを共同の目的とする団体」に限定する。罪となるのは、共謀するだけでなく、下見をするといった「犯罪の実行に資する行為が行われた場合」という文言を加える。これが与党案だ。」

と解説していますが、これは、与党の説明をオウム返しにしているだけで、与党の条文解釈の罠にはまっています。

どのような場合であれ、法案を読む上で必要なことは、以下の点です。
・ 法案に書いてないことは政府・与党がいくら口頭や文書で「解説」してもそれを信じてはいけない。法案に書いてないことは、法案ではない。
・ 国会審議の過程で与党側が答弁で行った法解釈(とりわけ野党が受け入れやすい解釈)には何の拘束力もない。
・ 国会で口頭で説明しても法案に明記することを避ける場合は、口頭説明を鵜呑みにしてはいけない。
・ 法案に書いてないのは書けない理由があるからだ、なぜ書けないのかを考えて法案の真意を見抜かなければいけない。

この点をふまえると、朝日の社説は以下の点で間違っています。
・ 共謀罪の適用対象を「暴力団」だと想定しているということは法案のどこにも書いていない。
・ 社説は、団体の限定を「対象となる罪を実行することを共同の目的とする団体」と鈎括弧をつけて説明しているが、このような定義はされていない。法案に書かれているのは、「その共同の目的がこれらの罪又は別表第一に掲げる罪を実行することにある団体に係るものに限る」である。法案では「罪を実行することにある団体に係るものに限る」という意図的に意味をあいまいにした表現をもちいているところに着目してこの法案を読みとらなければいけません。この法案が述べていることは、「罪を実行する目的の団体」という誤解の余地のないものではなく、「罪を実行することにある団体」というなんとでも解釈できる表現になっているのはなぜなのかを社説は見落としている。
・ 「犯罪の実行に資する行為」が下見をするとった行為をさす、というのは与党側の議会対策上の「方便」としての説明にすぎず、法案にはいっさいそのような限定はない。

朝日の社説の最悪なのは、これらの説明を与党側の「言い訳」として説明していない点にある。法案を読むチャンスのない一般読者は、朝日のこの説明を法案そのものと勘違いするでしょう。これでは朝日は与党の代弁者といわれてもしかたがないでしょう。

他方、民主党案もたいへん大きな問題を孕んでいます。民主党案では、越境組織犯罪に限定して共謀罪を適用しようというわけですが、こうした限定をつけたとしても、移住労働者の当事者による組織や支援組織はまるごと共謀罪の適用対象となります。しかも、現在、日本の多くの市民運動やNGOで国際的な連携をとっていないところは逆に非常に少ないと思います。グリンピースやアムネスティのような組織だけでなく、地域で活動している小さな運動体でもなんらかの海外との連携をとっているところは多いといえます。

国連の越境(国際)組織犯罪防止条約そのものができた経緯は、90年代以降急速に拡大し始めた反グローバル化の運動や移民たちの社会運動への抑え込みという意図があったことは明らかで、単なるやくざやマフィア対策の条約ではなく、ポスト冷戦期に登場し始めた新しいグローバルな民衆の運動に対する治安維持の国際法という側面があります。この点を忘れてはならないと思います。くりかえしますが、国際組織犯罪に限定するという妥協案は、限定ではなく、むしろ日本のエスニックマイノロティをターゲットとして監視する差別的な法案になるということであり、隠されたレイシズムであるということです。

さらに、朝日の共謀罪原則賛成のスタンスには二つの大きな問題があります。ひとつは、共謀罪が、戦後日本の警察の基本的な性格を根本から変える恐れがあるということを完全に見落としているという点です。戦前・戦中の警察が治安維持警察として、予防検束など犯罪捜査機関とはいえない性格を強く持っていたわけですが、その反省として、戦後の自治体警察と刑事司法のルールは、発生した犯罪に対する捜査を基本とする法制度の枠組を基本としてきたはずです。共謀罪は明らかにこの戦後の刑事司法の基本原則を覆すことになります。この点を朝日の社説はまったく考慮してない。

もうひとつの問題は、共謀罪と呼ばれる法案が、コンピュータ監視法案と一体の法案として提起されています。なぜ一体のものとして提案されているのかは、すでに別の文章で述べました。(注)後者は明らかに報道に自由、とりわけ取材源の秘匿を不可能にするものであるにもかかわらず、朝日の社説はこの点を考慮して共謀罪を理解していません。これではジャーナリズムが自分で自分の首を縛るようなものです。
(注)
http://alt-movements.org/no_more_capitalism/modules/weblog/details.php?blog_id=18

朝日の社説のように、国連の条約を鵜呑みにし、民主党の修正案か自民党案か、という共謀罪を前提とした議論が支配的になると、廃案という主張が一気にふっ飛んでしまいます。その結果、またもや、ターゲットになるのは移住労働者や外国籍のマイノリティということになる。現在の日本の治安維持体制の傾向からすれば、こうした限定でもよいから共謀罪を成立させることに「メリット」があると考える右派は多いということに私たちは十分警戒したいと思います。共謀罪廃案までがんばりましょう。

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参考

朝日社説 4月28日
共謀罪 乱用の余地を残すな

 犯罪を実行しなくても、何人かで話し合って合意しただけで罪になる。そうした「共謀罪」をつくろうという法案の審議が衆院法務委員会で始まった。従来の政府案に加え、与党と民主党がそれぞれ修正案を提出している。

 麻薬や銃の密輸などの国際犯罪や暴力団犯罪の取り締まりを強めるのがねらいだ。もともと政府が組織的犯罪処罰法の改正案として提出していた。

 これに対し、私たちは社説で、共謀罪の必要性を認めたうえで、「共謀罪の規定があいまいなため、組織犯罪だけでなく、市民団体や労働組合も対象にされかねない」と指摘し、「対象を絞って出し直せ」と主張してきた。日本弁護士連合会などは「思想の取り締まりにつながる」と批判していた。

 与党と民主党の修正案は、こうした批判に応えたものだ。

 共謀罪を適用するのは、暴力団などを想定し、「対象となる罪を実行することを共同の目的とする団体」に限定する。罪となるのは、共謀するだけでなく、下見をするといった「犯罪の実行に資する行為が行われた場合」という文言を加える。これが与党案だ。

 政府案より対象を絞ろうとする姿勢は評価したい。しかし、条文はやはり抽象的でわかりにくい。拡大解釈の余地が消えたとは言えない。

 それに比べ、民主党の修正案はすっきりしている。対象とするのは「組織的犯罪集団」とはっきり書く。対象となる犯罪は国際的なものに絞る。罪を問われるのは、共謀した者が犯罪の具体的な準備をした場合に限る。

 国際的な犯罪集団に対象を絞ろうという姿勢が明確になっている。「自分たちも共謀罪の対象にされるのではないか」と心配する市民は少なくなるだろう。

 政府はホームページで「共謀罪が適用されるのは、暴力団のような組織的な犯罪」「仲間で漫然と相談したり、居酒屋で意気投合したりするくらいでは共謀罪は成立しない」と説明している。

 そう言うのなら、もう一歩進めて、民主党案のように「組織的犯罪集団」しか対象にしないとはっきり書き込むべきだろう。法律はいったんできあがれば、捜査当局によって都合よく解釈される恐れがある。それが怖いのだ。

 ここは原点に戻って考えてみたい。そもそも共謀罪をつくろうという背景には、暴力団やマフィアによる国際犯罪に対抗するため、6年前に国連で採択された国際組織犯罪防止条約がある。日本も署名したが、加盟国になるためには共謀罪などの国内法を整備する必要がある。

 この条約の本来の趣旨を生かすには、いくつかの国にまたがる組織犯罪に限定するだけで十分だろう。

 共謀罪をつくるにあたっては、乱用の余地を残してはならない。国民の権利を大きく侵害しかねないからだ。対象を厳しく限定した民主党案を軸に、国会でじっくり論議してもらいたい。

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