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電動アシスト自転車開発秘話!

2010-08-09 | Weblog
【電動アシスト自転車】乗り物の革命「高価でも必要なら売れるはず」


 初代「ヤマハ パス」(手前)の開発チームメンバー、明田久稔は、後ろに並ぶ電動アシスト自転車後継車種の設計に一貫してかかわり続けている。

 「おじいさんのお墓は急な坂が続く丘にあり、自動車でなければ登れません。だから、なかなかお墓参りに行けなかったのですが、この自転車を買ってから毎日お墓参りに行っています」
 平成5(1993)年、一人の高齢の女性からヤマハ発動機本社(静岡県磐田市)にこう書き記された手紙が届いた。“この自転車”こそ同年、ヤマハ発動機が開発した世界初の電動アシスト自転車「ヤマハ パス」だった。
 自動車やバイクが一家に1台という状況が当たり前のようになった交通大国・日本。最も身近な乗り物と呼べる自転車に至っては、1人が1台を所有していても珍しくない。しかし、このまったく新しい概念の乗り物が生まれ、ヒット商品となることを予想した者は、当時決して多くはなかった。
 パス(PAS)は、ヤマハ発動機が独自開発した新技術「パワー・アシスト・システム」を略して名付けられた。ペダルを踏む力をセンサーが100分の1秒の早さで解析し、脚力に応じてこぐ力をモーターがアシスト。急な坂も平坦(へいたん)な道も一定の走行感覚でこぐことができる画期的な技術は世界に広まり、パスの愛称は電動アシスト自転車の代名詞のように浸透していった。
     ◇
 「極秘プロジェクトがあるらしい。社内でも一切秘密の計画が…」
 当時、スクーターの車体設計を担当していた現ヤマハ発動機PAS事業推進部開発グループ主査の明田(あきた)久稔(56)はこう振り返る。理系の大学院を修了したあと、ヤマハ発動機に入社。スクーターの車体設計一筋で約10年が過ぎていた。「他の仕事がやりたくてうずうずしていた時期に、このプロジェクトチームから誘いがかかったんです」
 「3年で商品化しろ」。開発チームに招集されたメンバー7人に厳しい社命が下った。明田に与えられた職務は車体設計プロジェクトチーフ。「従来の自転車の概念が通じなかった。重いバッテリーやモーターをバランスよく細いフレームに収めなくてはいけないのですから。これから作るのはバイクでも自転車でもない。まったく違う乗り物だと覚悟しました」
 世界的地位を築き上げたバイクメーカーにとっても、電動アシスト自転車の開発は“乗り物の革命”とも呼べる困難なプロジェクトだった。
 明田らが求めた免許不要の電動アシスト自転車の概念は、これまでになかったものだ。長い歴史と多様な自転車文化を誇り、「モペット」の愛称で親しまれたペダル付き原動機付自転車などが市民権を得ていた欧州にさえ、参考となるモデルが存在しなかった。
 試作車を何度も作り、試乗実験を繰り返して、ついに初代パスが完成する。明田らに自信はあったが、14万9千円の価格は従来の自転車に比べて高すぎた。「果たして売れるのか」と不安がよぎった。しかし、その心配は杞憂(きゆう)に終わる。
 「最初の年は地域限定で販売。1千台売れたら上出来と見込み、自転車メーカーにこの数字を話したら『そんな需要があるはずがない』とあきれられて…」。結果は予約が殺到し、3千台を増産してその年のヒット商品として注目を浴びた。
 既成概念を打ち破る乗り物としてデビューした電動アシスト自転車は、多くの人々のライフスタイルや交通法規など、後にその国の社会環境までを変えていくことになる。
冒頭の手紙の女性のように足腰が弱くなった高齢者の行動範囲を広げる夢の乗り物として。子供を乗せて保育園に通う忙しい母親を支援する頼もしい乗り物として。電動アシスト自転車は外出に消極的だった人たちの生活をも“アシスト”する必需品として認知されていく。さらに近年、エコブームの欧州各国ではガソリンを消費するバイクに変わり、パスで培った技術を独自の電動自転車の開発に応用。日本に“逆輸入”される欧州製の電動アシスト自転車の数も増えつつある。

 「必ず電動アシスト自転車の時代が来る」。東京都目黒区に電動アシスト自転車専門店「ASSIST(アシスト)」がオープンしたのは平成17年。今や取り扱う車種数は2倍の約30種に。売り上げも倍増し、勢いは止まりそうにない。店長の渡辺正樹(40)は「当時、専門に扱うのはかなり思い切った判断で、正直ここまで人気が広がるとは予想していなかった」と語る。
 不況だ、物が売れない、といわれる厳しい経済環境の中で、10万円前後する電動アシスト自転車の売り上げ台数は10年前の15万台から、今年度中には40万台を突破する見込みだ。「高価でも必要だ」。こう思わせる製品であればどんな時代でも売れるはず。電動アシスト自転車は物作りの原点も教えてくれる。

【親子3人乗りを可能にした電動アシスト自転車】

 双子を乗せて保育園に通う全恵里は「もう手放せません」と話す
 
■3人乗りOK 改正“後押し”
 東京の南西部に位置する目黒区は起伏に富んだ地形で坂道が多い。坂は情緒ある町並みを形作るが、日々の通勤通学に苦痛を感じる人もいるだろう。真新しい電動アシスト自転車の前部の椅子(いす)に3歳の女児、琉那、後部には3歳の男児、壮琉が座る。幼い双子を乗せ、母親の全恵里(31)が、軽やかにペダルを踏み坂道を駆けあがる。電動アシスト自転車に乗り始めたのは6年前。幼児2人乗り対応の最新型に買い替えたのは3カ月前だった。自宅から幼稚園まで自転車で約10分。全は「坂が多いので大助かり。最新型はアシスト機能が強化され、3人乗りでもふらつかずに坂を上れます」と、笑顔で話す。
                   ◇
 自転車に関する交通ルールが大きく変更された。昨年3月、警察庁が招集した「『幼児2人同乗用自転車』検討委員会」は、新たな法規の基準となる「幼児2人を同乗させる場合の安全性に配慮した自転車に求められる要件」をまとめ、発表した。これを受け、各都道府県では公安委員会規則を改正・施行。大人が幼児2人を乗せる、いわゆる自転車の3人乗りが、各自治体で相次いで認められたのだ。
 主な条件は、幼児2人を乗せても十分な強度を有する▽走行中にハンドル操作に影響がでるような振動が発生しない▽発進時、走行時、押し歩き時および停止時の操縦性、操作性および安定性が確保されている-など。
3人乗りの要望は、子を持つ母親たちの間で根強くあった。そして、電動アシスト自転車は、子供を2人乗せても、安定した走行が可能だ。つまり、3人乗りの認可という交通ルールの改革を、電動アシスト自転車の存在が、後押ししたともいえるのではないだろうか。
 「大人の2人乗りを違反と知らない人も多い。電動アシスト自転車の普及は、これまであいまいだった自転車の交通法規を多くの人に知らせるいいきっかけになると思う。3人乗りの認可は、自転車の交通ルールの重要さを意識させる効果もあるのでは」。こう話すのは、「グッド・チャリズム宣言」プロジェクトの広報担当、韓(はん)祐志(45)。同プロジェクトは3年前、元F1レーサーの片山右京をリーダーに結成された。行政や民間企業の自転車好きによる集団だ。
 一方で、「自転車大国の欧州では自転車専用道路が整備され、幼児を乗せる専用自転車もあり、自転車文化が確立されている。日本にも一過性ではないブレない交通法規が必要。その過程で従来の自転車とは明らかに機能や役割も違う電動アシスト自転車が、今後どう普及し、交通法規に影響を与えていくか。その責任は大きいといえる」とも指摘する。
 ◇
 「重さ約20キロ。価格10万円以下。これが開発当初に掲げた目標でした」。ヤマハ発動機で電動アシスト自転車開発の指揮を執ってきた明田久稔(あきた・ひさとし)(56)が、当時を振り返る。この数値をクリアしたのは、初代モデル発売から10年後の平成15年。新型モデル「New PAS」は重さ22キロ、価格は6万9800円。7万円を切る画期的なモデルだった。明田らは手軽に扱える理想の電動アシスト自転車の開発に10年以上もの月日をかけ、ようやくたどり着いたのだ。
 翌年にはリチウムイオンバッテリーを採用した新型モデルが投入され、軽量小型化に成功。車体設計の自由度が増し、スポーツタイプが登場するなど、その可能性は大きく広がった。
 「電動アシスト自転車の開発にはフレーム、モーター、バッテリーなどさまざまな分野の技術で変革が求められました。これらの開発にはヤマハ発動機だけでなく多くの企業がかかわっています」。明田はこう説明したうえで、強調した。「できるだけ軽く、かつ強力なパワーを出すために、最も頭を悩ませたのが実は電池だった」
 電池メーカーに求めたハードルは高かった。しかし、この厳しい課題を克服することが、日本の電池メーカーの飛躍的な技術力向上につながったとされる。ここで培われた技術が、電気自動車用電池の技術革新にも大きく貢献している。
 電動アシスト自転車は、まだ発展の途上にあると、明田はいう。その進化は、将来の生活環境や交通法規、技術革新に、どんな影響を与えていくのだろうか。

  産経新聞 投稿=敬称略(戸津井康之)
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