SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

SERGE DELAITE TRIO 「SWINGIN’ THREE」

2009年10月26日 | Piano/keyboard

「ステキなジャズを聴きながら、楽しいディナーをどうぞ」
これは先日旅先で見かけたちょっとおしゃれなレストランのチャッチフレーズ。
入口の脇のチョークボードに貼り付けてあった。
このお店には残念ながら時間がなかったので入らなかったのだが、何となく後ろ髪を引かれる思いだった。
で、後で思い返して、あのレストランではどんなジャズを聴かせてくれるのだろうと考えた。
一番イメージに合うのは、澤野工房の作品だと思った。
中でもセルジュ・デラートはぴったりだ。
個人的には、前作「French Cookin’」の方が内容的にはいいような気がするが、おあつらえ向きのジャケットといい、最初の2曲(「If I Love Again」と「My Little Suede Shoes」)の可愛らしい華やいだ雰囲気といい、この「SWINGIN’ THREE」の方がベストマッチのような気がしている。

最近、楽しく食事をとることに幸せを感じている。
今さら何だ、といわれるかもしれないが、以前はそれほどの執着心がなかった。
もちろん美味しいものをいただくことに越したことはないが、若い頃はただお腹がふくれればそれでいいみたいなところがあって、時間とお金をかけて食事をとるなんてことはあまりなかったような気がするのだ。
事実、ヨーロッパなんかに行ってレストランに入ると、何時間もそこに居続けなくてはいけないような状況になることがよくあって、本格的なレストランにはおいそれと入れなくなっていた。
それがどうだ。
このところは、美味しい店があると聞けばそそくさと出かけていくような生活になった。
お酒が好きになったというのもその原因かもしれない。
特に日本酒がうまいと感じるようになった。
単純に歳をとっただけかもしれないが、歳をとるのも悪くないと思えてくるからますます幸せだ。
大袈裟に言えば、料理とお酒とジャズ、暮らしの中にこの取り合わせがあれば、明日もまたがんばれそうな気がしている。
今日は昨日手に入れた魚沼のおいしい酒を飲みながら一日を振り返ろう。
ついでにセルジュ・デラート、お薦めです。



IKE ISAACS 「AT PIED PIPER」

2009年10月18日 | Bass

こういうライヴを見られた人はラッキーだ。
このくらいドライヴの効いた演奏を目の当たりにしたら、ジャズファンならずともやみつきなるに違いない。

考えてみればこれもピアノトリオなんだよな~、と思ってしまう。
どうもピアノトリオというと、最近のクールで耽美な世界をイメージしがちなのだが、これは明らかにホットで人間臭い。
とにかく1曲目の「Impressions」から、私たちの心をわしづかみにしてしまう。
アドリヴのスピード感といい、力強さといい、ライヴの臨場感といい、魅力がたっぷり詰まっている作品なのだ。
これはジャック・ウィルソン(P)の見直し盤といってもいい。
もちろんアイク・アイザックスのウォーキングベースも迫力満点だし、ジミー・スミスのドラミングも確かだ。
この作品が大変な人気盤であることも頷ける。

ただこのアルバムのイメージは、2曲目の「Mercy,Mercy,Mercy」であり、5曲目の「Walk On By」がつくり出していると思う。
このいかにも60年代というメロディラインが一種独特の雰囲気を醸し出している。
所謂、当時の匂いがプンプンするのである。
おそらく当時はジャズ喫茶などで大人気だっただろうと想像できる。
これを今の人が楽しめるか、古くさいと感じるかで、この作品の評価が変わってくるのかもしれない。

いずれにせよ、この手のライヴは熱ければ熱いほどいい。
思わず手拍子をしたくなるような演奏をして初めて会場が一体化するのだ。
こういう演奏が近頃聴けなくなってきたことが寂しい。

ARMANDO TROVAJOLI 「TROVAJOLI JAZZ PIANO」

2009年10月13日 | Piano/keyboard

一瞬、ジャケットに心奪われる。
レコードやCDがずらりと並んだショップの棚の中を、一枚一枚見ているときによくあることだ。
こういうジャケットに出会うと、「おっ!」と思うのである。
この時点ではまだデザイン的にいいとか悪いとかを判断しているのではなく、ただ単に手が止まるだけだ。
買うか買わないかはこの後決まる。
まず誰のいつ頃の作品かを確認し、一通り曲目を眺め、演奏メンバーを確かめて、じわじわと購買意識が高まるのを待つ。
誰でも経験していることだとは思うが、この楽しさがお店通いを止められない一番の理由だ。
但しポピュラー系のアルバムを探すときにはこんな感情はあまり起きない。
ほとんどの場合ミュージシャン名で探しており、見知らぬ人の作品をジャケ買いをするなんてことはあまりないからだ。
つまりジャズの場合は、誰が何を演奏しているかということも大事なのだが、それ以上にジャズとして「良さそうな(フィーリングが合いそうな)雰囲気」を探し求めているからに他ならない。
ジャズが他のジャンルの音楽と決定的に違うのはこうした点にあるのだと思う。

ということで、このアルバムはお店でジャケ買いした典型的な一枚である。
写真の大胆な構図とそのコントラストが、ジャズとしての「そそる雰囲気」を十二分に醸し出している。
正直言うと、私はアルマンド・トロヴァヨーリという人のことはほとんど知らなかった。
このアルバムを買ってきてライナーノーツを読んで、初めて彼はイタリア映画音楽界の巨匠であることを知った次第なのだ。
但し最近は、アントニオ・ファラオがこのトロヴァヨーリの優れた楽曲集を出したりしているので、やたらとあちこちで目につくようになってきた。
一度その存在を知ると、何だか急に親しみを覚えるから不思議なものである。

さて肝心の演奏はというと、どの曲もこれがイタリアンとは思えないほど黒っぽくスイングしており、ジャケットの雰囲気そのままである。
店頭でこんな雰囲気の演奏なのかな、と思っていたとおりだったので嬉しかった。
あなたならこのジャケットからどんな音を想像するのだろうか。


CURTIS COUNCE 「LANDSLIDE」

2009年10月05日 | Bass

こんなアルバムに出会ってジャズがますます好きになった。
いわゆる初級者から一皮剥けて中級者になったような気分なのである。
なんたってメンバーがすごく渋め。
ジャック・シェルドン(tp)、ハロルド・ランド(ts)、カール・パーキンス(p)、フランク・バトラー(ds)、そしてリーダーのカーティス・カウンス(b)だ。
このうちの2人以上のリーダーアルバムを持っていたら、あなたも立派な中級者である(たぶんね)。
ただ「要するに全員B級のジャズメンということか?」と勘違いされては困る。
とんでもない、ハートもテクニックもハイレベルなメンバーばかりなのだ。
とにかくそれぞれの楽器の持ち味が、くっきり浮き立ってくるような音色を奏でているのに驚く。
しかも全体のトーンはあまり変わらない。
つまり色相は違うが、明度や彩度は同じといった色合いに染められているのである。
これが全体のまとまりをよくしている原因だ。

ここに収録されている曲はどの曲もゴキゲンなナンバーばかりなので、どれか推薦曲をといわれても答えにくいが、今日は5曲目に収録されている「Sarah」を簡単にご紹介する。
ブルージーな雰囲気を持つこの曲はジャック・シェルドンの作である。
カール・パーキンスのキレのいいピアノソロから始まり、やがて遠くからハロルド・ランドのテナーがやってくる。
そのテナーソロの途中で、フランク・バトラーが思い切り、タタン!とスネアを叩く。この瞬間が快感である。
続くジャック・シェルドンのトランペットも、バトラーのドラムに煽られ徐々に熱くなっていき、最後にカーディス・カウンスが重心の低いベースを全面に押し出す。
単純なハードバップと呼べないフィーリングがここにある。
目玉と呼べる大スターがいないからこそ、こうした均衡のとれた作品ができたのかもしれない。
ジャズも何よりチームワークが大切だということだ。