Gimliのオルサンク語解読事始

世に蔓延するまやかしオルサンク語文献を解読します。あやしいコトバの魔力にまどわされないために。

福島原発事故メディア・ウォッチ:日経・朝日の「極端な一定量」

2011-03-24 | マスメディア
原子力安全委員会が放射性物質の拡散推測をようやく出した。

日経新聞:放射性物質の拡散予測図を公表 原子力安全委、退避圏外も一定量
2011/3/23 23:52
朝日新聞:30キロ圏外の一部、内部被曝の可能性 極端な例で試算
2011年3月23日23時34分

それをみれば、緊急に避難の拡大を要する内容なのは明らかだ。当たり前に考えれば、「ただちに退避圏を拡大することは不要」(斑目委員長)というような結論は引き出せるはずがない(政府のお題目の「念のため」なら尚更だ)。だが初めに結論ありきなので、つじつまをあわせなければならない。ここからが大新聞の出番になる。

日経の見出しは控えめだ。「一定量」と聞けばわれわれ一般人は、まああるにはあるのだろうがそれほど多くはなさそうだと考える。だが100ミリシーベルトは斗ヶ沢毎日新聞環境部長でさえがん発症の危険が高まると言っている値だ。そういう数値のことをふつうは「一定量」とは言わない。朝日の方はもう少し派手にやっている。広辞苑を見ると、「極端」は「はなはだしくかたよっている」「はなはだしく中正を欠く」という意味だと書いてある。いやしくも国の原子力安全行政の最重要機関が出した推測の根拠についてそんな言い方をしていいのかと思うが、都合の悪い事実に煙幕を張るためなら多少の勇み足は許されるらしい。

拡散推測が示す最大の問題は、20キロ~30キロの屋内退避圏に、500ミリシーベルトを超えるスポットがあることではないのか。だが両紙ともそのことを指摘しない。(日経は官房長官の話として「現時点でただちに(半径30キロ以内の退避範囲を)変更することにはならない」と書き、30キロまでひとからげにしている。)
拡散図も何とかして事実が一目瞭然にならないようにしているとしか思えない。朝日の図は20キロ圏を示さない。日経の図(記事がアーカイブ移動されたときに削除された)には20キロ圏も示しているが、100ミリシーベルトと500ミリシーベルトの差がわかりにくい。日経は500ミリシーベルトのスポットがある村の名前も載せていない。姑息なやり方で情けない。

今回の原発の「過酷事故=シビアアクシデント」については、メディアは事実をなるべく注目をひかないよう、大したことに見えないようにして出す役割を担っているが、それは時には何も言わないで事実を隠すよりも悪い。

政府は20キロ~30キロの屋内退避圏からの避難と、特に放射性物質の高濃度が推測されている場所からの避難を緊急に実施し、さらに退避圏を拡大すべきだ。

追記:日経の記事は24日午後の時点で、特集の中(アーカイブ)では同じ記事の見出しが以下のように変わっている。「放射性物質、30キロ圏超えてもヨウ素剤必要なレベル 原子力安全委が拡散予測図」