スイングジャーナルがまもなく休刊するらしい(
http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/news/20100517-OYT1T00937.htm)。
まあ、スイングジャーナルじゃなくたって、ただでさえ出版不況が指摘される昨今、「仕方がない」といって片付けてしまうのは簡単だろうが、創刊から60年以上も続いた老舗の雑誌の休刊は寂しくもある。とかいって、私は全然熱心な読者ではなかったけどね。
以下はあくまで私見。ジャズという音楽は、そもそものスタートは黒人のダンス・ミュージックであったはずだが、歴史的変遷を経て、そのアドリブ・ラインとハーモニーは複雑さを増し、楽器奏者の観点からいえば「マスターするのに時間のかかる(=恐らくカネもかかる)」存在となり、コア・リスナーの観点からすれば「シロウトに理解できない崇高な(=それを理解するにはレコードやコンサートなどへの十分な投資が必要な)」存在となっていく。ま、要はどんどんオタクな音楽になっていったわけだ。
しかも、例えば「ジャパニメーション」や「ジャパン・コンテンツ」などと呼ばれて脚光を浴びる日本製アニメと違い、ジャズ・オタクの市場ってのは全然小さくて、経済波及効果がほとんど期待できない。どんなに優れたジャズ・ミュージシャンの作品でも、1万枚売れれば大ヒットなんじゃなかろか。ほんと、嗜好品というか、単なるゼイタク品でしかないように思う。ジャズへの理解を深め、いっぱしのジャズを演奏できたって儲からんのだ。
誤解を生むのは心外なので付記するが、私はジャズが大好きだし、優れたジャズを聴くことで多くのことを学んだつもり。音楽と金儲けをリンクさせて考えること自体間違っているのかもしれないし、そもそも、ジャズで儲けよう、って考えたらいかんのだろうな。
出版業界は、例えば独占禁止法上「不公正な取引」の一類型とされる再販価格維持の例外が認められている。これは、書物が単なる消費財ではなく、文化を継承するために必要である、などという崇高な(?)理念が働くからだが、そんなこといったところで、所詮出版会社も「会社」なのだから利益は追求しないと株主や従業員に報いることができない。
となると、「商売」として成立させるために「売れる」仕組の構築が必要だ。オタクな要素を完全には排除しないまま、もっと大衆にアピールするような努力・マーケティング活動をスイングジャーナル社が試みていたのか。多分していなかったからこその休刊ではないだろうか。
と、ここまで書いてきて、もう一つ思いついた。ネットの普及だ。わざわざこんな専門誌読まなくたって、ネット上には音源もレビューも氾濫している。今はプロとアマの境目がほとんどなくなりつつあるので、いわば旧世代の遺物扱いになってしまった、てなことかも。
なんていうかな、具体策はあまり思いつかないんだけど、私はジャズのようにニッチで、かつどちらかと言えば縮みつつある市場で通用する効果的なマーケティング戦略って「何かしらはある」と思うんだよね。それ思いついて実行に移すための資金に目処がついたら会社辞めて「エセ・ジャズメン」として食っていくつもりだ。
無理か・・・(笑)。
-Butzmetz社長(
http://www.butzmetz.com/)-