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第2回 箱根山地のシカ問題を考える懇話会&見学会レポート

2017-06-17 10:59:00 | 小田原山盛の会
第2回 箱根山地のシカ問題を考える懇話会&見学会レポート
丹沢の轍を踏むな❢ 箱根を守ろう❢

主催;NPO法人小田原山盛の会
時: 5月26日(金)12:00~17:30 現場見学&意見交換


Ⅰ現場見学

2017年5月26日、小雨の中で開催された。
釜石林道、久野林道の幼齢林地においてシカによる被害を見学した。


見学会風景


ヒノキの頂芽食いについて説明する古林氏


損傷激しい苗木たち。


アオキの採食について説明する古林氏


角コスリによって枯れたヒノキ苗


角コスリ被害と下部は樹皮食いで枯死しているヒノキ苗。


この春樹皮を食べられた生々しい食痕。歯形がついている。


頂芽を食われたヒノキ苗。多枝化や成長不良が起こる。丹沢では繰り返し枝葉が採食され、棒ブラシのようになったという。もう、フェンスなくして成林は難しくなった。

写真に見るように、角コスリ被害、剥皮害、枝葉食い被害があった。久野の県行造林地では、補植されたヒノキの苗木に対して90%の枝葉喰いと剥皮害が発生していた。見学会当日の早朝にシカが休息していた跡や採食痕が多く残されていた。

林道沿いの森林の下層に発達するアオキの過食圧を見学した。同じような景観が、近くでヘクタール規模で起こっているとの説明があった(緊急報告書参照)。

Ⅱ懇話会
1.箱根山地及び小田原の被害の実態 
川島範子(NPO法人小田原山盛の会)


2015年度より箱根山地の調査を行ってきた。調査をすればするほど箱根が危機的な状況であることが判明してきた。外輪山東北部の稜線では下層植生の劣化が進行しており、丹沢で起こっているササの採食が明神ヶ岳でも部分的に始まっている。昨年度は仙石原を集中的に調査し、ゴルフ場周辺の過食圧が激しく、山側の植生劣化が著しい。


片平地区では大径木の林業被害も出て激害地となっている。箱根山地では箱根町などが管理捕獲に乗り出しているが、捕獲が増殖に追い付かず、山地の生態系の劣化、水源林としての劣化が懸念される。


神山・駒ケ岳も、山頂部にディアラインが出現している。




小田原市は外輪山の中でも伐採新植地が多く、シカの増殖地になっている。



石綿家が昨年16頭も久野で捕獲している(緊急報告書18ページ参照)にも関わらず、冬の餌であるアオキ群落の過食圧が激しく、スギヒノキ苗の林業被害が年々累積し、柵なしには成林しえないことが想像される。


また新植地などの斜面がシカの蹄で踏み荒らされ、表土が露出したり崩壊している場所が確認された。丹沢でも問題になった踏み圧による害が小田原でも出始めている。


小田原市で唯一広葉樹の植栽地に柵が巻かれている場所がある。それは台風の崩壊地に土留め工が行われ、広葉樹の植栽とフェンスの設置が2014年度に行われた所である。中は健全に育っている。

2.林業被害の背景について 
古林賢恒さん(元東京農工大森林生物保全学研究室・シカ専門家)

40年、丹沢のシカ問題を調査してきた者として、現在の箱根山地の現状がどのようなものなのかお伝えしたい。


県行造林久野の尾根部の壮齢林にも点々と剥皮害が。


冷水河原林道沿いのふるさとの森広葉樹植栽地。

シカの林業被害には、苗木の枝葉喰い、角コスリ、剥皮がある。丹沢ではスギ・ヒノキの苗木の枝葉を食べる被害は厳冬期に起こった。外樹皮をはぎ、内樹皮(甘皮)を食べる剥皮害も、厳冬期の被害である。もう一つダメージの大きい被害が♂ジカによる角コスリであるが、それは交尾期以降に出現する。
現在、箱根山地では、冬場の主食はアオキである。アオキの栄養価はスギ、ヒノキの枝葉よりも上位にあり、丹沢でシカによる枝葉喰いの被害か問題になった時には既にアオキはなくなっていた。栄養価の高い餌がなくなるとササが食べられるようになり、スギ・ヒノキの枝葉や樹皮が食べられるようになる。
In vitro乾物消化率と粗タンパク質の関係の図を参照されたい(緊急報告書の16ページ)。
粗タンパク質の含有量が高く、In vitro乾物消化率が高いコーナーにある植物が、栄養価が高く、質の良い餌になる。
植林地が次々と増加していった丹沢では、枝葉喰いが大発生したため、柵なしには成林しなくなった。
丹沢の轍を踏むなという話は、シカの個体数をコントロールしないで、シカの主要な餌場、植林地を彼方此方に造成すると林業被害が大規模になるという話である。われわれは50年前に、シカの個体数管理と生息地(ハビタット)管理は、車の両輪であることを丹沢から学んだ。それを生かし切れない。シカのような動物との関係は、鉄砲で駆除すれば済む的な考えがまだまだ根強く残っている気がしてならない。



二ホンジカの体重は年間を通して変化する。図に示すように餌が豊富に存在する春から秋にかけて飽食し、脂肪(皮下脂肪、骨髄内脂肪、内臓周囲脂肪など)を蓄積する結果、増加する。それに比べて冬期になると餌環境が悪くなる。冬季のエサ環境の質によって体重の減少傾向が著しく異なる。栄養価の低い餌環境のシカは沢山食べても満腹飢餓の状態となり、春先に餓死するものが出るほど低下する。
スギやヒノキの枝葉、ササの葉、を食べるような環境になると、豪雪や大寒波により、大量にシカが餓死する可能性が高まる。
林業被害、シカの個体群の質のことを考えると、アオキが主食として利用できる状況にシカの個体数をコントロールすることが「賢明なシカ管理」になる。共倒れになる管理は管理とは言えない。
小田原市の低標高域には、まだ、アオキがある。アオキは標高800mまで広く分布する。箱根山地の500m以上の標高域では、シカの採食によりアオキが枯死しているエリアが至る所で見られるようになってきた。点から面へと広がっている。久野林道や久野霊園上部の尾根では広範囲にわたって、採食可能な高さまで坊主となっている。和留沢集落の周辺のアオキにも過食圧がかかっている。


口の届く範囲が食べられ、坊主になったアオキの弱々しい新芽。


過食圧のアオキ群落に広がりつつある裸地。

アオキは耐陰性が高い植物なので、アオキが繁茂する現場には、他の植物が侵入できない。冬の主食としてアオキをシカが利用する頻度が高いこともあって、アオキの繁茂する現場は踏み荒らされ、土壌の表面が荒廃する。その上、下層の植生の侵入が少ないためにアオキの葉が無くなってくると短期間で裸地化し、土壌の流失が始まる。土壌の物理性(保水性・通気性・透水性)が低下し、森林の水源林機能に影響したり、植生が貧化して生物の多様性が低下する懸念が高まる。
また、昨年、一昨年の調査ではスギ・ヒノキ苗の被害は角コスリが多く、枝葉喰いは見られなかった。アオキが乏しくなったエリアでは、スギ・ヒノキの枝葉に移行している可能性が高い。
今日見た見学地が,箱根山地における枝葉喰いの1号地かも知れない。それは、2017年の冬にやってきた。
丹沢ではフェンスの必要性を訴え続けた経緯がある。神奈川県丹沢山地は、日本でフェンスを設置した先進地である。当初は一般会計から、今では水源税から費用が出されていると聞く。いまでは日本各地においてフェンスによる林業地や自然林の保護は当たり前になっているが、各地から丹沢を視察に見えたと聞く。定着防止域である箱根山地においても同様な考えで行う必要がある。
新植地は餌場となりシカの増殖地となる。今回の被害地、県行造林久野や財産区でも、シカの捕獲と併行して早急にフェンスを設置する必要がある。

3.森林被害対策の現状と事例紹介 
森 洋佑さん (野生動物保護管理事務所)




シカは好適な環境があれば爆発的に増えることがある。そのため、数年という短期間で森林に甚大な被害を与える力を持っている。一方、日本の人工林は伐期を迎えていて今後広範な人工林が伐採されることが予想される。伐採された人工林は林床の光環境が改善し、下草が多く生育し、シカにとって好適な生息環境となる。
以上の経過をとると、今後、伐採地とその周辺でシカ個体数が激増する可能性がある。それを防ぐためには防護と捕獲をバランス良く進めることが必須であり、またその対策を実行するために体制の構築が重要である。
捕獲については次に報告があるので、ここでは防護について説明する。
一般に防護については植生保護柵が用いられる。植生保護柵は、その設置面積の違いにより、マンディフェンス(単木保護)、パッチディフェンス、ゾーンディフェンス(広域保護)に分けられる。それぞれについて長所と短所があり、設置場所の地勢や設置目的に合わせて選択することが重要である。また、植生保護柵は設置するだけで終わりではなく、その効果を十全に発揮するには適切に管理することが必須である。この柵の管理をおろそかにするとどんな植生保護柵も効果が半減する。柵の設置の際には、管理体制も考える必要がある。


4.シカの個体数管理の取り組みと課題 
濱崎伸一郎さん (野生動物保護管理事務所社長)




シカの捕獲手段としては、狩猟、有害鳥獣捕獲、県や市町村が行う管理捕獲、国立公園での生態系維持回復事業、林野庁による森林被害緊急対策事業などがある。





これらに加え、昨年度の森林法改正に伴い、市町村森林整備計画において鳥獣害防止森林区域の設定をし、森林経営計画においてシカ被害に対する防護柵設置や捕獲などの対策を記載し、対策の実行が求められることとなった。
市町村森林整備計画に鳥獣害防止森林区域を設定するするとともに、森林経営計画に鳥獣害防止方法の記載と 履行を求める仕組みを設けることにより、森林整備と一体となった鳥獣害防止の取組が促進され、鳥獣害防止森林区域は、防護柵等の設置が促進される。

シカの捕獲手法には、銃器の場合は、巻き狩り、忍び猟、誘引狙撃があり、罠による捕獲の場合は、くくり罠、箱罠、捕獲柵、ドロップネットなどがある。
 捕獲の効果に影響する要因としては、シカ密度、行動特性、捕獲者の技量、捕獲地へのアクセスがあり、箱根の場合は丹沢などと比較すると低密度であり、高密度での捕獲手法は効果的ではない。
箱根のシカはどのような行動特性があるのか、調査を行って地域の特性を知り、効果的な捕獲手法を模索すべきである。
シカ捕獲の新たな試みとして、誘引狙撃と、静岡県で開発された首くくり罠がある。


誘引式首くくり罠 しずかちゃん 中に入っているのはサンプルのヘイキューブ。中のワイヤーに接触すると首にワイヤーがかかる仕組み。

首くくり罠はクマやカモシカなどの錯誤捕獲を避けるのに有効な方法であるが、捕獲効率はシカの警戒心や誘引効果に左右される。また、罠の直径が12cmを超えるため、特別な許可を得ることが必要である。
戦略的なシカ管理のための課題は、
・捕獲適地(ホットスポット)の抽出・変化の把握
・地形、環境に即した行動特性の解析・計画、
・行動特性に応じた捕獲計画
・管理施策に対する行動変化の把握
・広域連携の体制構築、
・専門的捕獲従事者の育成・配置
・捕獲実施時期の検討
・誘引効果の確認(時間帯・頭数)
・被害防除(≒餌場を作らない)

(編注; 森林被害緊急対策事業資料http://www.rinya.maff.go.jp/j/rinsei/singikai/pdf/1603143.pdf

5.神奈川県第4次シカ管理計画について 
松本開地さん (神奈川県 環境農政局 自然環境保全課野生生物グループ)




シカの個体数は、丹沢では減少傾向を示している。一部地域では林床植生の回復も見られる。だが区域全体で回復するには至っていない。区域の中に、高標高、中標高、低標高の地域に分けているが、高標高の所でシカの個体数が減少傾向にある。生息の予測値も出している。幅があるが、約3,800頭と予想されている。
今回の計画から、箱根山地などこれまで分布拡大防止区域だった所が定着防止区域と言う名称に変更になった。箱根山地でも小仏山地でも、急速にシカが増殖傾向にある。28年度に箱根山地で県が試行的に捕獲を実施した。宮城野林道、明神ヶ岳、火打石岳で実施された。県猟友会への委託で、猟犬を使った巻狩りを実施した。(編注;昨秋8頭が捕獲された。)今年度も引き続き行い、大体年に4回程度予定している。  
県の管理捕獲の手法は、猟友会に委託する巻狩りと、ワイルドライフレンジャーが行う捕獲の二種類がある。ワイルドライフレンジャーは、野生動物に対する専門的な知識を持つ人を、民間会社から派遣職員と言う形で、自然環境保全センターに専属で配置されている。ワイルドライフレンジャーは、巻狩りが困難な高標高地域の、主に山稜部で主に忍び猟を行っている。
定着防止区域の箱根山地では、28年度に県が行った管理捕獲を、これからも強化して、引き続き行っていく。農地周辺では、シカに対応した防護柵の設置等、市町村が行う被害対策の支援を行っていく。
(編注;第4次二ホンジカ管理計画 http://www.pref.kanagawa.jp/uploaded/attachment/842247.pdf)
今年度から、平塚の合同庁舎内に「かながわ鳥獣被害対策支援センター」を設置した。今まで各地域県政総合センター環境調整課に1~2名配属していたものを平塚1箇所に集め、チームとして活動が出来る様に整備し直した。集落環境整備・被害防護対策・鳥獣の捕獲を地域住民に助言・アドバイスして行く。各市町村に要望を聞いたので、それに沿って支援を行っていく。
(編注;かながわ鳥獣被害対策支援センターhttp://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f211/p1123073.html)

質疑応答

質問; 仙石原湿原にゾーンディフェンスを設置するということだが、仙石原湿原を追われたイノシシが周辺の住宅地に出てこないか。
野生動物保護管理事務所森さん; 一般に獣は従来の獣道に執着する傾向がある。その獣道が柵でふさがれた場合は、柵つたいに歩くことが考えられる。去年度までの調査で仙石原湿原への進入口はおおよそ分かっているので、その地点では獣の動きをモニタリングしたい。

質問;
箱根のシカ問題は、国立公園のある箱根町だけと思いがちであるが、シカの増殖地や被害は外輪山を含む箱根山地全域で起こっており、現在シカの増殖と被害が深刻となり、周辺市町村の管理捕獲の体制作りが急務である。広域での管理が必須と考えるが環境省、神奈川県、小田原市のお考えを伺いたい。
環境省箱根自然環境事務所斎藤さん:広域での管理が必要だと認識している。体制については周辺市町村、民間団体も交えて協力していく必要かある。今後体制づくりについて検討していきたい。
神奈川県野生生物グループ松本さん:基本的に生活圏は市町村、奥山は県という役割分担は考えているが、より効果的な体制については柔軟に対応していきたい。今日は林業被害の深刻さを目の当たりにした。対策を検討していきたい。
小田原市環境保護課佐藤さん:市による管理捕獲について要望が出され、市長からもどのように対策を行うか、協議を具体に進めるように指示を受けている。特定鳥獣に指定されているニホンジカは広域管理が重要で、今後関係部局等とも連携し効果的な対策を進めていきたい。

川島範子: 最後に古林先生から一言お願いしたい。
古林さん:箱根のシカ管理を進めていく上で、今、一番重要なことは、シカに関する情報や被害に関する情報が、非常に乏しいことにある。山盛の会のボランテイア活動に頼っていてはまずい。山盛の会の努力により客観的なシカ情報が集まってきた。これを契機に、的確な情報を集める体制を早急に確立させ、シカ管理を充実させてほしい。
シカ管理は適期にしっかりとした管理をしないとシカが爆発的に増加してからでは手の施しようが無くなる。箱根は、未だ丹沢程密度が高くないから、という声が聞こえてくる。丹沢にしてからでないと動かないのか。丹沢になる前に、防除を強化しないといけないと、今日、会議を開いた。その為にはどうすれば良いかを、叡知を絞ってほしい。 丹沢の激害を見た県の関係者達も、あと5-6年経ったら皆退職していく。 丹沢を経験してきた人達がもっと声を大きくしてほしい。フェンスを設置することはシカ問題を制すこと。丹沢のシカ問題に長年かかわってきた一人として、丹沢の轍を踏まないようにしなければという気持で一杯である。

閉会挨拶 川島範子:
今後は箱根山地を取り巻く市町村による管理捕獲が推進され、民間の参入も高まっていく事を願っている。山盛の会もより対策に役立つ調査を行っていきたい。本日はお忙しい中ご参加いただき、貴重なご意見をありがとうございました! (了)

今回の資料をお分けします。


2017年度緊急報告書 
「丹沢の轍を踏むな! 小田原久野の植栽地でシカによる被害大発生」
小田原山盛の会・古林賢恒(農工大・丹沢大山学術調査副団長)著
A4版フルカラー20ページ

ご希望の方は住所・氏名・電話番号をお書き添えの上、
メールで以下までお申込みください。

お申込み連絡先;  ☎090-9349-7014 
norako.k@nifty.com 川島


おそれいりますか送料(一冊200円、2~10冊360円)を加算し、
1冊あたり500円を寄付として、以下の口座にご送金ください。

口座
ゆうちょ銀行  〇九八 支店 
10990-25533681
特定非営利活動法人小田原山盛の会
ジャンル:
環境
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