長崎には江戸時代に日本三大花街のひとつと云われた丸山があります。全盛期の元禄時代には遊女が丸山・寄合町あわせて1,443人いたそうで、現在も残っている史跡が、往時の賑わいを偲ばせます。
長崎検番 検番とは芸子(芸者)が所属する事務所で、全盛期は二百数十人の芸妓、舞妓がいたそうです。現在は17名です。
史跡料亭花月 ここの柱には坂本龍馬が付けたと云われている刀創があります。現在も営業中で、芸子さんも呼べます。
見返り柳 かつての花街への入口(山の口)に立つ柳の木。花街へと足を運んだ人々が、ここで振り返り丸山遊女との別れを惜しんだらしいです。
忍び坂 丸山遊郭で遊んだ人々が帰る際、丸山の大門を通るのは気が引けるというので、この裏階段を通っていたことから名付けられたそうです。
※上の写真は全て長崎市公式観光サイト「あっとながさき」より転載 https://www.at-nagasaki.jp/
そんな丸山の近く、思案橋停留所の次の終点停留所に「正覚寺下」があります。元々は思案橋停留所が終点だったそうですが、なんでも、当時力のある人の妾宅が清水寺辺りにあったので、その近くに「正覚寺下停留所」を設けたとかいう伝説があるところです。
今回、お話を頂いた物件が、正覚寺下近くの高平町にあります。
かなり渋い外観ですね。10年近く空き家だそうです。
昭和40年代の建物で、室内の造作がよかったので、古さを生かした内装にしたいと思いました。せっかくの逸話がありますので、コンセプトは「花街近くの妾宅」です。
リノベーション後の外観。実際は3階建てで道下に1階があります。道路並みの2階は車庫にしました。
玄関には当時のままの下足箱が。なんとナショナル製です。
畳だった居間に床を貼りました。そのままの床の間に合わせて、ビンテージ調の床材にしました。
建具は光を通すものがよかったので、障子にしました。
襖には梅の絵が。丸山の遊女たちが信仰した「梅園身代わり天満宮」にちなんで。
この欄間が恰好良くて絶対に残したいと思いました。
そのままの天井と床の間。細かいところの造作がおしゃれですね。
玄関はアルミのフラッシュドアです。レトロな玄関周りに合うようにLED照明もクラシックなフォルムのものにしました。
バルコニーには造りつけの花台があります。花を愛でる暮らしができそうです。
バルコニーからの眺め。町並みは変わっていきますね。
水周りは全て新しくしましたが、元からあったペンダントライトが妙にマッチしました。
古いタイルは僕好みです。
一応賃貸物件として作りましたが、僕の偏った好みで仕上げたので一般うけしそうにないですね。