文淵の徒然なるかな

日々の徒然なるのを綴る

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桃太郎 32 猿編

2017-01-30 19:26:08 | 日記
 町につくなり宿前に札を掛け庚申【こうじん】は中へと入る。

「おお庚申【こうじん】様こちらにお出でくださるとは、ありかだやありがたや」
「またちょっとの間お世話になります。札は表に掛けさせてもらいましたけど、よろしかったですやろか」
 庚申【こうじん】の顔を見るなり拝み出す宿の主人に宿札を表に掛けたを事を庚申【こうじん】は告げた。勿論反対など無いのは知っているが断りを入れておく。

「ええ、ええ、勿論です。庚申【こうじん】様がお泊まりになられていると知らせないと、皆から私が非難されますから」
「そら、えろうすんません。気を使わせてもうて。部屋はいつものでよろしいやろか」
「どうぞ、どうぞ」
「ところで娘はんの具合はその後よろしなりました?」
「ええ、庚申【こうじん】様の薬のおかげで体調もよく、今では他の子供達と元気に遊んでおります」
「そりゃ良かった」
「一時期はどうなるかと不安で不安で、それもすべて庚申【こうじん】様のおかげ、ありがたや、ありがたや」

 そういい再び宿の主人が拝みだすのを見て庚申【こうじん】は頷き奥の部屋へと向かう。
 札と言うのは、札に名前や記号の書かれたまな板程の木の板の事で、その札の者が泊まっている事を示して知らせるもので、その札を見て町の人が宿へと訪ねれるようにするものだ。
 薬師、医師、旅商人など人々の助けとなる旅人が泊まっている事がわかれば、訪ねてこれるし、旅人も通りで客引きせずとも済む双方の利がある習慣である。現代でいえば臨時出張所の看板である。
 当然町に住んでいる陰士【おんし】への合図でもあった。地域周辺の情報を集める住民と化した陰士【おんし】や協力者が各地に居て、その情報を各地を周り集めるのが旅人に扮した陰士【おんし】で、各地で情報のやり取りをしたり、集めた情報を大元で管理している。
 当然庚申【こうじん】もその情報網を利用し、趣味の書物集めや鬼や奴隷の情報などを収集している。公私混同と思われないように鬼の禁書の回収名目ではあるが、名実ともに書物好きなのは庚申【こうじん】と面識のある上位の陰士【おんし】には知られており、知る者は苦笑しながらも禁書以外の情報も流すようにしているのだった。

 物売りに薬師に医師に子供の名付けと、訪れる人々を様々に相手をした庚申【こうじん】は一段落ついたので、集まった情報をまとめた。町の離れに見慣れぬ女が住み始めた。山で時折鬼を見かけるようになった。狩りの最中鬼と出くわしたが逃げ出した。
 情報を確認すべく宿の主人に薬草採りに山へ向かうと告げ出ようとしたが、主人より山に鬼が出た事を話され止められた。仕方ないので庚申【こうじん】は懐より紙札を出し鬼がいれば従えると言い、信じぬ主人に火薬で紙札を燃やし奇術を見せ、これを法力と嘯き主人を言いくるめた。
 宿を出て山へ向かう途中陰士【おんし】の出会う時に用いる符丁を見つける。
「八代【やしろ】ご苦労さん」
「お館様。変わらず何よりです」
「おかげさまでのんびりやらしてもらってます」
 庚申【こうじん】と八代【やしろ】はお互い笑いあい、八代【やしろ】が切り替え集めた情報を伝える

「やはり町の人の話はホンマなんやな」
「ええ、おそらくはいずこかより逃げ出した娘と鬼が、最近住んだ家屋に潜み住んでいるかと」
「山のは、狩りの途中に猟師に見られて逃げたってところやな」
「おそらくは」
「保護できるんなら保護したいなあ、八代【やしろ】前鬼か後鬼に渡りつけれるか?」

 前鬼後鬼とは以前海賊の奴隷より助けた。商人のゼニスと護衛のゴートンの二人で、ゼニスは庚申【こうじん】と当時言葉は通じないものの意気投合し、ゼニスは助けた恩を返すべく庚申【こうじん】に仕える形で協力している。ゴートンは陰士【おんし】の在り方に並々ならぬ興味を抱いたようで、今では立派な陰士【おんし】の一人である。互いに言葉は不自由ながらも通じるようになり、今では二人とも庚申【こうじん】の奴隷保護の目的を知り、進んで手伝いを通訳という形でしてくれている。

「時間さえいただければこちらに」
「なら頼むわ。まだ言葉は伝わりにくいしな」
「かしこまりました。すぐに」
 そう言い八代【やしろ】は姿を消す。

「さて町の人らが動く前にちょっくら挨拶に行きますかいな」

 消えた八代【やしろ】を見送り、庚申【こうじん】は薬草を手早く集め鬼を匿い住む娘がいる家へと向かう事にした。
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