アテネオリンピックを取材して、深く考えさせられたことの1つに「レース情報の伝達・公開手段」があります。アテネで、もっとも速く、くわしい情報は、現場にはありませんでした。海に出て観戦しているだけでは、どんな報道のプロフェッショナルでも不十分です。報道艇に乗っても、4海面あるうちで1つの海面しか見ることはできません。
レース海面全体を見る方法は、クルーズシップを使った観覧艇に乗ることでしたが、この乗船チケットが1日約1万円と高価な上、見たくもない海面にも連れて行かれてしまう、という難点がありました。さらに、海上も陸上同様に厳戒な警備態勢のため、基本的にどのボートに乗っても自由に動き回るのはむずかしい。
アテネオリンピックで、いちばん速く、くわしい情報を知る手段は、ウェブサイトを閲覧することでした。ウェブサイトでは、全種目全レースのマークラウンディング(回航順位)が速報され、世界のどこにいても、ウェブサイトを見れば、ほぼリアルタイムで回航順位を知ることができたのです。PCの前に座りながらマークラウンディング速報を見て、一喜一憂された方も多いことでしょう。大げさにいえば、「フィニッシュした選手が結果を知る前に、机の前に座った世界中の観戦者が結果を知っていた」のですから本当におどろきです。
アテネでは、セーリング競技は(少なくとも1日1種目は)テレビ放映されていました。いちばん選手の近くに寄れるメディアはテレビ報道艇であり、テレビ放映を見ていた方が、海上に出るよりレースの詳細が分かったぐらいです。さらにPCがあれば、完璧なレース観戦ができました。
これは、ぼくが考えるに、これからのセーリング競技のあたらしい方向性を示していると思います。セーリングは、レースをしている様子が見えない不思議な競技です。海上に出てしまえば、フィールドスポーツのような観覧席はなく、一般の人が気軽に見られる、というものではありません。
しかし、これではセーリング競技の発展はのぞめません。関係者たちは、もっと、もっと、見られる(見せなければならない)意識を持って、レースをしなければ、発展はない、と考えます。けっきょく、内輪同士の楽しみで終わっていまうわけです。海上にいる選手、運営スタッフだけでなく、ここに「観戦者」が絡むことで、あたらしい競技性(楽しみ方)が生まれるのではないでしょうか。
日本のクルーザーレースでは、これまでウェブサイトを通じて詳細なレース情報を公開する試みがありました。2003年の鳥羽パールレースでは、全艇にGPS携帯電話を設置して、大まかなポジションをPCで確認できました(ただし、この試みは定着していません)。ほかにも逗子マリーナのクラブレースでも、位置情報サービスのココセコムを使ったレースが行われました。
でも、インショアのブイ回りレースでは、動きが速く、ボートの位置が細かくなるため、GPSで追いかけるのはむずかしいといわれています(GPS衛星と頻繁に通信するため費用も大きい)。
アテネのように莫大な費用を使うことは不可能ですが、日本のレースでもできることはないのでしょうか。ぼくは、マークラウンディング(回航順位)や成績速報をウェブサイトを通じて公開するぐらいなら、それほどむずかしいくはないと考えています。
そこで、ぼくの提案です。
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(1)携帯電話を通信手段に使う
日本の沿海は携帯電話(ドコモ)の通信網が整備されています。これは、多くの漁師がドコモを使用しているからであり、山間部と比べるまでもなく、海は携帯電話がつながりやすいエリアといえます。まして、インショアレースのように岸近くにいるなら、トラブルは少ないと考えられます。
(2)携帯ウェブサイトを作って、携帯から直接更新する
回航順位や成績速報、また風向、風速、海上コンディションなどを携帯で見られたら、楽しくないですか? 速報性を重視するためアンオフィシャルな情報になるでしょうが、それでも、海に出られない人が、陸上から、出張先から、会社から、情報が分かれば、臨場感があるし、なにより、これまでセーリング競技ではむずかしかった「リアルタイムな応援」が可能になります。
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携帯ウェブサイトは、このサイトのように、ブログを使って更新するのがいちばん安上がりで、手っ取り早い。普段、携帯メールを使う人なら、更新するにも、閲覧するにも、違和感なく操作できることでしょう。
このアイデアを思いついたのは、11月中旬のニッポンカップ(葉山)の時でした。ぼくは、準決勝、決勝の日に、海に出て、公式サイトに情報を流す係をしていました。「フライト2マッチ1。第1上マークをエド・ベアードが、ハンセンに3艇身先行して回航しました」なんて具合に、携帯電話を使って陸上スタッフに知らせ、その情報を頼りにウェブサイトが随時更新されました。
どうして、携帯電話を使ったかは、悲しくも無線機が故障していたのが理由です。でも、一方通行同士の交信になる無線を使うより、携帯電話で話した方が、音声もクリアで、スムーズに情報が伝わりました。
ニッポンカップとは対照的に、今秋開催された470、スナイプ、J24、インカレ等の全日本選手権は、協会ウェブサイトがあるにもかかわらず、ぼくが知る限り、レース情報はすばやく公開されませんでした。なかには、大会終了後も成績がなかなか公開されず、歯がゆい思いをさせられた大会もあります。全日本470は、メーリングリストで1~2日後に成績、レポートが送られましたが、メーリングリストという限定されたメンバーだけで終わらせて良いモノか、とも考えます。
さて、セーラーのみなさん、長々と書き連ねましたが、この携帯電話を使ったリアルタイム情報公開手段は、いかがでしょう? ぼくは、ぜひ実現させたいと思っています。まず、実験的に一度、やってみませんか。その時は、ぼくに連絡ください。飛んでいきますよ!
(文・平井淳一)
メールはこちらへどうぞ。
j-hirai@fa2.so-net.ne.jp
レース海面全体を見る方法は、クルーズシップを使った観覧艇に乗ることでしたが、この乗船チケットが1日約1万円と高価な上、見たくもない海面にも連れて行かれてしまう、という難点がありました。さらに、海上も陸上同様に厳戒な警備態勢のため、基本的にどのボートに乗っても自由に動き回るのはむずかしい。
アテネオリンピックで、いちばん速く、くわしい情報を知る手段は、ウェブサイトを閲覧することでした。ウェブサイトでは、全種目全レースのマークラウンディング(回航順位)が速報され、世界のどこにいても、ウェブサイトを見れば、ほぼリアルタイムで回航順位を知ることができたのです。PCの前に座りながらマークラウンディング速報を見て、一喜一憂された方も多いことでしょう。大げさにいえば、「フィニッシュした選手が結果を知る前に、机の前に座った世界中の観戦者が結果を知っていた」のですから本当におどろきです。
アテネでは、セーリング競技は(少なくとも1日1種目は)テレビ放映されていました。いちばん選手の近くに寄れるメディアはテレビ報道艇であり、テレビ放映を見ていた方が、海上に出るよりレースの詳細が分かったぐらいです。さらにPCがあれば、完璧なレース観戦ができました。
これは、ぼくが考えるに、これからのセーリング競技のあたらしい方向性を示していると思います。セーリングは、レースをしている様子が見えない不思議な競技です。海上に出てしまえば、フィールドスポーツのような観覧席はなく、一般の人が気軽に見られる、というものではありません。
しかし、これではセーリング競技の発展はのぞめません。関係者たちは、もっと、もっと、見られる(見せなければならない)意識を持って、レースをしなければ、発展はない、と考えます。けっきょく、内輪同士の楽しみで終わっていまうわけです。海上にいる選手、運営スタッフだけでなく、ここに「観戦者」が絡むことで、あたらしい競技性(楽しみ方)が生まれるのではないでしょうか。
日本のクルーザーレースでは、これまでウェブサイトを通じて詳細なレース情報を公開する試みがありました。2003年の鳥羽パールレースでは、全艇にGPS携帯電話を設置して、大まかなポジションをPCで確認できました(ただし、この試みは定着していません)。ほかにも逗子マリーナのクラブレースでも、位置情報サービスのココセコムを使ったレースが行われました。
でも、インショアのブイ回りレースでは、動きが速く、ボートの位置が細かくなるため、GPSで追いかけるのはむずかしいといわれています(GPS衛星と頻繁に通信するため費用も大きい)。
アテネのように莫大な費用を使うことは不可能ですが、日本のレースでもできることはないのでしょうか。ぼくは、マークラウンディング(回航順位)や成績速報をウェブサイトを通じて公開するぐらいなら、それほどむずかしいくはないと考えています。
そこで、ぼくの提案です。
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(1)携帯電話を通信手段に使う
日本の沿海は携帯電話(ドコモ)の通信網が整備されています。これは、多くの漁師がドコモを使用しているからであり、山間部と比べるまでもなく、海は携帯電話がつながりやすいエリアといえます。まして、インショアレースのように岸近くにいるなら、トラブルは少ないと考えられます。
(2)携帯ウェブサイトを作って、携帯から直接更新する
回航順位や成績速報、また風向、風速、海上コンディションなどを携帯で見られたら、楽しくないですか? 速報性を重視するためアンオフィシャルな情報になるでしょうが、それでも、海に出られない人が、陸上から、出張先から、会社から、情報が分かれば、臨場感があるし、なにより、これまでセーリング競技ではむずかしかった「リアルタイムな応援」が可能になります。
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携帯ウェブサイトは、このサイトのように、ブログを使って更新するのがいちばん安上がりで、手っ取り早い。普段、携帯メールを使う人なら、更新するにも、閲覧するにも、違和感なく操作できることでしょう。
このアイデアを思いついたのは、11月中旬のニッポンカップ(葉山)の時でした。ぼくは、準決勝、決勝の日に、海に出て、公式サイトに情報を流す係をしていました。「フライト2マッチ1。第1上マークをエド・ベアードが、ハンセンに3艇身先行して回航しました」なんて具合に、携帯電話を使って陸上スタッフに知らせ、その情報を頼りにウェブサイトが随時更新されました。
どうして、携帯電話を使ったかは、悲しくも無線機が故障していたのが理由です。でも、一方通行同士の交信になる無線を使うより、携帯電話で話した方が、音声もクリアで、スムーズに情報が伝わりました。
ニッポンカップとは対照的に、今秋開催された470、スナイプ、J24、インカレ等の全日本選手権は、協会ウェブサイトがあるにもかかわらず、ぼくが知る限り、レース情報はすばやく公開されませんでした。なかには、大会終了後も成績がなかなか公開されず、歯がゆい思いをさせられた大会もあります。全日本470は、メーリングリストで1~2日後に成績、レポートが送られましたが、メーリングリストという限定されたメンバーだけで終わらせて良いモノか、とも考えます。
さて、セーラーのみなさん、長々と書き連ねましたが、この携帯電話を使ったリアルタイム情報公開手段は、いかがでしょう? ぼくは、ぜひ実現させたいと思っています。まず、実験的に一度、やってみませんか。その時は、ぼくに連絡ください。飛んでいきますよ!
(文・平井淳一)
メールはこちらへどうぞ。
j-hirai@fa2.so-net.ne.jp