無足場ワンダーランド

題詠100首マラソンとか、サブ的なこと用です

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006:員(虫武一俊)

2014-02-21 | 題詠2014
みぞおちに社員証揺れるそれだけのことがこんなに遠い真昼だ
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005:返事(虫武一俊)

2014-02-21 | 題詠2014
白に赤 返事をしないまま日々は梅の不気味のように過ぎゆく
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004:瓶(虫武一俊)

2014-02-11 | 題詠2014
投げ上げて割れる瓶だと思うから怖れていつもつかんでしまう
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003:育(虫武一俊)

2014-02-10 | 題詠2014
憎しみを育てることの歓びにアラームの鳴る前に目覚める
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002:飲(虫武一俊)

2014-02-05 | 題詠2014
飲み込んだ言葉のきっとあるはずのカウンセラーよ 駅まで雨だ
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001:咲(虫武一俊)

2014-02-05 | 題詠2014
電飾の美しい世に「遅咲きのぼくたち」なんてきみは語るが
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参加します(虫武一俊)

2014-02-01 | 題詠2014
短歌筋肉をつけるために、筋トレとして4年ぶりに登録することにしました。
よろしくお願いします。
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007:耕 観賞

2011-10-08 | 題詠2011観賞
007:耕はTB256までを鑑賞しました。ありがとうございました。


西巻真 (ダストテイル-短歌と散文のブログ-)
突然に耕地を抜けて町に出るさみしさまちのあかり ひとごと
 町・まちの重複は少し気になりましたが、本来町から突然に耕地に出るほうがさみしいはずなんですよ。私も経験がありますが。夜の田んぼのまんなかから見る町明かりはせつないですよ。
 しかしこの歌の主体は逆に町のほうに来るほうがさみしいという。その逆転性がまず面白いです。
 結句の「ひとごと」というのは、おそらく「まちのあかり」が自分とは関係にない家々のものであることに対する突き放しなのでしょう。逆転的な感覚を補強し確立させるいい言葉と思います。


藤田美香 (あした、たとえば雨でいいから)
耕せば君が浮かんだ水面からただしい闇が生えてきますか
 耕す+水面ということは水田でしょうか。
 しかしこの歌、込められている情念が怖いです。ただしい闇というのはそう珍しい表現ではないと思うのですが、(闇が)「生えて」まで踏み込んでこられるとぐっと怖いです。
 浮かんだというのをどう捉えるかですよね。そのまんまぷかーと浮いてたと考えると、泳いでいたというよりやはり死んでしまって(あるいは主体が殺しちゃって)水田に置いたとかそういうところまで妄想できてしまう。
 というわけでオーソドックスに、主体の心象が水面にオーバーラップしたと考えるわけですが、そこに闇が生え茂らないかと期待していることは、やはりどこか愛憎的に見えて怖いです。


ひぐらしひなつ (エデンの廃園)
捨ててきたものを思った休耕田ながれつづける車窓に凭れ
 実際に私は雷鳥やサンダーバードといった特急に幾度となく乗ったことがあるのですが、たしかに山あいの土地には休耕田が多いです。
 それが流れ続けている窓に、頭を預けているわけです。そして、捨ててきたものに思いを馳せている。特急に乗っているわけですから、あるいはいままで住んでいた町をまさに発ってきているところなのかもしれません。
 休耕田というのは、実りという可能性を捨てている存在と私はみます。もとの町でこうできたかもしれない可能性、それを捨ててきたことも含めて、特急はたんたんと景色をうしろへ流し続けていく。すばらしい情景描写だと思います。
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006:困 観賞

2011-08-28 | 題詠2011観賞
006:困はTB241までを鑑賞しました。ありがとうございました。


ほきいぬ (カラフル★ダイアリーズ)
リクエストしていいですか おしまいの儀式は一緒に呼吸困難
 キスをせがんでいるシーンだと受けとりました。
「リクエストしていいですか」とはキスに対してちょっと大仰で、そこが面白みだと思うわけですが。
 慧眼は下句ですね。この、愛は死であるという感覚。塚本邦雄の「馬を洗はば馬のたましひ冱ゆるまで人戀はば人あやむるこころ」を持ちだすのはまあ野暮かもしれませんが。
「儀式」とあるのではっきり心中的なものだとわかるわけですが、キスによる呼吸困難、愛の極まりとしての死というのはやはり私であってもそそられるものがあります。


みち。 (銀塩プロローグ。)
困ってるあの日の僕を助けてもここから先に道はできない
 これは思わず取ってしまいました。
 初句切れと読むか、切れてないと読むかで意味が二重になっているのですが、その重層感が歌にとっていい味になっています。
 あの日の困っている僕と、いまその「あの日の僕」を助けようとして、けれど助けたところでどうしようもないと気づいてしまって困っている「いまの僕」。
 いや、こんなタイムマシーン的な解釈は一般的ではないのかもしれませんが。しかし過去を振り返って、あのときの自分を……という感情は誰にも覚えのあるものですよね。その覚えに働きかけてくる一首だと思うのです。


我妻俊樹 (半ドア)
ねえさんの困り顔さえ黄金で夕涼みどこまでが味方なの
 まず単純に、困り顔に夕陽が照り映えている情景が美しいですよね。まあちょっと夕方=黄金はよくありすぎる気もしますけれど。
 「夕涼み」という「情景」に対して、お前はどこまでが味方なんだと問いかけているのが面白いです。夕涼みの時間帯というのは、光と影の領域が入れ替わっていくときなわけですが、その曖昧な境界を思うときに、「どこまでが」という言葉が響いてきます。
 あとは「ねえさんの困り顔」ですよね。このねえさんを血縁のあるなしなどどう捉えるかは各人によると思うのですが、しかしやっぱり「ねえさん」には「困り顔」が合っている気がします(笑)
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005:姿 観賞

2011-08-22 | 題詠2011観賞
005:姿はTB239までを鑑賞しました。ありがとうございました。


音波 (短歌のなぎさ)
そのまんま春が来そうな休日に後ろ姿の猫を見ている
 ぽかぽかと日なたの温かい休日に猫の後ろ姿を見ている、という景を描いているわけですが。
 なんといいますか、猫の後ろ姿=春みたいな響きに感じられてくるんですよね。これは実際に猫を触ったことのあるかたならなんとなくわかっていただけるんじゃないかと思うんですけど。
 あの丸い頭、丸い背中、あったかい体、猫ってやっぱり春のイメージですよね。


帯一鐘信 (シンガー短歌ライター)
どうみても明らかすぎる姿にて二月の雲と古いクーポン
 不思議な魅力があります。どよどよと雪でも降りそうな二月の曇り空のもと、期限切れ(もしくは期限ぎりぎり)でちょっとよれよれになっちゃってるクーポンを手にして、呆然と突っ立っているように私は感じられました。
 上句はこれどういうことでしょうね。クーポンを使いに行くということに対して明らかすぎる姿なのか、あるいはもっと別の、(誰が見ても)明らかに○○な姿、ということなのか。
 下句はいずれも不安をにおわせるイメージの組み合わせなのですが、やっぱり上句はその「明らかすぎる姿」を見て心配しているのでしょうか。


佐田やよい (低速飛行)
地下鉄の窓に四月の違和感が私のような姿で映る
 私には縁遠いものというか、望んで得られなかったものなのですが、新生活というものに対する不安感はいくらかわかります。共感性も高いですしね。
 着慣れないスーツ、あるいは高校の制服というケースもあるのかもしれませんが、地下鉄にも慣れない、慣れないだらけのなかを過ごしている。
 ポイントはやっぱり違和感と私をひっくり返していることですね。私が違和感のような姿で映る、というのが日本語として本来あるべき流れです。
 しかしこの歌では、違和感のほうがフィールドが決まっていて、そこに私が寄せられていっている状況になっています。地下鉄の窓に映った姿というあのぼおんとぶれて浮き上がるような景を思い浮かべると、たしかにこれが「違和感」だと言われても自然に納得できる気がします。
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004:まさか 観賞

2011-08-16 | 題詠2011観賞
004:まさかはTB252までを鑑賞しました。ありがとうございました。


黒崎聡美 (ゆびおり短歌)
まさかさまに家々うつす町川のかなしいことはひとつもなくて
 夜の風景を思い浮かべました。暗い川面に、時代がかった電柱灯や家屋の明かりがぽん、ぽんと映っていて。
 なにもかなしいことなんてないなのに、かなしいことがないということが逆にかなしいような、不安なような、そんな収まりの悪さを捉えているのではないかと思います。地方都市が日本の発展の途中で見につけた存在そのものの不安感、とまで言うとちょっと言いすぎでしょうか。
 この歌は震災前に投稿された歌なのですが、震災を踏まえて読みますとまた違う読み味になってしましますね……。
 日本にはいまも以前と同じように家々を映す町川がある一方で、その家々をなくしてしまった町川もあるのです。


月原真幸 (さかむけのゆびきり。)
いまさかのまんなかにいる のぼるのかくだるのかまだきめかねている
 坂の途中に家があるというのでもないかぎり、そこまで登ってきたか下ってきたかというプロセスがあるわけです。
 なのに、登るか下るかを決めかねている。
 これは明らかに妙で、あたかもいきなりぽーんと坂の途中に置かれているとしか言えません。
 言葉として使うだけでなく、状況でも「まさか」を表現しているメタ短歌として面白いです。


我妻俊樹 (半ドア)
さっきから五月の悪口がつづくテーブルにまさかのわたしたち
 素直に解釈しようとするなら、五月に喫茶店かどこかに入って、仲間たちの誰かがその場にいない他の仲間の悪口をずっと続けている――ような感じになつかと思うのですが。
 私は妄想派なので、ただの人間でしかない主体たちがたまたま月神世界の店に迷いこんでしまったようなシチュエーションを期待してしまいます。六月や四月と相席になってしまって、彼らのいう五月の悪口をぞくぞく聞かされている。
 現代短歌では曜日や月の擬人化はそれほどトリッキーではないのかもしれませんが、相席という、日常に起こりうるちょっとした非日常のマジックがやはり効いているのではないでしょうか。
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003:細 観賞

2011-08-08 | 題詠2011観賞
003:細はTB261までを鑑賞しました。ありがとうございました。


南野耕平 (ボクといっしょに走りま専科)
細い道でしたが確かに道でした 少し冷たい水をください
 ここまでやって来た苦難がしのばれます。自意識過剰と言われてしまうかもしれませんが、多くの人はやはり、いままで自分がたどってきた道のりを振り返ったとき、楽じゃなかったなぁという思いを抱くのではないでしょうか。
 細い道、そこが山岳縦走の尾根ならば少しの気の緩みも許されませんし、両サイドが壁なり岩で狭まっているなら体にごつごつ擦れて肌が傷だらけになる。
 そういうところを歩き通してきてやっといまここにたどり着いた。そのシチュエーションで、喉に心地良い温度の水を求めるというリアリティがなにより生き生きとしています。


牛 隆佑 (消燈グレゴリー)
電燈は時に暴力的なもの闇のか細さ 君に似ている
 人間を光にたとえることは珍しくないと思いますが、闇にたとえたことにセンスが光ります。
 肝だめしとかキャンプとかですごい強い懐中電灯を持ってくる子がたまにいますが、その子がひゅんとスイッチを入れた途端の闇の無くなっていく様はいまでもよく私も憶えています。暗いのは恐かったですからそのときはそれですごい安心しましたし、その電灯をうらやましいなと思って見ていたわけですが。
 有無を言わさず闇を駆逐する光、その駆逐の果てに、端のほうで闇が細く残っているわけです。それを見て主体は、愛しい人のことを思いだした。
 うーん、けして普段から明るいかたではないのでしょうね。でもだからこそ愛しいということだってあります。みんなが笑っているときにそのかただけあんまり笑っていなくて、それゆえに気にかかり……みたいな。
 相手のパーソナリティまでふわっと想像させてしまうことはこの歌の魅力であります。


たた (たたたん、たたたん、たた短歌 題詠blog)
塾帰りだったのでしょう糸よりも細くチーズを割いていました
 上句は類推なのに、そこから下句で断定に向かっているリズムが不思議で気になりました。
 これはちゃんと読むと主体の回想なんですよね。つまり、チーズを割いている場面は憶えているけれど、その前に至る部分の記憶があやふやで、確定的なことが言えない。当時の生活習慣・チーズを割いていたときの心理(ストレス)からたぶん塾帰りだったんだろうな、ぐらいの感じ。
 神経症的と言いますか、さけるチーズを食べることよりも割くことを目的にしている具体がユニークで面白いです。塾でいつもなにかよくないことがあったのでしょうか。
 作者本人の意図とはずれていると思うのですが、塾帰りの「帰り」に引きずられるかたちで、私は家ではなく帰り道の場面を想像してしまいました。コンビニでさけるチーズを買って、歩きながら、バスや電車に乗りながら、もくもくとチーズを割いている。そこまでいくと本当に怖いですね。怖くていい歌です。
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002:幸 観賞

2011-08-03 | 題詠2011観賞
002:幸はTB266までを鑑賞しました。ありがとうございました。


西巻真 (ダストテイル-短歌と散文のブログ-)
幸福論のやうなよこがほあらはれてとつぜん「きつと春です」と言ふ
 論のような横顔というのが面白い。単純に幸せそうな顔というのではなく、論とつくことでいろいろな想像が膨らみます。
 春というのは四季のなかでやはり一番幸福感に満ちている季節だと思うのですが、それを横から突然現れて言われるとなると、いかに真実であってもちょっとぎょっとしますよね。
 そしてこの歌はきっと季節としては春でないときだと思うのです。「きっと」ってつけているくらいだからその横顔に人にも推論的な部分がまだあって、それでも「春です」って言いたくなるくらいのことは起きていると思うんですけど、それさえも幸福のなかであるがゆえの思い込みで……


紗都子 (羽うさぎの日記帳)
泥はねのブーツにもある幸せを冬の舗道にさらさら零す
 以前拙歌で『廃ビルの影うつくしくなにものにもいつしか訪れる黄金期』というのを作ったことがあるのですが、本来そこにプラスのものなどなさそうなところからプラスのものを見出していくというのは、短歌における魅力的なところでしょう。
 乾いた泥がブーツから零れているようにも見えますが、「さらさら」というオノマトペに注目すると、少なくとも泥でないものも同時に零れているようです。幸せとありますが、これは泥と関係なく、ブーツであれば誰でも備えているようなものでしょうか。あるいはブーツに限らず、有機物無機物含めた全物体にあるようなものかもしれません。
 泥で汚れてしまっているけれど、そういうものでもひとつの確かさとして、冬の寒い舗道にさらさらと零していく。情景が美しいです。


ひぐらしひなつ (エデンの廃園)
膝についた砂を払えば幸福の遠景として立つ無人駅
 地面に膝をついていたんですよね。あるいは転んだのかもしれませんけど。とにかく膝を起こしながら、そこに付いていた砂を払った。
 その顔をあげるかあげないかの瞬間に、遠く、無人駅が見えた。
 無人駅って聞いてだいたいどういう感情になるのが一般的なんでしょうか。さびしいとかボロいなとかなんかそんなあたりがよくあるところだと思うんですけど、この主体はわりと幸福と無人駅を近く結びつけている。そう感じる心境って、どういったものになるのでしょう。ここに想像の余地があり、面白い歌になっていると思います。
 やっぱりここでもマイナスに扱われがちなもの(無人駅)から、プラスのものを見出していくことが行われているんですよね。無人駅はさびしくてボロいかもしれないけど、少し見方を変えると、悠久の安穏を得てその地域の花鳥風月とたわむれているかもしれない。
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001:初 観賞

2011-08-02 | 題詠2011観賞
001:初はTB280までを鑑賞しました。ありがとうございました。


新田瑛 (新田瑛のブログ2)
繋がれたままの記憶を(初期化します)袋小路の奥へ(さよなら)
 パーレンによるジグザグ感が楽しい。袋小路の奥へ進めることが初期化するための行いと読めるわけですが、DVDとかBDをプレイヤーに挿入するときの感じを思い出してしまいました。初期化ってデジタル用語だったんだとふと気づく面白さ。


夏樹かのこ (鹿の子帳)
なにもかも初めてになるまっさらの朝を齧った最後の四月
 ポイントは「齧った」。私はどうしても林檎を想起してしまうわけですが、その林檎の赤く丸いシルエットが朝の太陽と重なってきます。
 朝を丸ごと呑みこんで力にしていく、新しい時を歩まんとする主体の決意感が見えてきて、ちょっと勇気をもらうような。


砺波湊 (トナミミナト2011)
「初めてだった?」「初めてだった!」と笑いあう階段に足音を撒き散らし
 同性の友だちの会話と思われます。恋愛の歌の多い題でしたが、直接的な表現をかわしつつ、思春期のあのなにもかもが特別に思えたころの高揚を見事に切り取られています。
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題詠blog2010投稿まとめ

2010-10-19 | 題詠2010
001:春
永く春を失っている大地という楽器をひとりの足に鳴らして

002:暇
(洒落こんだ休暇のつもりだったろう)パラソルのしなやかななきがら

003:公園
公園のアイドルだったブランコが鎖に日なたの熱を集める

004:疑
疑いを言いだせばきりがないけれど割れた壁画はころがっている

005:乗
どこかへと乗って逃げたと期待して見上げる空の片隅に鳥

006:サイン
白い雲 亡びを深くサインした巨人がむかしここにきたこと

007:決
多数決の成りたつまでのはるかなる旅程を風の親子とともに

008:南北
東西と南北の道の交点に「英雄」顔をして立ってみる

009:菜
夜明け前野菜頭がこの街の野菜頭としたころしあい

010:かけら
信号機を盲目にしたそのことが彼らの人間らしさのかけら

011:青
青という青に遭わないまま生きてきた砂つぶに見せる静脈

012:穏
風に削られる街並み 平穏の意味がゆっくり変化していく

013:元気
ありし日は元気な声に励まされひたすら空を追った噴水

014:接
ひとまたぎした水たまり暗黒の門と接続した残滓かも

015:ガール
ボーイミーツガールを神の必然とみるとき少女めく兵器群

016:館
西夏文字の末路をきっと知っていた図書館跡の羽根の残骸

017:最近
最近、と振り返るとき果てしないかたまりの「無」と向きあって 風

018:京
エイリアン惨禍の京の検非違使もむなしく足に砂利を掴んだ

019:押
靴あとを余分に押しながら進む 義憤か意地かわからないけど

020:まぐれ
きまぐれに口笛を吹く風のなか廃墟に丸めた背中を向けて

021:狐
踊らせた影の狐のうなだれてその横顔につきゆく角度

022:カレンダー
カレンダーの〈赤〉はお休み あの夏のカタストロフののちの時代の

023:魂
仰向けの一つ眼ポスト人の言う鎮魂のためじっと見ている

024:相撲
摺り足の蹂躙ののちこの街は相撲の土俵のように鎮まる

025:環
環境に優しい牙を出迎えて街は真っ赤なまっかなはなばたけ

026:丸
太陽のかたちを丸だと疑わず生きてきたものたちの沈黙

027:そわそわ
それはまるで解剖カエルを前にした子どものそわそわのようだった

028:陰
人類の陰の部分を見たあとの身にカフェオレのやさしかったこと

029:利用
都合よく有効利用できるなどと思うな 耳に風の入り来る

030:秤
砂、瓦礫、廃墟、亡骸、風の音、天秤のない街、交差点

031:SF
SFの表紙のように傾いた構造物の過去の確かさ

032:苦
切れそうで切れない架線 片隅にたしかに苦悩は残り続ける

033:みかん
遠くへと行きたい望みかんからと鋼の箱に骨を鳴らして

034:孫
街よ、お前の子孫がやがていつの日か森になるまで いまはおやすみ

035:金
廃ビルの影うつくしくなにものにもいつしか訪れる黄金期

036:正義
鏖(絶対正義)鏖(絶対正義) 真っ赤な月だ

037:奥
深淵の奥の椅子からほほ笑みを向けられているように寂しい

038:空耳
振り向いて ああ空耳と納得をするまで耳は街を見ている

039:怠
話しあうことの怠惰の顛末の表情をして壁ひとりきり

040:レンズ
光線の薙いだ轍をまたぐとき背中の空に感じるレンズ

041:鉛
鉛天に圧されるばかり 吸い込んだ空気なかなか喉を通らず

042:学者
エンジニアよりも神学者のほうを頼みに彼らは決断をした

043:剥
またひとつ剥がれかけてた土くれにとどめをさして進みゆく足

044:ペット
ひしゃげてるペットボトルの蓋固く また立ち上がるちからを思う

045:群
はじまりのちいさな群像劇をいま見守ることができうるすべて

046:じゃんけん
夕焼けの野に手のひらを突き出してじゃんけん、なんてやってみせても

047:蒸
一瞬の蒸発と永久の想念が交わることに思う磔刑

048:来世
粉微塵 未来世界を描いていたまぶしい筆もまぶしい声も

049:袋
さあこれが袋小路じゃないという証のために行こうじゃないか

050:虹
いつの日か噴水は虹をつれてきて街いっぱいにあふれだす空

051:番号
人間の書架化が進むはつなつに番号3と107として

052:婆
丘陵は産婆の腰に似てくるしああもう地球軍の終わりだ

053:ぽかん
もっと上のぽかんを目指したいのですぽかん修行をさせてください

054:戯
いらだって児戯におぼれてみたものの本わさびはやっぱり本わさび

055:アメリカ
アメリカで殴られたならソビエトで殴ればすんだこの前の世紀

056:枯
揚力の枯渇しきった翼からしぼりとる亡き兄の記憶を

057:台所
見張り台所長の席に丁寧に割られた落花生の殻たち

058:脳
ゴールする手前はいつも脳漿をこぼしてないか気になっている

059:病
精神病詐称疑惑のタマネギを責めれば責めるほどもらい泣き

060:漫画
さすらいの浪漫画鋲に笑われてぼくの廃校式はおしまい

061:奴
点滅の青の横断歩道にて奴隷制度のビラを受け取る

062:ネクタイ
友人の友人が蝶ネクタイを貸しっぱなしのまま冬がくる

063:仏
暗闇に仏師の腕のよぎるとき疼きだす肋骨の繋ぎ目

064:ふたご
タンブラーがあたふたごたごた駆けてきてなだれ込む勢いで「乾杯!」

065:骨
コッペパンが骨片パンと呼ばれだす日のためもえるもえる朝焼け

066:雛
雛鳥の串焼きという現実に立つとき腋を抜けていく風

067:匿名
存在を秘匿名前も消し去って やりたかったことはやれましたか

068:怒
置き去りにしてきた コインロッカーの扉に生まれたての怒りを

069:島
人格の孤島のような感情にゆだねて乗った深夜特急

070:白衣
白菜の白衣を脱がすことだけで終わる一夜のある冬がくる

071:褪
色褪せたプリント配る先生のつばのしめりを思いだしつつ

072:コップ
紙コップ倒れる音の軽やかさ銀河彼方の父を思えば

073:弁
口が開けっぱなしになって雄弁な膝から下は海を見ている

074:あとがき
生きてきたあとがきえさる事実には(蝉のあおむけ)抗えなくて

075:微
冬窓はつめたくひかる 兄さんが顕微鏡投げつけた、そのさき

076:スーパー
銀色の顔の男がスーパーに字幕を買いにくる月曜日

077:対
投げ入れた小石がきっとあの夏の点対称の点だったのだ

078:指紋
竜鱗に流血痕があるように冬を見下ろす窓に指紋は

079:第
学校は落第したの、と言うきみの視線の先の岬灯台

080:夜
いっぱいに夜気を吸うたび近くなるここに生まれなかった「ぼく」たち

081:シェフ
晩春をさばくシェフから逃げてきた 集まって集まって青葉闇

082:弾
パプリカがピアノを弾くと言いだしたなんだか明日は晴れる気がする

083:孤独
冬向けのもっともらしい孤独さをいまから装ってどうなるの

084:千
放課後の真っ赤な壁にひそひそと八千代に千代に裏君が代は

085:訛
ついに母は訛らないまま私には見えない海を窓に見ている

086:水たまり
ねっとりと泡のはじけて水たまりの裏から今日が壊れはじめる

087:麗
先生が流麗に文字書くときのその手の甲に浮き出る獣

088:マニキュア
なーんだなかにはなんにもないじゃないですか(マニキュアはどこ)やたらに赤い

089:泡
少年よ深紅の泡を前にしてなおも慈愛に踏みとどまるか

090:恐怖
できたての森へ恐怖を抱えてく誰か、いや、誰かではなくって

091:旅
仕方なく出た旅だから仕方なく何度も肩にかばんをなおす

092:烈
強烈に誰かへむかう正義からのがれてものがれても自己嫌悪

093:全部
精神の不全部分の不全さよ人はまったくゆるしあえない

094:底
台形の上底下底をいれかえて思いのたけを聞いてやりたい

095:黒
不吉さに黒をあてがうシステムの流れのままに負わされる罪

096:交差
目の前を交差していくものたちに待ってほしくて退がっただけだ

097:換
それならば彼はこれから換気する人として世を過ぎていくから

098:腕
そのことで腕を抱えて生きてきた意味にはじめてつながるだろう

099:イコール
イコールの橋をかけてる職人が来なくて街に帆はすれ違う

100:福
わからなくなるたびにまた思いだす福田内科のコップのくすみ
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