現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

津村記久子「ポースケ」ポースケ所収

2016-02-28 09:47:46 | 参考文献
 連作短編集の最終短編です。
 それまでの短編に出てきた人物たちが総登場で、大団円といった趣ですが、それ以上でもそれ以下でもありません。
 津村の今までの作品は、働く女性だけでなく男性も描けているところが魅力でした。
 しかし、この短編集では、明らかにL文学(女性作家が女性を主人公にして女性読者のために書いた文学)への傾斜が感じられます。
 マーケティング的にはその方が正解なのでしょうが、津村の作品の個性が失われないかと危惧しています。
 L文学の書き手はすでに腐るほどいるので、注意しないとその中に埋没してしまう恐れがあります。

ポースケ
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中央公論新社
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2月27日(土)のつぶやき

2016-02-28 08:08:16 | ツイッター
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無国籍童話の世界観

2016-02-27 09:33:37 | 考察
 架空の舞台や時代設定で描かれる無国籍童話や無国籍ファンタジーは、現実世界を描くのと比べて作品世界に制約が少ないので、書き手はのびのびと書きやすい利点があり、初心者も含めて多くの書き手が描いています。
 しかし、実際には、作者が思っているほど、読者にその作品世界が伝わらないことが多いです。
 こういった作品を描く場合には、まず作品の世界観をしっかりと構築することが大事でしょう。
 いったん確固たる世界観が出来上がれば、その世界観をもとに複数の物語を生成することができます。
 ようは、こういった作品の書き手は、常にその世界観を磨いてさえおけば、そこから新しい物語を紡ぎだすことはそれほど難しくないということです。
 逆に言えば、一つの物語のために一つの世界観を作っていたのでは物語生成が非効率で、一定水準の作品をコンスタンスに作り出すことは困難です。
 もっと安易な方法としては、既存の作品の世界観を借りて創作することです。
 一番有名な世界観は、トールキンが「指輪物語」で創造した(彼自身もヨーロッパの神話や伝説の世界観をもとにしています)「剣と魔法の世界」でしょう。
 この世界観は、ドラクエを初めとして無数のファンタジーやゲームで使われています。
 こういった世界観をもとに物語を創作することは、いちから独自の世界観を構築するよりははるかに楽なのですが、クリエイターとしては自分独自の世界観を作る楽しみがなくなるのでつまらないかもしれません。

メルヘンの世界観
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水声社
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2月26日(金)のつぶやき

2016-02-27 08:50:53 | ツイッター
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よしもとばなな「癒しのスープ」さきちゃんたちの夜所収

2016-02-26 09:44:05 | 参考文献
 亡くなった祖父母がやっていた、土日に大量の豆スープを立ち寄った近隣の人に無料であげるという作業(無料というので仕事ではありませんが、ボランティアというのも違うような気がします)を復活させようという母(祖父母から見れば嫁)を手助けするさきちゃんを描いています。
 一言でいうと、善人大行進(よしもと自身が作品の中でそう書いているのですから間違いありません)という感じのあざとい作品です。
 祖父母はもちろん、離婚した両親もいつの間にかいい人になっていますし、父の不倫相手も善人(おまけにおなかの中の子までいい子になるとさきちゃんに予言されています)、祖父母の善行を眺めていた謎の少女(神様か?)やさきちゃんの恋人、そしてもちろんさきちゃん自身も善人なのです。
 しかし、ここまで自分の読者である若い女の子に媚びなくてもいいんじゃないかという気がします。
 さきちゃんは、週四日のアルバイトしかしていないで、神様のような祖父母や意外にいい人の離婚した両親、それに恋人にまで恵まれています。
 これは、よしもとの読者である若い女性たちにとっては、ある意味で理想形でしょう。
 そんな読者たちに、よしもとからは「頑張らなくてもいいんだよ」というありがたい癒しのメッセージが、これでもかと降り注がれます。
 しかし、ここに書かれていさきちゃんは、自立しない他人に依存した女性像(ジェンダー観の揺り戻しにより、最近の若い女性たちがあこがれています)でしかありません。
 新就職氷河期の手荒い洗礼を受けた若い女性たちがこのようなジェンダー観に陥っているので、最近の児童文学(現在の児童文学の大きなマーケットは若い女性です)でもこういった作品は人気があります。

さきちゃんたちの夜
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2月25日(木)のつぶやき

2016-02-26 08:36:18 | ツイッター
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津村記久子「ヨシカ」ポースケ所収

2016-02-25 08:43:26 | 参考文献
 短編集の舞台である「食事・喫茶 ハタナカ」の店主であるヨシカが、なぜ会社を辞めてカフェを開いたかを説明した短文(小説とは言えないほど説明的です)です。
 一言でいえば、1999年に施行された男女雇用機会均等法以降の女性の総合職(特に優秀な)がぶつかる男社会の壁(アメリカでは私が会社に入った40年前にすでに存在していた、いわゆるグラス・シーリングのことです)に耐えきれずに辞めたわけですが、これが津村の実体験に基づいているのかはわかりません。
 組織外に出ることでそれから逃れるのでは、社会的には何の解決にもならないわけですが、個人的にはヨシカに共感する女性はたくさんいることと思われます。
 津村には、組織内に留まってそういった問題を撃つような作品を書いてもらいたかったと思いますが、本人は職業作家として自立できるのであればその方が良かったのでしょう。

ポースケ
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2月24日(水)のつぶやき

2016-02-25 07:26:25 | ツイッター
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津村記久子「我が家の危機管理」ポースケ所収

2016-02-24 16:52:19 | 参考文献
 ピアノ講師(ただし午前中はパートもしている)の妻と作家の夫(数年前までは会社に勤めていたというから津村自身の男性版か)が、うつ病の母親にネグレクトされている小学生の女の子と知り合う話です。
 ネグレクト、養子、不倫、離婚など、今日的な素材を扱っていますが、あまり深刻にならないように描いています。
 どうも最近の津村の作品は、主人公たちがだんだん自由業に限定されていくのが不満です。
 そんな小説はごまんとあるので、津村の得意分野であった普通の会社で働く人々(世の中の大半の人々がそうでしょう)をリアルに描かなくなると、このまま埋没してしまう恐れがあります。
 もっとも、津村自身が会社を辞めてしまったので、実際に普通の会社で働く人々からどんどん乖離してしまっているのかもしれません。

ポースケ
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2月23日(火)のつぶやき

2016-02-24 08:41:57 | ツイッター
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津村記久子「亜矢子を助けたい」ポースケ所収

2016-02-23 08:20:48 | 参考文献
 この短編集の舞台である「喫茶・食事 ハタナカ」でパートをしている中年女性の話です。
 メインは就活で苦労している末娘を助けようとする話なのですが、次男も会社でうまくいかずに引きこもりになっていますし、結婚して東京で暮らしている長男も家出して地元に帰ってきているようで、彼女の心配事は盛りだくさんです。
 「ハタナカ」やコンビニで働いているシーンもあるのですが、どこか表面的で物足りません。
 ラストで、末娘の就活の好転や次男の就職をにおわせるなどして、やや明るい兆しはあるのですが、どこか中途半端な印象を受けます。
 作品の長さに対して、問題を盛り込みすぎたのかもしれません。

ポースケ
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2月22日(月)のつぶやき

2016-02-23 08:17:45 | ツイッター
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2月21日(日)のつぶやき

2016-02-22 08:34:47 | ツイッター
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たかどのほうこ「お皿のボタン」

2016-02-21 09:17:15 | 作品論
 児童文学研究者の宮川健郎は「声をもとめて」という論文(その記事を参照してください)の中で、「声が聞こえてくる」幼年文学のひとつとして、この作品をあげています。
 ボタン入れのお皿の中にいるボタンたち(ボタン以外の物も交じっていますが)が身の上話をするお話が、十作載っています。
 この手のお話は、アンデルセンの「なまりの兵隊」やアニメの「トイストーリー」など、すでにたくさんあって特に新味はありません。
 また、身の上話も、ほとんどが安直なもので楽しめませんでした。
 「たかどのほうこ」ブランドでそこそこ売れるのでしょうが、宮川がいうような「ホラ話」との可能性があるような作品とは思えませんでした。
 ただ、ストーリーを進める語りとそれにチャチャを入れる別の語りになっているのが工夫されている点で、年少の読者にはお話を聞いているような効果が得られるでしょう。
 このあたりが、「声が聞こえてくる」幼年文学として、宮川が評価した点かもしれません。

お皿のボタン
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偕成社
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2月20日(土)のつぶやき

2016-02-21 08:29:08 | ツイッター

「よしもとばなな「さきちゃんたちの夜」さきちゃんたちの夜所収」 goo.gl/ioKCnG


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