現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

佐藤多佳子「明るい夜に出かけて」

2017-02-12 11:51:38 | 参考文献
 アルコ&ピースのオールナイトニッポンというラジオ放送を背景にして、はがき職人と呼ばれる投稿常連者を主人公にした話です。
 主人公は接触恐怖症という設定で、付き合っていた彼女が触れようとしたときに過敏に反応して突き飛ばしてしまい、そのことをネットで晒されて、大学のお笑いサークルの人気者で各種ラジオ番組の人気投稿者としての座を捨てざるを得なくなり、大学も休学してしまいます。
 主人公は、バイトをしているコンビニで知り合った人々と知り合ううちに、次第に人間性を回復していきます。
 作者得意の青春小説で、なかなか読ませるのですが、いくつか問題点があります。
 まず、舞台がラジオの深夜放送という現代ではかなりマニアックな世界なので、作者がその面白さを力説すればするほど私も含めて部外者にはわかりにくく、多くの読者を獲得するのは難しいのではないでしょうか。
 同様にアルコ&ピースも比較的マイナーな芸人(今はひところよりさらに売れていません)なので、その面白さも読者に共感を持ってもらうのは難しいと思われます。
 若者の話し言葉で書いていくのは作者の大きな特徴なのですが、この作品ではあまりに短命な用語を多用しているので、広範な年代の読者は獲得しづらいですし、それらの言葉はすぐに賞味期限が切れてしまうので作品自体がやがて意味不明なものになる恐れがあります。
 また、ラインやツイッター、ニコ生などの最近のコミュニケーションツールを多用していますが、それらになじみのない読者にはわかりにくいし、これらのツール類もディジタル/通信技術の進歩によってすぐに陳腐化し、他のサービスに取って代わられるので、五年もたてばすごく古めかしく感じられるでしょう。
 以上のように、この作品は2015年という一年間を切り取って、陳腐化を恐れない潔い書き方を
していますが、あえてそれをするほどの重要な題材ではなかったのじゃないのではないかと思われました。
 最後に、これは作者にとっては不運だったのですが、コンビニを主な舞台にしたために村田沙耶香の「コンビニ人間」(その記事を参照してください)と比較されて、村田と違って実際に働いた経験がないであろう作者のコンビニの仕事の描写が表面的に感じられてしまいます。

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