現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

貫井徳郎「新月譚」

2016-10-13 10:44:48 | 参考文献
 「通俗小説」、広辞苑によると、「芸術的価値に重きを置かず一般大衆の娯楽・慰安を主眼とする小説」とあります。
 久しぶりに、そんな古い言葉がぴったりする小説を読みました。
 容姿にコンプレックスがあって顔全体を整形手術して絶世の美人に変身した女性が、流行作家になるまでを描いた作品です。
 「通俗小説」を書く作家の誕生記を、「通俗小説」の手法で書くわけですから、まさに「鉄板」の「通俗小説」です。
 「エンターテインメント」などといった軽やかなものではなく、歌でいえば「ど演歌」といった感じのパターン化された作品です。
 描写もパターン化されており、長い回想シーンは1970年代のはずなのですが、それを想起させるものなど全くなく適当に書かれています。
 食事をするシーンがやたらに多く毎回違う所へ行っているのですが、まったく区別がつきません。
 会社のシーンなどもぜんぜんリアリティがなく、おそらく作者は会社がどういうものかの知識がほとんどないのでしょう。
 編集者とのシーンはさすがに実体験に基づいているのか詳しいのですが、これもまたパターン化しています。
 しかし、これらの点は、「通俗小説」の書式なのかもしれません。
 肩のこるような詳しい描写など省いて、筋だけを読み飛ばせるような書き方が、この作品の読者にとっては望ましいのでしょう。
 そう意味では、この作品は「通俗小説」の王道をいっていると思います。
 この作品は中間小説(純文学と通俗小説の中間の作品を意味します)誌に連載されたものですが、今の中間小説誌はますます通俗化が進んでいるのでしょう。
 新聞などの広告を見ると、本当の通俗小説誌はもっと派手な官能小説や時代小説が中心になっているようです。
 その点、この作品は官能的なシーンはほとんど省いているので、まだ品が良いのでしょう。
 だいたい、今どき中間小説誌は何部ぐらい売れているのでしょうか?
 少なくとも、若い人たちはほとんど読まないでしょう。
 図書館の雑誌コーナーで、こういった雑誌を手にしているお年寄りをよく見かけますから、そういった人たちの暇つぶしといったポジションなのかもしれません。
 そういう意味では、こういった「通俗小説」は、高齢化のマーケットニーズに合っているのかもしれません。
 もっとも、児童文学の世界でも通俗化が進んでいますから、社会全体がそういう方向に進んでいるのでしょう。


新月譚
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