現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

児童文学における「努力」について

2016-11-20 08:17:43 | 考察
 児童文学において、主人公が努力する姿はよく描かれてきました。
 努力が報われて何事かが成し遂げられる過程を通して、主人公の成長する姿を描く、いわゆる「成長物語」は、児童文学における一つのパターンと言ってもいいかもしれません。
 もともと「成長物語」は、現代児童文学が1950年代に掲げた理念のひとつである「変革の意志」を、本来の意味である「社会の変革」だけでなく、「個人の成長(変革)」にも適用したものです。
 それは、1950年代から1960年代には信じられていた「社会の変革」(多くの場合は社会主義型の社会への変革を意味していました)が、70年安保の敗北、その後の革新勢力の低迷、ソ連などにおける共産主義国家の崩壊などを通して、書き手の多くが変革後のあるべき社会を、読者である子どもに提示できなくなったことが、変革の対象が社会から個人へ変化した理由のひとつでしょう。
 また、現代児童文学がスタートしたころには克服しなければならなかった近代的不幸(飢餓、貧困、戦争など)の多くが、1970年代までの高度成長時代に克服され、多くの若い世代にとって新たな現代的不幸(アイデンティティの喪失、生きていることのリアリティの希薄さなど)の方が問題になり、変革の対象が社会から個人に変化したことも、その理由に挙げられるます。
 しかし、現在では、変革の対象があまりに個人に偏りすぎて、努力する目標も個人的な成功(優れたスポーツ選手や芸術家になる、お金持ちになる、名声を得るなど)に限定されすぎています。
 現代の若い世代を取り巻いている新たな問題(格差社会、世代間格差、ネグレクト、ハラスメント、DVなど)を、克服するための「努力」ももっと描かれるべきでしょう。

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