現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

米澤穂信「満願」満願所収

2017-05-06 08:54:18 | 参考文献
 さすがに表題作だけあって、他の短編よりは読みごたえがあります。
 登場人物の人間関係や謎解きの部分も、十分なふくらみをもって書かれています。
 それでも、全体的に説明文的な印象はぬぐえません。
 この作品が、ミステリーとしてこれだけ高い評価を得ていることを考えると、やはり現代人が読書に求めているものが変わってきていることを認めざるを得ません。
 たとえエンターテインメント作品でも、かつては文章芸術としての側面を持っていました。
 そのため、通俗文学という蔑称を避けるために大衆文学と呼ばれていました。
 しかし、今の読者、特にエンターテインメントの読者は、文章に芸術性など求めず、事実の伝達手段としてしか認めていないのでしょう。
 ですから、作品が描写で読ませるのでなく、説明的な文章を多用していても、その作品の評価とは無関係なのだと思われます。
 これは、児童文学の世界になるとより顕著です。
 児童文学に純文学はなく(あるいはあっても極めて例外)、そのほとんどすべてが広い意味での大衆文学(子どもはごく一部の特権的な存在を除いては典型的な大衆です)だと考えられます。
 その児童文学においてますますエンターテインメント化が進んでいるのですから、よりわかりやすい文章や描写が求められ、芸術性は消滅していく運命にあります。

満願
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